緊急事態宣言発令に伴う営業時間短縮の要請を受け、ランチタイム営業を開始した飲食店が増えている。なかには、これまでディナータイムやコースのみの提供で、少しハードルの高かった人気店なども。そこで、当連載でも臨時特別企画として、フードライター・森脇慶子が注目する店のランチメニューを全4回にわたり紹介。今回は、白金の人気和食店「馳走 とりの巣」に注目!
【森脇慶子のココに注目 臨時特別号 1/4】「馳走 とりの巣」
緊急事態宣言発令直後の1月9日からランチを新たに始めたのは、東京・白金の隠れた和食屋さん「馳走 とりの巣」。話題の美食店が立ち並ぶ白金北里通りから一歩入った路地の中、オープンしてまだ一年足らずながら、夜でもコース12,000円の手軽さとご主人・鳥田諒さんの気さくな人柄に惹かれて通う常連客も多い人気店だ。
オープンして間もない昨年の緊急事態宣言下では、テイクアウトのみの販売だったそうだが、今回はランチにも挑戦。テイクアウトで出していた「出汁巻き」を、サンドイッチにして提供することにした。
店主の思い入れの詰まった出汁巻き玉子がサンドイッチに進化
出汁巻きサンドに決めたのは、人気のメニューだったことともう一つ、鳥田さんにとって、出汁巻は人一倍思入れが強い料理だからだ。鳥田さん曰く「大学時代、何気なく入ったアルバイト先の看板料理が出汁巻き玉子だったんです。で、毎日毎日凄い数の出汁巻き玉子を焼いていくうち、料理に少しずつ興味を持ち始めました」とのこと。
いわば、彼が料理の道へ進むきっかけとなった一品というわけだ。近頃、あちらこちらで話題を呼んでいる“出汁巻き玉子サンド”だけに、出汁巻き玉子には一家言を持つ身としては挑戦してみたい――と思ったのも、なるほど道理だろう。とはいえ、夜のコースに組み入れるにはいささか重い。ならば、ランチでお試しを、というわけだ。
もともとテイクアウトとして販売していた出汁巻き玉子だが、サンドイッチにするにあたって微調整。パンに合わせて、味つけはやや甘めにし、また、時間が経っても卵から滲み出た出汁でパンがビチョビチョにならぬよう出汁の量もやや少なくしたとか。だが、そのしっとりとしてふるふるの食感は変わらず。その極意を聞けば「焦げ目をつけぬよう細心の注意を払いながら、卵液がミディアムレアの状態のうちに手早く巻くようにしています」とのこと。食感のイメージ、それは茶碗蒸しだ。
淡いクリームイエローをした出汁巻きは、まるでお菓子のよう。出来たてのアツアツを一口頬張れば、口中にジュワッと溢れ出るだしの豊潤さは思わず頬も緩むはず。また、冷めたら冷めたで、ぷりりんとした卵感が強調され、しとやかな甘みと共に、舌に優しい余韻を残す。テイクアウトも並行してやっているゆえ、食べ比べてみるのも一興かもしれない。どちらも一人前1,000円。
秘技! プラス1,000円で黒トリュフトッピングの贅沢
また、プラス1,000円で、今が旬の黒トリュフをトッピング! という秘密技も用意されている。もちろんテイクアウトでも香りは楽しめるが、こちらは、ぜひお店で出来たての出汁巻きサンドに振りかけて味わってみたい。トリュフと卵の組み合わせは鉄板だが、辺りに立ち込める妖艶にして濃密な香りは、思いのほか出汁巻きとベストマッチ。おなじみの味がご馳走に変身! ちょっぴり、リッチな気分にさせてくれる。
ランチタイムの営業は11時30分〜14時で、要予約。また、前日までの予約で夜と同じコースを昼に提供も可。
※価格は店内、テイクアウトともに税込