〈食べログ3.5以下のうまい店〉
巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。
そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回はクレイジーケンバンドのギタリストにして焼きそばマニアの小野瀬雅生さんが、一度訪れればクセになる、東京・五反田の沖縄料理の店を教えてくれた。
教えてくれた人
小野瀬 雅生(おのせ・まさお)
「クレイジーケンバンド(CKB)」のリードギタリスト、バンド「小野瀬雅生ショウ」のリーダー、歌も担当。通称は“のっさん”。緩急自在なギタープレイで“ハマのギター大魔神”の異名を持つ。アコースティックユニット「小野瀬雅生と須藤祐」やソロ名義でもライブ活動を行うほか、数多くのアーティストと共演、楽曲提供をしている。横浜DeNAベイスターズの熱烈なファンであり、高級・B級問わぬ食べ歩き家としても知られる。ブログやnote、YouTubeなどでさまざまな分野の文章や動画を配信しており、横浜市商店街総連合会の食イベント『ガチ!シリーズ』に例年参加など多岐にわたる活動を精力的に行っている。クレイジーケンバンド初のカヴァー・アルバム『好きなんだよ』も好評発売中。
北海道出身のマスターが作る沖縄料理が評判「やなわらバー」
五反田駅を出て居酒屋などがチラホラ立ち並ぶ通りを歩いていくと、ふと目にとまるオリオンビールの提灯とシーサー。中はカウンター席のみで、大衆酒場の雰囲気漂うこちらが、地元の常連客を中心に愛されている沖縄料理の店「やなわらバー」。
食べログでの点数は3.32だが「何を食べてもとにかくおいしい。色々お店を巡っていた時期に偶然出会い、通い続けてもうすぐ10年になります」と、食べ歩き家としても知られる小野瀬さんもコアなファンの一人だ。
※点数は2021年10月時点のものです。
小野瀬さんと言えば、焼きそば好きが高じて食べ歩き本「焼きそばの果てしなき旅」を執筆するほどの焼きそばマニア。そんな小野瀬さんが「おいしい!」と太鼓判を押す「やなわらバー」。迎えてくれるのは、坊主頭に髭、鼻ピアスと、少々イカつい風貌ながら、実は気さくで人情味あふれるオーナー・前川敏也さん。食べログのクチコミを見ても「マッチョなオーナーが……」「強面だけど優しい」など、とにかく前川さんに関するコメントが多く、その人柄にひかれてリピーターになっているのがうかがえる。しかも女性客が多いというのも興味深い。
「(自身へのコメントが多いのは)口うるさいから(笑)。携帯をいじりながら料理を食べるような人には容赦なく注意します。女性は悩みを吐き出しにくる方が多いかな。いろんな常連さんが相談に乗ってくれるから、ここに来れば大体の悩みは解決できるんです」
前川さんの前職はアパレルブランドのデザイナー。体を壊したことをきっかけに、元々好きだった料理の腕を活かそうと16年前にこの店をオープン。店名の「やなわらばー」とは、沖縄の方言で“悪ガキ”や “やんちゃ坊主”という意味だとか。
なんともキャラクターにぴったりなネーミングだが、この店のアットホーム感は会話だけにあらず。
「量なども相談するとフレキシブルに大盛にも半分にもしてくれるホスピタリティがあります。そして気が付くと新メニューが貼り出されていたりして、ウマイモノ研究にも余念がありません」と小野瀬さんが語る通り、量の調整からトッピングの追加まで、わがままなオーダーにも柔軟に応えてくれる。さらにメニューは前川さんの気分次第で常に変化。客のリクエストから新メニューが誕生することも。