【カレーおじさん \(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2021年9月を振り返る

コロナ禍においては飲食店が移転する際にも、近場でない場合は常連さんに「引っ越してもまた来てほしい」とお知らせすることさえ不要不急の移動ということを考えるとしにくく、移転の告知が十分にできないという話を飲食店の方から聞いたことがあります。そんなこともあってか、コロナ禍においては名店や人気店であっても、移転したことすらそもそも知られていないということが少なからずあるように僕も感じています。というわけで今月は「コロナ禍に移転したお店特集」というテーマでまとめてみました。

福岡・秋月から東京・森下へ移転した「月と亀」、表参道から代官山へ移転した「ハブモアカレー」、新宿から高田馬場へ移転した「極哩」、新代田から幡ヶ谷へ移転した「喫茶 壁と卵」、以上4店舗です。前店舗からのファンの方も、移転先の街で在住在勤の方も、要チェックです!

【第1週のカレーとスパイス】福岡のカレーの名店が東京に帰ってきた! カレーマニア絶賛のカレーを、まずはテイクアウトで「月と亀」

福岡・秋月に「月と亀」という名店がありました。以前の連載「今週のカレー」でもご紹介したお店であり、人口も多くないのどかな場所にありながら「食べログ カレー WEST 百名店」にも選ばれた名店なのですが、その月と亀が東京・森下に移転してきたのです。

といっても実は月と亀の前身となるお店は森下にかつてあった「上亀」。こちらは居酒屋だったのですが、その日曜昼を間借りして営業していたのです。今から10年も前の話ですから、当時はまだ間借りカレーという言葉も浸透していなかった頃。通って行くうちにどんどん人気が出て行列店となったのですが、マスターがお子さんを地元で育てたいという思いから、福岡の秋月に移転したわけです。そしてその子育ても落ち着き、森下に帰ってきてくれたということ。上亀時代からのファンとしてはとてもうれしい出来事です。

コロナ禍ということもあり、最初はテイクアウトのカレー弁当からスタート。場所は上亀のあった場所のすぐ裏手。小さな2階建ての建物です。

1階で注文と受け取り。2階は今後月と亀名物のインド定食を食べられる場所として準備中とのことで期待が高まります。

「本日のスパイス丼」

今回は弁当用に開発したという「本日のスパイス丼」850円をいただきました。こちらは鶏のスパイス焼きとキーマカレーがご飯の上にのったもの。おいしい! 優しい! おいしい!

「あさりカレー弁当」

そしてさらに名物「あさりカレー弁当」800円も。たっぷり入ったあさりのうま味とスパイスの香りが渾然一体となり、これぞ月と亀と思える絶品カレーです。どちらのカレー弁当も食べ進めるごとに身体がぽかぽかと温まり、元気が出てくるようなカレーなのです。

上亀、秋月での月と亀、そして今に至るまで連綿と続く和風南インド料理というスタイル。喫茶店、エスニック、スープカレー等様々な飲食店で修業経験を持つマスターがシンガポール旅行に行った際に南インド料理と出合い、感動して自分でも作り始めて家族に食べさせてみたものの、奥様がスパイスの強い料理があまり得意ではなく、そんな奥様でもおいしく食べられるものを作ろうと進化させた、家族愛に溢れたカレーが月と亀の料理の原点なのです。だからこそマニアでも初心者でもどちらにもおいしく感じるという絶妙の仕上がりとなっているのでしょう。

カレーのみならず雑穀米や副菜に至るまでそのすべてに愛がこもっていて、舌も心も体も喜ぶおいしさは健在です。色々と食べている人ならわかると思うのですが、圧倒的に何かが違うのです。その何かはもちろん技術や知識もあるのでしょうが、それだけでは説明できないサムシングが存在し、それが何かと考えるとやはり愛なのではないかと僕は月と亀の料理を食べるたびに思うのです。

食べ終わった後、自然と笑顔になってしまう。そしてその笑顔がその日一日ずっと続くようなカレー。世界各国5,500店舗以上でカレーを食べてきた僕ですが、その中でトップ10に確実に入る程大好きなお店です。インド定食の復活を心待ちにしつつも、まずはこの感動的なカレー弁当から皆さんにも是非味わってほしいと思います。超がつく程におすすめですよ!

※本記事は取材日(2021年8月30日)時点の情報をもとに作成しています。

【第2週のカレーとスパイス】メインからデザートまでパーフェクト!代官山散策の腹ごしらえに絶品カレーで気分向上↑「ハブモアカレー」

表参道エリアのカレーの代表格として知られていた「ハブモアカレー」が2021年3月、代官山に移転したのはご存じでしょうか? おしゃれな街からまた違うベクトルのおしゃれな街への移転ですが、新店舗は渋谷からも恵比寿からも徒歩圏内。喧騒から離れた静かな裏通りにあります。

店内は青を基調としたスタイリッシュな内装。2フロアに分かれていますが、半地下と中二階的な形で、地下にテーブル席、中二階に1人用カウンターとキッチンという構造です。

ハブモアカレーと言えば多種多様なカレーやおかずが並び、それが見た目にも美しくSNS映えすることでも知られていますが、新店舗ではよりわかりやすいメニューになりました。ベジのカレーセットかノンベジのカレーセットがまずあり、好きなおかずがそれぞれ150円ずつで好きなだけ追加していくという形です。

「チキンカレーと豆カレーセット」に付け合わせを3つ付けて

ノンベジメニューの「チキンカレーと豆カレーセット」1,100円に付け合わせとして「マスタードディライト」「ココナツグレービー」「インド風ポタージュ」各150円を追加してオーダーしました。

それぞれ単体では引き算のおいしさとなっているので、気になる付け合わせをどんどん加えて行った方が満足度も確実に高まりますし、見た目にも美しさが増します。見た目以上に野菜のおいしさを堪能できるところがハブモアカレーの真の魅力。食べれば納得の相変わらずのクオリティです。

豆カレーは脇役でありながら主役も張れるくらいに濃厚かつパンチがあるカレー。チキンカレーにもにんじんやコーンがたっぷりと入っていて、やはり野菜もあってこそのチキンカレーとなっていて、それぞれ食べていくと優しい味わいでありながら身体がポカポカと温まり、元気が出てくるようなカレーなのです。

写真左上から「マスタードディライト」「ココナツグレービー」「インド風ポタージュ」

マスタードティライトは野菜と卵のマスタード炒め、ココナツグレービーは根菜をココナッツで煮込んだもの、インド風ポタージュは白菜のスパイスポタージュ的な作り。それぞれスパイス使いはシンプルで、だからこそ素材の味が引き立ち、野菜自体の持つおいしさを深く感じます。

おいしくてテンションが上がってきたのでデザートとドリンクのセットもいただきました。「巨峰のフルーツタルト」350円に「黒カルダモンのジュース」550円。通常は合計900円なのですがドリンクデザートセットだと700円とかなりお得です。

「黒カルダモンのジュース」

まず黒カルダモンのジュース。これが凄かった。フローズンカクテルのようなスタイルで、酸味がまず来てやわらかい甘味が追いかけてきた後にカルダモンの優しい香りがフワッと立つという。舌触りも滑らかで、ノンアルコールなのですが手の込んだカクテルをいただいているような満足感を得られました。

「巨峰のフルーツタルト」

巨峰のタルトもシンプルなタルト生地の上にたっぷりのった巨峰が程良い甘さ。実に魅力的なデザートです。

相変わらず、いや、さらにレベルアップしていました。カレーのみならずドリンクやデザートまで。時短営業が解除となったらアラカルトメニューにも力を入れていきたいとのことなので、今後にも期待が膨らみます。

元気になり、幸せな気持ちになれるお店。渋谷や恵比寿まで行ったらちょっと散歩がてら歩いてハブモアカレーというコース、ちょっと涼しくなってきましたし、健康の為にも気分向上の為にも良いと思います。

※本記事は取材日(2021年9月6日)時点の情報をもとに作成しています。