いま食べたい“うどん”が分かる『百名店』

日本人の心をつかんで離さないうどんには、全国津々浦々、麺や出汁に地域の特色があるため、「結局美味しいお店はどこ?」という疑問を抱くことも多いはず。

 

そこで、全国のうどん店の中で食べログユーザーから高い評価を集める100店を集結した、『食べログ うどん 百名店』を食べログから発表しました!

 

今回は「うどん居酒屋」に注目し、うどんライターの井上こんさんにその魅力について解説していただきました。

『百名店』に見る、「うどん居酒屋」が人気の理由。

近ごろ話題の「うどん居酒屋」や「うどん酒場」。お酒と料理の後にうどんで〆る博多生まれのスタイルで人気を集めており、“うどん居酒屋”という言葉が生まれる前から営業しているところも合わせれば、気軽に入れる大衆店からデートや接待に使えるお店まで、東京にはさまざまなうどん居酒屋が存在します。そのなかから今回は文京区・根津にあるとびきりステキなお店をご紹介!

 

地下鉄「根津」駅から3分、閑静な住宅街をのんびり歩くと突如、竹で囲まれた厳かな蔵造りが現れます。大阪出身の平岡良浩さんがこの地に「根津釜竹(かまちく)」を構えたのは12年前のこと。地元・羽曳野で父親が営んでいた「釜竹」で修業後、25歳で独立するのと同時に東京へ。

お店に足を踏み入れるや、都会の喧騒から切り離されたような安らぎが全身を包み、ハァと小さくため息。建築家の隈 研吾氏が手がけたモダンジャパニーズな空間がガラス窓の向こうに広がる日本庭園と調和し、昼は寺社のごとく凛然と、夜は色気が漂う洒落た表情で客人を迎えてくれます。

中庭の反対側には、元の蔵を活かした趣が異なる部屋。2階建てから吹き抜けに改装した空間は、土蔵とあって夏でもひんやりと涼しく、居心地抜群。

面白いことに、このお店には普通のうどん屋にあるであろうきつねうどんやとろろうどんはなく、品書きには端正な字で“釜揚げ”と“ざる”と書かれているのみ。けれど、さらに品書きをめくれば、そこには「幻魚(げんげ)の一夜干し」や「蛸の粕漬け」、「あおりいかの炙り」など、酒呑みが喜びそうな肴がずらり! ごくり、急に喉が渇いてきたような。

うどん職人であり、唎酒師でもある平岡さんが作るのは“お酒を飲むことを前提とした料理”。「自分がお酒好きだから、そういうものを作りたくなってしまう」とニヤリ。

上画像は奥から時計回りに、「鬼いくら」(600円)、「蛸の粕漬け」(400円)、「鴨ロース」(650円)。鬼いくらは、ザクザクと粗い食感のおろし大根にいくらをのせ、出汁醤油を回しかけた“さっぱり系つまみ”の代表。ふんわり粕の香りがする蛸の粕漬けは、まさに作り手の酒好きっぷりを表した“ザ・アテ”。そして、淡いピンク色を残した鴨肉はしっとりとした身質から薫香を漂わせる逸品。埼玉の銘酒・神亀を含むと、米のふくよかな香りと鴨の骨太な旨みが交差し……さて、もう一切れ!

 

お腹がこなれたところでお楽しみのうどんといきましょう。ざるうどんは太い麺と細い麺の2種類(各900円)。麺の香りを逃さないよう、注文を受けてから切るのが平岡さんの信条だといいます。下画像は細いタイプ。天井の照明が映り込んだ麺がきらきらと光り、その瑞々しさに心をくすぐられます。そして、ひと啜り。決して見た目の細さに騙されてはいけません。凛としなやかなコシとキレのあるつゆに、それまでのほろ酔い気分からあわてて居住まいを正してしまうかも!

外の世界から遮断されたかのような穏やかな時間が流れる「根津 釜竹」。日本庭園を眺めながら、麺前から〆まで優美なひとときをお楽しみあれ。

 

 

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撮影:外山温子
取材・文:井上こん