羊肉の新たな可能性を追求。産地による食べ比べも楽しい
コースはまだまだ続き、全10~12品ほど楽しめる。同店では信頼できる羊飼いから一頭丸ごと仕入れ、ゲストに余すところなく食べきってもらうことを流儀としている。
料理長の木下洋平さんは、コースづくりについてこう語る。
「コースのバランスを考えるのが、一番難しいですね。ラムチョップや国産の羊串など、シンプルにお召し上がりいただく定番の品もありますが、そのほかをどう見せるのか。肉を焼くのか、蒸すのか、または揚げるのか。この店で、新しい羊肉の楽しみ方を提案していきたいと考えています」
また、羊をさばいたときにでる端肉や、普段は食べないような部位をどうおいしく調理するかも腕の見せ所だ。端肉をミンチにしてスパイスをきかせキョフテに仕立てたり、比較的硬い部位をユッケにしてみたり、さまざまな工夫をほどこす。さらに、羊の骨で出汁をとったスープや、羊のミルクを使ったデザートなどもコースに組み込まれている。
コースは通常、オーストラリアやニュージーランドなどの羊肉2種と、国産羊肉2種で構成される。海外産と国産の味を食べ比べるのはもちろんだが、国産でも北海道産と岩手県産の羊肉では風味が異なるという。その味には、羊飼いの人たちの哲学がにじみでていると言い、料理を提供する際に、そういった生産者の思いまでもしっかりと説明してくれるのも同店の大きな特徴である。コース名に「羊肉をめぐる冒険」とあるように、羊肉の世界を探索するように、ひと品ひと品を食べ進めることができるのだ。
ドリンクは、ワインをメインにさまざまな酒を幅広く用意している。グラスワインはオーストラリア産のもので揃えているのが特徴だ。ゆっくりとワインで楽しむもよし、ビールやサワーを合わせてカジュアルに楽しむもよし。羊肉との相性はどちらも甲乙つけがたい。
食べる機会が少ないからこそ、極上の味を体験してほしい
最近は羊肉もスーパーマーケットなどで買えるようになり、以前よりポピュラーになっているように感じるが、実は日本人の羊肉の年間平均消費量は、一人あたりたった200gほどだそう。要するに、年に1度か2度程度しか食べないということだ。羊肉のすばらしさを知る人は増えているものの、まだまだ少数派のよう。未だに「羊=硬い、においが強い」というイメージを持つ人も多いということだろう。
しかし「串羊 羊サンライズ」を訪れればそんな印象はすぐに一新される。食べる機会が少ないからこそ、本物の国産羊肉の極上のおいしさを心ゆくまで堪能してほしい。
※価格はすべて税込