【TOKYOオシャレ業界人の食図鑑】

FILE No.006

WWDジャパン 編集長

向 千鶴さん 

Chizuru Muko

 

 

【人物プロファイル】

ファッション業界一の腰の低さながら

情熱をもって仕事に取り組む和み系編集長

 

ファッション業界の中でも、最も華やかな世界にいるのがファッション雑誌の編集長だろう。有名ブランドのデザイナー来日の際には豪華なレストランでのディナー、ショーやパーティへのお誘いが連日のようにある。アメリカを本国とするファッション週刊紙WWDジャパンの編集長、向 千鶴さんもそんなキラキラの世界に飛び込んで3年目。「編集長になった途端に、毎日のように会食が続きました。着る洋服にも随分気を遣うように」なったそうだ。

 

向さんは私の元同僚で20代の頃から机を並べて徹夜仕事を幾度も乗り越えてきた仲間だ。眠たげな微笑みの裏に、燃えるような情熱もある。印刷所へ向かうトラックを走って止めて原稿を納品したり、パリで事件現場を自らパパラッチしたりというパワフルな編集長だ。細身で長身、大きくて眠たげな目と人懐っこい笑顔の向さんは、編集長の貫禄というものがいい意味でない。もっと偉そうに振る舞ってもいい立場なのだが、いつまでも腰が低く、全く圧迫感を与えない。ファッション業界では貴重な存在だ。

 

 

【食の傾向】

平日夜はほとんどが会食!

食材のハーモニーを重視

 

「平日の夜は、多い時は週の半分以上が会食のため、銀座・青山のフレンチやイタリアン、和食が多いです」。校了日(締め切り日)の木曜は高い確率で編集部がある六本木で遅くまで開いている中華料理店「52(ゴニ)」で餃子や「魚初」でおでんに焼酎と庶民派な面もある。

 

普段は仕事ばかりしているので、ご飯仲間はほとんどが仕事関係や同僚、仕事を通じて知り合った友人とのこと。仕事とプライベートの境は限りなく曖昧で、そんな状況を楽しんでいるようだ。食の好みは、「旨味重視かつ、食材のハーモニー(食感と香り)を重んじます。自宅ではお肉中心。究極の理想は一日の終わりに、一軒家の庭に常設した炭火グリルで旬の素材をいただく毎日。食後は庭になるビワの木からもいでデザートに、なんて生活に憧れます」

 

 

今年ブランド主催のディナーで人気なのはこのレストラン!

ブランド主催のディナー会が開かれるレストランは、毎年めまぐるしく変化している。ある年はどのブランドもこぞって使っていたレストランが、翌年はまた新たなレストランやシェフに取って代わることも。ファッショントレンドの移り変わりと同じように、レストランのトレンドもスピーディに変化している。

今年最多、ダントツの人気のフレンチ・創作系:NARISAWA

「レストランもありますが、招待ディナーは全てシェフが出張するスタイルでした。各ブランドはそれぞれテーマを設定して独自の世界観でおもてなしするので、メッセージが込められた一品が素敵なNARISAWAに人気が集中しているのでしょう」。お料理を食べた後に、会場にNARISAWAシェフが挨拶に来て「ああ、NARISAWAの料理だったのね」と招待客が気づくという演出だ。

出典:bottanさん

 

京都で開催されるディナーで人気:菊乃井 本店

京都でのディナーには、菊乃井の料理が多いそうだ。「舞子さんが来て、お座敷遊びをしたりと普段は体験できないようなおもてなしを受けてとても楽しい時間です」

 

出典:毎日外食グルメ豚さん
 

 

来日したデザイナーのご指名ホテルはレストランも人気!:アンダーズ タヴァン

最近の来日デザイナーたちが泊りたいホテルNo.1がアンダーズ東京。「建築に日本的なところがあって、天井も高く、夜景も素晴らしいのでデザイナーたちは気に入っているようです」。51階にあるレストランは、様々なヨーロッパの地方料理に基づいて作られた心温まる味。旬の日本食材を取り入れ、和を感じさせるアレンジが魅力的。

 

写真:お店から

 

プレスみんなが喜ぶほっこり系ならここ!:イートリップ

ファッション業界の人々から絶大な人気を誇るのがイートリップ。原宿にある一軒家レストランは木々に囲まれた隠れ家的お店。「招待ディナーで胃が疲れている時に、イートリップでの食事だ!となると編集者は喜んで参加しています。ほっとする味に心が和み、胃にも優しいごはんです」

出典:じゅあんさん

 

【ファッションテイスト】

パーティやディナーでは主催ブランドを着用!

上半身の華やかさにこだわって

 

「ブランド主催のディナーは、大概ドレスコードがあるのでそれを楽しみ、なるべくそのブランドの服を着ます。持っていなければヴィンテージか、「トーガ」「サカイ」など日本のデザイナーの服。単純に好きだし、来日業界関係者に日本人デザイナーを紹介したいから。着席している時間が長いので上半身の華やかさにはなるべく気を配ります」。最近は「エルメス」のピアスをコレクションしているとのことだ。

 

イラストはカルティエのパーティー@トランクホテルでの着こなし。「ドレスコードはfearlessだったのでLAのヴィンテージショップで買ったノンブランドの総刺繍ワンピ+ピエールアルディのパンプスで」。ポイントは、ドレスコードに沿った着こなしとパーティ主催ブランドのアイテムを身につけること。いくらお金がかかろうとも、THAT’S ファッション業界の作法!なのです。

 

イラスト:Sho Miyata