【第3週のカレーとスパイス】2種盛り以上で食べ比べを楽しみたい!自由な発想で変化し続けるカレー店が復活オープン「極哩 高田馬場店」

「極哩」が高田馬場で復活しました。極哩の歴史を簡単に辿ると、飯田橋で間借りカレーの店としてスタートし、すぐに飯田橋に2店舗目を開店。その後間借りでありながら都内に4店舗を構えるも、コロナ禍の影響で1店舗に集約した後に間借り先の事情で閉店。その後新宿駅直結の場所で期間限定オープンしたところ、人気も出て予定より少し長く営業し閉店。そして休業期間を経て、高田馬場に移転オープンしたのが2021年8月のこと。

極哩はその時々でカレーがどんどん変わっていきます。店主ご本人も飽き性と語るように、行く度に違うカレーが出てきます。時代ごとに大きく分けると、カレーのことはよく知らないまま独自の手法で作ったらやたらおいしくできたビーフカレーからスタートした飯田橋時代。スパイスカレーを知って色々試しながら大量仕込みに苦労した多店舗時代。原点に帰りつつ、他店舗とのコラボも開始して刺激を得だした飯田橋1店舗時代。そして日常的な大量仕込みにも慣れ、見た目にもこだわりまくった新宿時代。

今の高田馬場時代はどうかというと、見た目に入れる力を減らしてその分を味に注力し、大阪出汁カレーからも影響を受けつつ楽しく様々なカレーを生み出していると言えるでしょう。とにかく店舗が変わる度に違うお店かと思うくらいに変わるので、一度行った時の味の印象がそれほど良くなかったという方も、また行ってみてほしいのです。進化し続けているというよりは、三歩進んで二歩下がるものの、確実にまた三歩進むを繰り返してきて、ブレはありながらもトータルで見るとレベルアップしているという印象です。

前置きが長くなりましたが高田馬場の極哩。アルルというバーの間借り営業です。間借りでありながら夕方の時間帯も営業しているのがうれしいですね。

現在のメニューは大阪出汁カレー的なグレービーの「極カレー」、スパイスカレー的キーマの「極キーマ」、そしてあえてカレールウを使用したという家カレー的な「極哩のカレーライス」の3種。カレーの内容は随時変動します。これにトッピングも色々とあります。

この日は極カレーが「ブリのマンゴーカレー 昆布出汁と八海山のいちじくジュレ乗せ」、極キーマが「アサリと合挽肉キーマ」だったので、その「2種盛り」1,300円でお願いしました。

ライスをスパイス炊き込みご飯にチェンジした「ブリのマンゴーカレー 昆布出汁と八海山のいちじくジュレ乗せ」と「アサリと合挽肉キーマ」の2種盛り

ライスをスパイス炊き込みご飯にできる(12時までは無料サービス、以降は150円、炊き込みご飯が無くなり次第終了)ので、炊き込みご飯にチェンジ。この日は栗や枝豆を使った炊き込みご飯でした。

まず極カレー。ブリのうま味がしっかりと土台を支え、その上で踊って遊ぶような八海山ジュレ。これはかなり和食の感覚。マンゴーは隠し味的な使われ方なのですが、マンゴーがあるからギリギリカレーになっているような。

よく見ると半透明のジュレがのっているのが見える

キーマは合挽肉とアサリのうま味の三重奏。それぞれ違うベクトルのうま味が合わさることによって楽しさとおいしさが増すので、2種盛り以上がおすすめです。炊き込みご飯はシンプルに引き算のおいしさ。素朴ながら季節を感じさせる役割を担っていました。実にトータルバランスが良い一皿に満足。自家製クラフトコーラ(カレーと一緒なら200円)も爽やかで食後にちょうど良いです。

「自家製クラフトコーラ」

極哩のカレーは辛さが控えめ。辛いものが好きな方はトッピングで「激辛スパイスホルモン」300円を加えるのが良いでしょう。こちらはクミンシードを中心としたホールスパイスの香りと辛さがしっかりと加わるナイストッピングです。

別の日の2種盛りに「激辛スパイスホルモン」をトッピング

誤解を恐れずに言うと、ブレのあるお店です。しかし、だからこその楽しさもあるのです。さらに言うなら料理の基礎がしっかりあるタイプのシェフではありません。しかし、だからこそ自由な発想で独自のカレーを生み出せるのでしょう。

今までのカレーの名店とはまるで違う形のお店であるからか、極哩のファンや常連さんには昔ながらのマニアは少なく、最近カレーを好きになった方が多い印象です。ということはつまり、新たな客層をカレー界に引っ張ってきている存在とも言えるわけです。

さらに、10月1日には浜松町店もオープン予定というニュースも入ってきました! ますます躍進する極哩、期待が膨らみます。

※本記事は取材日(2021年9月12日)時点の情報をもとに作成しています。

【第4週のカレーとスパイス】看板メニューはポークビンダルー!食後のコーヒー&スイーツも最高なカレーのおいしい喫茶店「喫茶 壁と卵」

幡ヶ谷という街をご存じでしょうか? 新宿にも下北沢にも近く、商店街もあって非常に住みやすい街です。個人的にはカレーのおいしいお店や素敵な喫茶店も多いというのが、幡ヶ谷が魅力的に感じる重要なポイントなのですが、そんな幡ヶ谷にカレーがおいしい喫茶店が移転してきました。その名も「喫茶 壁と卵」。

新代田からのお引越しで、2021年5月に幡ヶ谷での開店となりました。住宅街の中に佇むお店は、新しいお店ながら昔からそこにあったような温かみのある雰囲気を感じさせます。入店と同時に手洗いのお願いがあり、しっかりと手を洗ってからの着席。このご時世の中ではむしろ安心感があって良いですね。

この日のカレーのメニューはポークビンダルーとチキンカレー。一般的に無難なチキンカレーをメニューの最初に持ってくるお店が多い中、こちらはポークビンダルーが先にあります。ということはこちらが看板ということでしょう。他のお客さんからの質問に対しても「ポークビンダルーはインドのゴア地方の名物料理で、酸味と辛味のあるカレーです。好き嫌いはあるので食べやすいのはチキンカレーの方かもしれません」と丁寧に説明されていました。

僕は大好きですから「ポークビンダルー」1,100円をいただくことにしました。せっかくの喫茶店ですから「コールドブリュー」550円と「マツェルトフ」450円も食後にオーダー。

「ポークビンダルー」

レコードから流れる心地よいBGMにくつろぎながら店内を見ていると、石鹸が売られています。これはお店の方のご家族が化学物質過敏症を発症してしまったことから香害フリーのお店を目指し、お店でも洗剤は化学物質を使用せず、昔ながらの100%の無添加石鹸や重曹、クエン酸などでナチュラルクリーニングを行うようにしているのだそうです。同じ病気で苦しむ方の為にも無添加石鹸を販売しつつ、それによって化学物質過敏症を知らない方にもそれを認知してもらいたいという思いがあるようです。そんなお店ですから、香水は極力控え、タバコも吸った後に行かないなど、客側も配慮して行きたいものですね。

カレーも非常にヘルシーです。パパド(豆粉のせんべい)やポリヤル(南インドの野菜炒め)も一緒にのった一皿。シャープな酸味と豚肉の甘味やうま味が渾然一体となり、刺激はありながらも重くない、喫茶店のカレーとして理想的なものでした。

シェフご自身がカレー好きで10年程前からスパイスカレーを作り始め、人気店でも働いてその腕を磨いたそうです。だからこその本格的なおいしさなのですね。夢中になってカレーをたいらげたらデザートとコーヒーの時間。

「コールドブリュー(水出しアイス珈琲)」と「マツェルトフ」

まずコールドブリューを一口飲んでみると、軽やかで爽やかな酸味が印象的。マツェルトフとはスフレチーズケーキのしっかりしたものと言えばわかりやすいでしょうか。こちらもやわらかい酸味をほのかに感じ、カレー、コーヒー、ケーキで酸味の三重奏。あるいは酸味三昧。ひとくちに酸味と言っても様々で、多角的に「おいしい酸味」を味わうことができ、とても楽しい時間となりました。

コーヒーはバリスタチーム「私立珈琲小学校」から入手。スイーツは奥様が長年フランス菓子店に勤めていたそうで、だからこその丁寧な仕上がり。カレーもコーヒーもスイーツも全面的に信頼できる最高の喫茶店です。

まだ開店してからそれほど経っているわけでもないのですが、既に常連さんらしき方もちらほら見えたのは、お店が幡ヶ谷の街に早くも根付きつつある証拠でしょう。こんな素敵なお店が近くにある方がうらやましい。幡ヶ谷に住みたくなってしまいました。

※本記事は取材日(2021年9月19日)時点の情報をもとに作成しています。

※価格はすべて税込です。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/