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大木さんが勧める「鱈のじゃっぱ鍋」の楽しみ方を大公開!
まずは軽く昆布出汁に「白子」をくぐらせて、素晴らしい旬の甘味を満喫
基本的に食べる順序は自由だが、真鱈の旬を待ちに待った常連客は、まず「白子」だけを味わう。湯が沸騰する直前の温度を保つために、一塊ずつオタマですくい入れるのがコツ。30秒程度さっと火を入れていただく、というのが通の食べ方。
大木淳夫さん
中でも白眉は白子。何とも素晴らしい甘味。まずは白子を軽く煮て。煮る時間によって変化する食感も楽しい。食感が変化した白子などを存分に味わいます。その後にアラを入れて、昆布出汁の汁に骨の出汁を足すことでさらに旨味を重ねます。ちなみに今季の鱈は1月~2月くらいが一番おいしいようです。
鍋を食べ終えるまで、フレッシュな柑橘の香りが続いていた自家製ポン酢。こちらは一晩かけて昆布の旨みを常温で抽出し、煮立たせてから丁寧に鰹出汁を取り、橙(だいだい)の搾り汁で仕上げたものだ。段々と真鱈の旨みが加わることも計算されている。その味わいの変化も堪能してほしい。
「じゃっぱ」で出汁を取ってから「切り身」や野菜を投入
鮮度抜群の「白子」を味わった後は、旨みが出やすい頭や骨のまわりの「じゃっぱ」を鍋に入れて出汁を取るのがおすすめ。ある程度まで煮立たせたら、鍋の中で行方不明になりやすい、「肝」や「胃袋」から火を入れるのが良いだろう。
真鱈は筋肉ではなく「肝」に脂肪を溜め込む性質があり、その味はアン肝よりも濃厚と評判だ。コリコリと豊かな食感の「胃袋」も面白い。
ちなみに足が早いことで知られる鯖よりも、実際には真鱈の方が傷みやすい。特に内臓はすぐに形が崩れてしまうため、都内で味わえる店は非常に貴重である。
濃厚な真鱈の旨みが溶け込んだ汁で〆の「雑炊」
鍋の残り汁をベースに、店主が仕上げてくれる秘伝の「雑炊」。とき入れた卵の白身が適度に固まっており、わずかに残った白子と食感の対比が面白い。仕上げに加えられた黄身により、真鱈の旨みがより濃厚に感じられるはずだ。
大木淳夫さん
最後は白子の濃厚な旨味が溶け込んだ汁で雑炊を。忘れ難いおいしさです。
遠方の漁業関係者と綿密に連絡を取り合うからこそ実現できている「鱈のじゃっぱ鍋」。
大木淳夫さん
以前は鱈の季節以外は絶品の馬のしゃぶしゃぶがあったのですが、いい馬がいなくなったとのことで今は出していないのが極めて残念です。ただ、そこまで素材にこだわるのが名店の矜持なのでしょう。
これからの春や秋などに、どのような新しい鍋が登場するのか、期待は高まるばかりである。