「旬の食材を自家製生地のラビオリで包みスープ仕立てで」は店を象徴する一皿

−Primo piatto di Ravioli−旬の食材を自家製生地のラビオリで包みスープ仕立てで」
 

塩沢航さん

シェフが現地で体得した、北イタリアの郷土料理、アニュロッティ・ダル・プリン。ほうれん草の青みが、この土地への敬意を感じさせる。

「自家製リコッタチーズと大多喜町ほうれん草を詰めたアニュロッティ・ダル・プリンと大多喜町しいたけを和風コンソメスープに浮かべて」

濃厚でリッチなスープは、千葉の上総(かずさ)地区が誇るブランド牛「かずさ和牛」の旨みをじっくりと抽出したもの。香味野菜や和風出汁でバランスが整えられ、重層的な味わいに仕上がっている。もっちりとしたラビオリ、なめらかな自家製リコッタチーズ、肉厚でコリッとしたしいたけなど具材も見事。洗練されながら素朴さもあり、この町らしさと赤井シェフの技術が凝縮された一皿だ。

水揚げされたばかりの地魚、地元のブランド和牛などを活かした「メイン料理」

「−Pesce(魚料理)−房総鮮魚の旬の美味しさをそのままに」。この日は、「千葉外房のすずきのシチリア風パン粉焼き、大多喜町産トピナンブールのクレーマ、ビーツと長生村そばの実のリゾット仕立て」

スペシャルランチコースのメインは「Carne(肉料理)」が基本だが、事前に相談すれば「Pesce(魚料理)」も選べる。この日はドライトマト、ウイキョウ、アンチョビ、レモンピールなどをミックスした特製パン粉が香る旬の白身魚が登場。そばの実の豊かな香り、弾けるような食感に、ビーツやトピナンブール(菊芋)の優しい甘さが絶妙に調和する。

「かずさ和牛」など地元の厳選牛を使用したメインも非常に魅力的。魚か肉か迷った際には両方を楽しめるスペシャルディナーコースを選択すれば間違いない。

「−Carne(肉料理)−5ランクかずさ和牛と房総野菜をいすみ鉄道に乗せて サルサタルトゥフォネロ(黒トリュフのソース)」
 

塩沢航さん

噛むほどに幸せがあふれ出す、地元のブランド牛。窓の向こうを走るいすみ鉄道が、皿の上も走る。

手間を惜しまない料理の数々から伝わるシェフの真心

−Dolce−シェフのこだわりデザート」
 

塩沢航さん

コースの余韻に浸りながら、ドルチェを口に運ぶ。束の間の非日常をまた味わいたくて、つい次の予約を入れてしまう。

ティラミスとあんみつのコラボレーション、サボイアルドのタルトレット、豆腐白玉、豆3種のあんこ和え、エスプレッソゼリー、カカオビスキュイ、カカオクランブル、季節のフルーツコンポート、マスカルポーネとホワイトチョコのクレーマと盛りだくさんの内容

ティラミス、あんみつ、フルーツパフェの要素が融合した複雑な構成のドルチェもすべて手作り。あんこだけでも3種の豆を使い分けるなど、持てる技術を惜しみなく注ぐ赤井シェフだが「たいしたことは何もしていませんよ」と謙遜する。

大切にしているのは「遠くから足を運んでくださるお客さまに、ここだけでしか楽しめない料理を提供したい」という思いだ。房総の幸とシェフのおもてなし、そして美しい原風景……田園に囲まれた茅葺き屋根の古民家では、誰もが心から満たされるひとときを過ごせるだろう。

東京湾アクアラインを利用すれば、東京から自動車で1時間ちょっと。東京駅から高速バスで約1時間30分と公共機関でのアクセスも悪くない。

近年、廃校をリノベーションした宿泊施設「ちょうなん西小」が誕生するなど、魅力を増しているいすみエリア。付近には鉄道や城など名所も揃うので、観光と合わせて満喫してはいかがだろうか。

※価格は税込。

※本記事は取材日(2022年1月11日)時点の情報をもとに作成しています。

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撮影:佐藤潮
文:佐藤潮・食べログマガジン編集部