【第3週のカレーとスパイス】銀座で充実のカレーランチを。コロナ禍に誕生した、隠れたカレー新名店「SEABIRD COLONY 銀座本店」

平常時であればマニアの間で話題となって広まっているであろうお店でも、コロナ禍においてはなかなかそうもいかない状態が続いていて、もったいないなと感じることがあります。今回ご紹介するのもそんな隠れた新名店のひとつ。東京・銀座にできた「SEABIRD COLONY 銀座本店」です。

2021年6月15日に開店したこちらのお店。銀座は西五ビルの3階にお店を構えているのですが、外からは少し分かりにくいです。逆に言えば、だからこそ隠れ家感があるとも言えるわけで、店内に入ってみると実にモダンな雰囲気。

実際料理もモダンインディアン(インド料理と他ジャンルの料理をかけあわせたイノベーティブフュージョン)的な料理があったり、モダンインディアンのコースもあったりします。メインは南インド料理ですが、それを21世紀的に進化させたもので構成されています。

「シーバードスペシャルミール」

今回はホリデイランチメニューから店名を冠した「シーバードスペシャルミール」3,000円をいただきました。こちらは南インド料理のミールスを非常に豪華にしたもの。

ラッサム

まず最初にスープのようにラッサムが出てきます。ラッサム自体は非常にオーセンティックなスタイル。豆の優しさとタマリンドの酸味が融合したシンプルなおいしさで食欲をそそります。

シーフードカレー

続いて出てきたのがシーフードカレー。内容は日替わりだそうですが、この日は鮭、鯖、タコが入ったトマトベースのカレーでした。豪華ですね。

ミールス

間髪容れずミールスが到着。この日の肉カレーは猪。そしてカレー以上に目を引くのがワラサのフライ。サクッとした衣をかじると中からジューシーで程良い火入れのワラサが登場します。味付け自体はシンプルですが、カレーと合わせて食べると実においしい。

ワラサのフライ

もちろんカレーのクオリティも高いですよ。シーフードカレーはそれぞれの魚介の旨味が単体で感じられ、グレービーにはそれらが溶け込んで合わさった海のうま味が感じられるという仕上がり。猪はしっかりと煮込んでやわらかく、クセもないのですが、ちゃんと猪自体の持っているおいしさはグレービーに溶け込んでいるという。

猪カレー

ご飯もバスマティライスなのですが、長い部分と短い部分とあって非常に食感が良いです。ブレンドなのかなと思って聞いてみると、ブレンドではなくインディアゲートのバスマティライスとのこと。インディアゲートと言えばビリヤニにも良く合うことで知られるバスマティライスの人気メーカーですから、聞いて納得のおいしさでした。ランチメニューにはビリヤニもあったので、このお米で炊いたビリヤニはさぞかしおいしいことでしょう。

ミックスジュース

ほかにゴーヤのポリヤルなどものっていて、ミールスとしては非常にモダンなスタイルであり、モダンインディアン的コースへの期待が膨らむ内容でした。ドリンクもついているのですが、ミックスジュースを選べるということで珍しいなと思いそれにしてみると、フルーツと野菜のミックスジュースで、仕上げに使われているライムが非常に爽やか。隠し味にヒマラヤ岩塩を使っているというのも面白いです。

店員さんはほぼインドもしくはネパールの方ですが日本語がお上手。皆さん丁寧に説明してくれて食事への理解度が深まるのも良いサービスです。ランチで3,000円というと高いと思われるかもしれませんが、この内容で銀座という場所を考えるとむしろ安すぎるのではないかと心配になるレベル。

最初にも書きましたが平常時であればすぐにマニアに広まって人気店となっているはずのクオリティの高さです。なかなか外を出歩くこともできないご時世ですが、健康のための散歩がてら歩いて行くのも良いでしょう。この日は僕も自宅から歩いて行ったのですが、程良い運動と素敵な食事で心も体も満たされる思いでした。飲食店苦難の時期を何とか乗り越えてほしい、隠れた名店です!

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2021年8月17日)時点の情報をもとに作成しています。

【第4週のカレーとスパイス】香港の食文化「チャチャンテン」とは? 現地さながらの雰囲気の中で味わうカレーは格別!「香港 贊記茶餐廳」(ホンコン チャンキチャチャンテン)

コロナ禍で変わってしまったもの、変わらざるを得なかったもの、色々とありますが、香港の民主化運動を長年主導してきた民間人権陣線が解散を発表するというニュースが飛び込んできました。よく香港は中国であって中国ではないと言われます。実際に行ってみるとそれはそこかしこで体感でき、独特の文化や空気感が僕自身大好きでした。その香港が変わってしまうということ。中国に飲み込まれていってしまうのでしょうか。香港好きとしては複雑な思いを胸に抱きつつ、向かったのは東京・飯田橋にある「香港 贊記茶餐廳」です。

こちらは香港独自の食文化である茶餐廳(チャチャンテン)をそのまま日本に持って来たようなお店。チャチャンテンをわかりやすく説明するなら、大衆食堂とカフェとファミレスを全部ごちゃまぜにしてひとつにしたようなお店です。

メニューの幅が広く、香港ならではの料理も沢山あるのですが、チャチャンテンに行くと大概カレーがあるんです。香港は以前イギリス領だったこともあり、イギリスはインドを支配していた時代があるのでカレー文化が存在します。それが香港に伝わって現地化し、ほかにないカレーが生まれたのでしょう。

「ポークチョップライス」

贊記茶餐廳にもカレーはあります。ランチメニューの「ポークチョップライス」750円は味を選べるのですが、カレー味にすることもできます。黄色いカレーソースは昭和的な雰囲気を感じさせますが、食べてみると昭和のカレーともまた違う独特のうま味が感じられます。中華のスープだからこそこの味になると言えるでしょう。衣をつけて揚げ焼きにした豚肉と茹でたキャベツの相性も良く、栄養的にもバランスが良いです。

トッピングの「目玉焼き」

僕のおすすめはこれにプラス100円で目玉焼きをトッピングする形。目玉焼きには醤油がかかっているのですが、この醤油が日本のものではなく中国のもので、うま味が深いのです。

これをそのままカレーにのせれば、中国醤油のうま味が混ざり、おいしさが一段階上がるのです。

ランチにはセットでドリンクを付けることもできるのですが、僕はこちらに行くといつも「鴛鴦」(ユンヨン)をアイスで(アイスはプラス20円)オーダーします。

「鴛鴦」

鴛鴦とはコーヒーと紅茶をミルクで割ったもの。これがおいしいんですよ。香港に行くと毎日これを飲んでいましたし、なんならこれが飲みたいからほかの国へ行く乗り換え地点を香港にし、空港で鴛鴦を飲むくらいに大好き。コーヒーの良さも紅茶の良さもミルクの良さも消えていない魅力的なドリンクです。

ランチタイム後はアラカルトでほかのカレーも楽しめます。「カレー味焼きビーフン」968円は、ハムから出るうま味とカレースパイスの香りが調和し、それをまとったビーフンの何とおいしいこと。この料理の香りが香港そのものなんです。スープと香辛料と油の混ざった香り。香港の街はこれに似た香りに包まれていて、食べると香港気分を思い出します。

「カレーフィッシュボール」
「カレーフィッシュボール」   写真:お店から

「カレーフィッシュボール」418円はカレーだれをかけた魚団子。もう一品のおかずとしても、お酒が飲める時期であればおつまみとしても重宝するメニューです。このように、様々な形でカレーが紛れ込んでいるのが香港の食文化であり、その食文化を完璧な形で伝えてくれるお店です。

店内の雰囲気も香港そのまま。広東語が飛び交っているときも少なからずあります。飯田橋のみならず吉祥寺にもお店があり、こちらもクオリティは変わらないのでおすすめです。香港は変わってしまったとしても、その食文化は変わりませんように。

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2021年8月22日)時点の情報をもとに作成しています。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/