お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしいこの連載。第31回は、上質で洗練されたお店が集う、東京・仙川のスイーツスポットを紹介します。後編では、ドーナツ専門店、パティスリー、和菓子店を巡ります。

【猫井登のスイーツ探訪31・後編】仙川のスイーツショップを巡る

 

猫井先生

後編は、仙川駅南の交差点の東側と南側のお店を巡ります。まずは、前編で紹介した「餡の輪」を出て右へ行くとすぐにあるドーナツ屋さんです。

【4軒め】ふんわり・もっちり・しっとりの三拍子を楽しめる「ドーナツ工房 レポロ」

 

食べログマガジン編集部

アンティークカジュアルな雰囲気の外観ですね!

 

猫井先生

パティシエをされていた宮田さんがご主人と2011年にオープンされたお店です。ドーナツはイースト菌を使った発酵生地ですが、極力油を吸わないように工夫がされています。新鮮な油を使い短時間で揚げているので、油っぽさがありません。ふんわりとやわらかく、歯切れよく、翌日でもおいしくいただけます。

まめぞう
出典:まめぞうさん
 

食べログマガジン編集部

ドーナツの生地には、イースト生地以外のものもあるんですか?

 

猫井先生

ベーキングパウダーで膨らませる「ケーキ生地」、水蒸気で膨らませる「シュー生地」のものがありますね。日本では、イースト生地が人気ですかね。

 

食べログマガジン編集部

そもそもドーナツってどこの国のお菓子なんですか?

 

猫井先生

生地を揚げて作るお菓子は世界中にあるので難しいところですが、オランダで作られていた「オリボール」という揚げ菓子が、イギリスの清教徒によってアメリカに伝えられ、広まったとも言われていますね。

 

食べログマガジン編集部

いろんな国を経由しているんですね。日本にはいつ頃伝わったんですか?

 

猫井先生

一応、明治時代には伝来したと言われていますが、一般に広まったのは1970年に「ダンキンドーナツ」が、1971年に「ミスタードーナツ」がオープンしてからでしょうね。

 

食べログマガジン編集部

なるほど〜。ドーナツって何年かおきにブームが来ていますよね?

 

猫井先生

簡単に日本におけるドーナツの歴史を振り返ると……1990年代後半、ドーナツ人気は一時低迷し98年に「ダンキンドーナツ」が日本から撤退しますが、2006年に「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が上陸すると再び人気に火が付き、2008年には「はらドーナッツ」がオープンします。2015年には、セブンイレブンが「セブンカフェ ドーナツ」の販売を開始し「ローソン」「ファミリーマート」なども参戦。ドーナツ界でもコンビニが一気に勢力を拡大します。昨年ぐらいから、また新しい動きがあって、ふわっとした生地に、カスタードクリームを絞り入れる「クリームドーナツ」というものが、全国的にカフェなどで人気となっています。

 

食べログマガジン編集部

ドーナツって短い間に紆余曲折あったスイーツなんですね! こちらのお店のドーナツはどんなタイプのドーナツなんですか?

「プレーン」150円
 

猫井先生

いろんな種類がありますが、まずは定番の「プレーン」で生地の食感を味わってほしいですね。ふんわり、もっちり、しっとり。これだけで充分に旨味のある生地で、コーヒーとの相性が抜群です。

 

食べログマガジン編集部

朝食にもぴったりなドーナツですね。ほかにも、中にフィリングが入っているタイプもあるんですね!

「ピーナッツきなこ」195円の断面
 

猫井先生

そうですね。例えば「ピーナッツきなこ」は、ピーナッツクリームにきな粉のペーストを混ぜ込んだものですね。意外な組み合わせですが、相性がいいんですよ。「ラムレーズンとクリームチーズ」は、特製のラムレーズンにクルミ入りのクリームチーズを合わせたもので、クリームが存在感アリアリです。

「ラムレーズンとクリームチーズ」255円の断面
 

食べログマガジン編集部

ビジュアル的には、チョコレート系も気になるところです!

「3種のナッツとヘーゼルナッツチョコレート」255円
 

猫井先生

特に「3種のナッツとヘーゼルナッツチョコレート」は、くるみ、アーモンド、マカダミアナッツがごろごろ。食感が楽しいですよ。

 

猫井先生

一旦、仙川駅南の交差点に戻り、駅を背に左へ。お次はケーキ屋さんです。

【5軒め】名店の味を継承するパティスリー「レネット」

 

食べログマガジン編集部

コンクリート打ちっぱなしの建物の中にケーキ屋さんが! どんなお店なんですか?

ひっくすろっくす
出典:ひっくすろっくすさん
 

猫井先生

以前こちらの場所には、日本のフランス菓子界で有名な武江章シェフの「サロン・ドゥ・シェフ・タケエ」というお店があったのですが、2015年12月に閉店しました。その後、現「レネット」パティシエの坂本さんの奥様が「タケエ」の開業当初から同店の販売担当をされていたご縁で、坂本さんがお店を引き継ぐことに。武江さんの味を後世に残すべく、数カ月間指導を受け、門外不出のレシピも受け継いだそうですよ。

 

食べログマガジン編集部

なるほど、名店の味を継承するお店なのですね。季節ならではのおすすめなどありますか?

「タルトフリュイ」715円
 

猫井先生

旬のフルーツが味わえる、季節の「タルトフリュイ」がおいしいですよ。サブレ生地とアーモンドクリームの土台にカスタードクリームを絞り、イチジクやブドウのほか、苺、バナナなどのフルーツを盛ったものです。

 

食べログマガジン編集部

イチジクが綺麗ですね〜。そしてやはり秋・冬はモンブランが気になります!

「モンブラン」495円
 

猫井先生

こちらの「モンブラン」は、サブレ生地にチョコレート、マロンスポンジ、渋皮栗、生クリーム、カスタードをマロンクリームで包み込んだものですね。どちらのケーキもわりとあっさりとした味わいですよ。