福岡・折尾の行列ができるベーカリーが東京初進出

2021年も終わろうとしている時、清澄白河に現れたベーカリー「ブーランジェリーエスイガラシ」。福岡・折尾の人気ベーカリーが東京に移転し、新たな看板を掲げてオープンした店だ。

ケースいっぱいに並ぶパン。早い日は閉店を待たずに売り切れるという

移転して間もないのに、早くも行列ができているという噂を聞きつけ訪れてみると、そのパンの実力に思わず唸ってしまった。パイのようなサクサクのデニッシュに、クラスト(皮)がカリッと軽やかなハード系。どちらのタイプのパンにも“ただ者ではない”感がある。全国から続々と腕のいいパンの作り手が集まる東京に、また一軒、パンを食べる喜びを感じさせてくれる店が生まれた。

住宅街の中にある隠れ家ベーカリー

店の前には広々としたテラスが。将来はテラス席でのイートインの計画もあるのだとか

店があるのは東京メトロ「清澄白河」駅から歩いて17分ほどの場所。木場公園近くの路地裏まで来ると、パンが焼ける芳ばしい香りが漂ってくる。住宅街の中にあり、まるで隠れ家のような佇まいだ。

店頭には30~40種類ほどのパンが並ぶ

外観と同じく、店内もシンプル。販売はスタッフにオーダーする対面スタイル。ガラスケースの向こう側にはオープンなキッチンがあり、タイミングが合えば焼き上がったばかりのパンも購入できる。

大手ベーカリーでも活躍した実力派シェフ

「毎日の暮らしの中で、自分の作ったパンをおいしく食べて、幸せな気持ちになる。そんな特別な時間を過ごしていただけたらと思います」と語るオーナーシェフの五十嵐 聡太さん。

「ドンク」や「メゾンカイザー」など大手ベーカリーでシェフを務めるなど活躍していた五十嵐さん。新たなパン作りに挑戦しようと退社し、専門学校で教える傍ら、全国のパン屋200店舗以上を巡る。そのパン屋巡りで得た学びを基に、「自分がおいしいと思う、自分しか作れないパン」を提供しようと福岡・折尾に「マイニチパン」を開業。そして、さらにパン 作り のフィールドを広げるべく東京で新たな一歩を踏み出した。

四季によって材料も製法も変えるこだわりのパン

北海道産の小麦にライ麦をブレンドしたバゲット。食感と香りをよくするためにひと工夫している

パンに使う小麦粉は、北から南まで全国から取り寄せた国産小麦を使用し、小麦の風味を引き出すために低温で長時間発酵。香りにもこだわり、バターはすべて発酵バターを使い、天然酵母もライ麦由来と旬のフルーツ由来の2種類を使い分けている。

「どういうパンを作りたいかゴールを決めて、素材や調理の工程全てを考えています。どんな味わいにするのか、どんな香りにするのか。同じパンでも四季によって好みは変わります。それに合わせて、小麦粉をブレンドしたり、酵母を変えたりしています」(五十嵐シェフ)

イメージどおりのパンができるまで、無数の組み合わせを試していく。こだわりはどんな材料を使うかではなく、その先にあるパンの姿。そして、望んだ姿でパンが作られていくのは、シェフの高い技術があってこそだろう。

見た目も美しい絶品クロワッサン

「クロワッサン」345円

シェフが「一番作りがいのあるパン」というのが、同店人気ナンバーワンの「クロワッサン」。こだわりはバリバリした食感と、巻きと層の美しさだ。おいしいだけではなく、見た目の美しさも大切にしたいというシェフの思いが表れている。

折り込み回数を変えながら、さまざまな層を試し、バリバリした食感と発酵バターの風味の絶妙なバランスを実現。バターは風味がありつつも、くどさがないものを使用。サクサクの食感によく似合っている。

端正に巻かれた美しい層がバリッバリと小気味よい音を立てて砕けると、発酵バターがフワッと香ってくる。サクサクの食感の中から小麦の甘い味わいが現れる。リズミカルな食感とじんわりにじむ素材の旨さで病みつきになるおいしさだ。