住宅街にあるペルプネ。扉の向こうには何が待っている?

〈食べログ3.5以下のうまい店〉

「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて言う人もいるが、それは東京や大都市の話。

口コミ数が比較的少ない地方都市では「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことも十分あり得る。

そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていないとっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。

今回の推薦者は、料理雑誌をはじめ食の取材を多く手がけるライター&カメラマンの佐藤潮さん。札幌近郊のうまい店に詳しい佐藤さんがお酒を愛する人のために、ちょっと風変わりな小樽郊外のバーを教えてくれた。

教えてくれる人

佐藤 潮

北海道札幌市出身。2005年から編集執筆のほか撮影も行う。これまでに「東京カレンダー」「おとなの週末」「食楽」「料理王国」「フライデー」といった媒体でグルメ記事を制作。チベットやアマゾンの奥地など世界各地の料理も食べ歩く。高級フレンチから昆虫の素揚げ、ジンギスカンキャラメルまで、どんな食べ物でも楽しくいただくのがモットー。共著に「夢がかなう世界の旅」(ぴあ) 。

お酒+焼菓子が止まらなくなる、小樽の隠れ家「ペルプネ」

札幌と小樽の境目あたりにある「ペルプネ」は、お酒を愛する人がひそかに集うスタンドバーだ。看板のない佇まいはフリーの客には見つからない絶妙さで、ビーチハウス風の洒落た空間にはカウンター5席のみ。「場所はJR銭函駅から徒歩15分ほど。住宅街のなかに紛れ込んでいるから、初見だと道に迷うんじゃないかな」と佐藤さん。ここは店主が自宅の一角で月に数回、主に週末に営業している(※予約は応相談)。

吹き抜けのサンルームにカウンターテーブルのシンプルな内観だ

「ラム酒香るプリンが評判でカフェと思われがちですが、実際には熟成した日本酒を、つまみ向けに作られたお菓子とともに昼からガッツリ楽しめたりします」。営業日時はお店のInstagramでお知らせする、要予約の不定期営業。実はこの休みの多さ(というか営業日の少なさ)は、佐藤さんもおすすめする「お酒のための焼菓子」と関わりがあるらしい。

ペルプネ謹製「飲まずにいられないお菓子」とは?

この品揃え、お酒談義に花が咲きそうだ

「ペルプネ」について、佐藤さんの情報はかなり謎めいている。「お菓子がメニューの中心なのですが、どれも日本酒やクラフトビールにぴったり合うんです。北海道産のクラフトビールや旨み強め系の日本酒が揃っています」。行ってみると、カウンターバックや冷蔵ケースにはあらゆるジャンルのお酒がずらり。どのジャンルも独自のラインアップが光る。

営業日も時間も、多忙な店主と客の間で決めている

店主の澤井さんがお店を持ったのは2014年頃。「このあたりは住宅地で、大好きなお酒を楽しむ場所が近くにないんです。それで自宅を改装してみました」。澤井さんは別途、お酒のつまみになるクラッカーや焼き菓子を作ってWEBショップで販売している。これが酒愛好家の界隈で評判になり、2018年からは月一回のセット販売が続いている。だから毎月下旬は発送のためにペルプネを閉め、製造に集中しなくてはならないのだそう。

焼菓子各種は月一回のセット通販で注文できる

この焼菓子を少しだけペルプネにも置いたところ、お客さんに「お酒に合うからここでつまんでもいい?」と言われるようになる。「ワンオペなので、ご用意できるのはお茶やお酒のためのおつまみが少々。あとは、お店に焼き菓子が並んでいれば買って召し上がる方もいらっしゃいますね(笑)」(澤井さん)

不思議においしい、飲める焼菓子。佐藤さんのイチ押しは?

飲まざるを得ない! 熟成酒かすクラッカー

「熟成酒かすクラッカー」 各450円 ※焼き菓子はすべてテイクアウト時の価格

酒を愛する澤井さんの焼菓子は、オリジナリティ満点だ。最初のきっかけは、馴染みの蔵の酒かすから生まれた「熟成酒かすクラッカー」。まずはこれを食べてみて、という佐藤さんは「熟成させてクラッカーの材料に使う酒かすは『千代むすび』(鳥取の蔵)のもの。お酒も『千代むすび』と合わせるのが好み」。ほんのりチーズのような風味で、ついついお酒に手が伸びる!

 

佐藤 潮さん

ラムレーズン、ブラックペッパー、カカオなど何パターンも味があり、合わせるならビールかなと思いきや、日本酒との相性もバッチリです。優しく香るフレーバーで、けっこう手間がかかっているみたい。