【噂の新店】estilo h(エスティーロ アチェ)

薪窯を囲んだカウンターで

平安神宮や南禅寺にほど近い京都・岡崎に、2026年2月スペイン料理店「estilo h」が移転オープンした。店は町家が並ぶ路地にあり、風情ある佇まいだ。

店は町家を改装。一見レストランとは思えない雰囲気
アールが美しい赤色のカウンター。坪庭には樹齢100年以上の木が

オーナーシェフは畑下公平さん。スペイン・マラガでも修業経験があり、2023年には「World paella day cup」で世界チャンピオンになった人物だ。「移転するにあたって、念願の薪窯を導入しました」と話す。「薪窯を囲んで一体感を出すために、カウンターをアールにしました。僕がここで楽しく調理していることをお客様に感じていただければうれしいです」

「岡崎エリアは緑が多く、散歩もできて気に入っています」と畑下さん
 

笹岡さん

数年前、食通の先輩にお連れいただいたのが最初。岡崎に移転オープンされるとうかがい、訪問しました。曲線の美しい内装も見どころの一つです!

いただけるお料理はこちら!

お料理は19,800円のおまかせコース1本で、18時からの一斉スタート。季節のパエリア2品を含む9品の構成だ。

5、6月のコースのスターターのガスパチョ。泳ぐ稚鮎も美しい。具材はじゅんさい、稚鮎。鮎蓼オイルが風味と香りをプラスしている。

ガスパチョ

さっくりと揚げた鱧のフリットには、オリーブやケッパーを使用したタルタルソース、パプリカのドレッシングを。そして天には、これでもか!とたっぷりトリュフを削った。「トリュフはタルタルソースによく合うんですよ」と畑下さん。そして素敵な器は、奥様である陶芸家shiiboさんの作品。元々畑下さんが持っていた皿にナポレオンフィッシュをイメージして絵付けしたそう。他の多くの皿もshiiboさんの作品。

鱧のフリット

薪火で焼き上げたフィレ肉。薪のほか、最後にクロモジを使い、より香り高く。塩コショウのほかに少し醤油を塗り、より表面は香ばしく焼き上げている。シンプルに塩か赤ワインソースでいただく。添え野菜は、ビーツと賀茂なす。肉はほどよい脂で、香り高い。

フィレ肉
 

笹岡さん

アチェでいただくお肉はあっさりしていて、個人的にかなり好みです。

そしていよいよパエリアのご紹介! 楢の木の薪火を使って焼き上げる。

「パエリアは焼くというよりも焼き付けるイメージ」と話す畑下さん
理想のパエリアの焼き上がりを問えば「米に芯がなく、全面にバチッと焦げが入っている状態」とのこと

これが鰻のパエリア。米は滋賀県産、出汁は鱧を使用。ほおばれば、うまみを十分に吸った香ばしいお米、木の芽の香り、鰻のコクが一気に押し寄せる。「世界大会で優勝したときも、1回戦で鰻を使いました。パエリアの具材はさまざまな可能性があります。だから、コースで出すパエリアは、1種は毛ガニや鰻など必ずおいしい!と実績のある具材で、もう1種類は京都というよりは旬を意識した素材で遊びたいと思っています」

鰻のパエリア
 

笹岡さん

時には直火で、火との距離を調整しながら、香ばしいソカラをしっかり作ってくださいます。薪の香りもご馳走。タケノコ、蟹、ホタルイカ、アワビ、松茸……季節ごとにいただきたい。パスタのパエリア、フィデウアもおすすめ!

日本でもパエリアをもっと身近に!

「バレンシアでは週末にみんなでパエリアを食べる文化があって、パエリアがコミュニケーションツールになっているんですよ。まさに“同じ釜の飯を食べる”ですよね」と畑下さん。「日本でもパエリアをもっともっと身近にしたいです。パエリアで世界をハッピーに!」と笑う。カウンター9席のみのプレミアムシートは、年内の予約はほぼいっぱいだそうだが、なんとか一度訪れてみたい。

店先に置かれた「World paella day cup 2023」のトロフィー
スペイン語で「エスティーロ(estilo)」は「スタイル」の意味で、「アチェ(h)」は畑下さんの頭文字
 

笹岡さん

世界一のパエリアはもちろん、前菜からお肉まで、すべてのお料理が素晴らしいです。

教えてくれた人

笹岡 隆甫

1974年京都生まれ。京都大学工学部建築学科卒業。舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求し、日本-スイス 国交樹立150周年記念式典をはじめ、海外での公式行事でも、いけばなパフォーマンスを披露。2016年には、G7伊勢志摩サミットの会場装花を担当した。主著に『いけばな―知性で愛でる日本の美―』(新潮新書)。

※価格は税込・サービス料別。

文:木佐貫久代
撮影:福森公博