外食のなかで、ここ数年で劇的に状況が変わったのはお寿司ではないでしょうか。もはや3〜4万円は当たり前、それでも予約が取れず2年待ちなんてお店も珍しくありません。ところが今年になって、そこに一石を投じるお寿司屋さんがジワジワと勢力を伸ばしつつあります。おいしくてリーズナブルで心から楽しめる、そんなお店が三軒茶屋にもオープンしました。

楽しさがあふれ出す店名にワクワク感!

思わずクスリとしてしまう店名に、つい暖簾をくぐってみたくなります

三軒茶屋駅から歩くこと1分。グルメタワー「GEMS三軒茶屋」の地下1階にオープンした「寿司とワイン サンチャモニカ」が話題になっています。まずは絶対に記憶に残ってしまうこの店名。店主の綱嶋恭介さんは、世田谷区経堂に「酒ワイン食堂 今日どう?」という、気軽に立ち寄れる大人のファミレスをコンセプトにした酒場を開き、人気店にした張本人でもあります。どうやらダジャレ好きなのかも?

どのコースも「しじみ1番出汁」からスタートします

その綱嶋さんが「カウンターのお寿司はハードルが高い」というイメージを払拭し、リーズナブルな価格で豊かな味わいを提供したいと「サンチャモニカ」をオープンしました。伝統的な江戸前寿司をベースにしながら独創的なアイデアをプラスしたつまみと握りに、ソムリエの資格を持つ綱嶋さんセレクトのワインや日本酒とのマリアージュは、今まで味わってきたお寿司がもっと自由でもっと楽しく感じられます。

「水ダコとクレソンのバルサミコソース」 写真:お店から

コースは4,000円(つまみ5品、握り7貫、手巻き1種)、5,000円(つまみ5品、握り9貫、手巻き1種)の、品数と内容の異なる2種類があり、どちらのコースにも味噌汁とデザートが付きます。

この価格でおいしいなんてあり得ない!と思われるかもしれませんが、綱嶋さんの前職である全国の漁場直送の旬鮮魚居酒屋で培った魚介に対する目利きと独自のルートが、この価格を可能にしたのです。すべてはお寿司とワインのマリアージュを知る“きっかけ”になってもらいたいという思いから。

ここでしか味わえない寿司ダネが満載!

「余韻で飲めるほっき貝」には爽快な辛口の日本酒「百十郎」を

こちらには他では味わえない寿司ダネがあります。まずはこの「余韻で飲めるほっき貝」。いつも食べているほっき貝はもっと貝の先が赤いものが多いので、理由を尋ねてみると、なんと生なのだそう。

だから、口に入れると初めにつるっとした艶かしい舌触りを感じます。次に訪れるのはシコシコな食感。正体は、中にしのばせた同じく生の「ほっき貝のヒモ」。そして最後に上顎の奥に残るうまみが余韻となるのです。この余韻についお酒が進んでしまいます。

「まぐろ三重奏」

もうひとつは「まぐろ三重奏」です。しじみ醤油で漬けた「づけ」、炙った「中トロ」、脂ののった「大トロ」の三位一体の破壊力たるや!

ひと口で食べるには大きいけれど、頑張ってひと口で頬張ってみると、とろんとした食感の後から濃厚で豊かな味わいがホロリと崩れる赤酢の寿司飯とともに口いっぱいに広がります。これは簡単に「まぐろの握り」と表現するには申し訳ないほど格別です。

まぐろとの最強コンビ、「丹波ワイン 樽熟成」

綱嶋さんのイチオシが「丹波ワイン」です。京都丹波で“和食に合うワイン”というコンセプトのもと、1979年から造り続けている日本が誇るワインです。木を焼いた樽で熟成した「マスカットベーリーA」はまるでトーストのような香りをまとい、まぐろとの相性が抜群なのです。「まぐろ三重奏」とペアリングすると、不思議とまぐろのバターソテーのような風味を楽しめます。

「黄金生穴子」

朝獲れの穴子がお店に到着すると真っ先に締める長崎県対馬の「黄金穴子」もスペシャリテ。お寿司で穴子と言えば蒸したり焼いたりすることがほとんどですが、九州ではお刺身もポピュラーだそう。新鮮な穴子はお刺身にするとこんなに歯ごたえが良く、甘みがあるのかと驚きます。これに梅肉とはちみつで作った特製タレが見事に穴子と合うのです。これは必食!