魚介や肉だけでなくイタリア野菜なども上質。房総の幸による絶品コースが登場する

〈食べログ3.5以下のうまい店〉

「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて言う人もいるが、それは東京や大都市の話。

口コミ数が比較的少ない地方都市では、「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことも十分あり得る。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていない“とっておき”の「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回、美食家として知られる放送作家の塩沢航さんがおすすめしてくれたのは、食べログ点数3.24の田畑に囲まれた茅葺屋根の古民家だった。

※点数は2022年2月時点のものです。

教えてくれる人

塩沢 航
小山薫堂事務所「N35」の放送作家。「オモウマい店」「アナザースカイ」「有吉く
んの正直さんぽ」「ミライ☆モンスター」などを担当。師匠譲りの食いしん坊で「パ
レ・ド・Z」「リモートシェフ」など食にまつわるコンテンツも多数手がける。コロ
ナ禍において、YouTubeチャンネル「人気シェフのうちレシピ」をプロデュース。

自由な発想で掛け合わせる房総の幸×イタリア郷土料理「Ristorante UNO」

徳川四天王の一人、本多忠勝の城跡が残る大多喜町。房総半島の真ん中ほど、森林の面積が町の約7割を占める牧歌的な田舎町だが、ここにミシュランの星付き店などで腕を振るってきたシェフが移住している。修行中に見たイタリア北西部の田園風景と重なる、大多喜町の豊かな環境に感銘を受けたのがきっかけだそう。

パスタ、フォカッチャ、ドルチェまでコースはすべて赤井徹也シェフのお手製
 

塩沢航さん

シェフは丸の内ビルディング最上階にある「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」でセクションシェフを務めていた赤井さん。大多喜町をはじめとする房総半島で育まれた豊かな食材を、素直に、丁寧に、イタリア料理に仕立てている。地に足の着いたおいしさを担保しつつ、華やかさもあり、デートやハレの食事会にピッタリ。古民家を広々と使ったレイアウトもまた良し。

いすみ鉄道の線路と夷隈川に挟まれた田園の一角にある、築100年以上という茅葺き屋根の古民家

店は元々、アガサ・クリスティ作品などの翻訳を手掛けた故宇野輝雄氏の生家だった建物。元家主の名とイタリア語で1番を意味する「UNO」にちなみ、小山薫堂さんが「Ristorante UNO」と名付け、2019年10月から営業している。

正面玄関奥にガラス戸を活かしたキッチンスペースを設けるなどモダンな雰囲気
 

塩沢航さん

窓の向こうに、いすみ鉄道が走る最高のロケーション。電車が通る時間を教えてくれるというサービスもまたいい。夜はあたり一面闇に包まれてしまうので、ランチか、春夏の夕方早い時間からのスタートをおすすめしたい。

正面玄関に続く道にあるフットライトが足元を照らしてくれ、幻想的な雰囲気になるので、夜のディナータイムもまた素敵だ。

開放的な平屋造りの魅力を活かした店内。縁側の先に広がる里山の景色も名物である

「素材感を活かした料理を、最高の景色とともに楽しんで欲しい」という塩沢さん。おすすめは1日7組限定のスペシャルランチコース「Degustazione di pranzo」5,500円だ。2種類の前菜、ラビオリ、手打ちパスタ、メイン料理、ドルチェの全6品で房総半島の幸を満喫できる。

また、肉と魚それぞれのメインディッシュを楽しみたい場合は1日4組限定のスペシャルディナーコース「Degustazione di cena」11,000円が最適。こちらは全8品で、近郊の港から直送の伊勢海老を前菜に使用するなど、贅を尽くした内容となっている。