【ベラルーシ菓子】ベラルーシのママの味でほっとするティータイムを「ミンスクの台所」

ベラルーシ共和国は、東ヨーロッパにある国。東はロシア連邦、西はポーランドと国境を接している。ソ連の崩壊により独立。このため、スイーツ的にはポーランドと同様に旧ソ連圏に属する。首都はミンスク。

こちらのお店は2002年にオープンしたベラルーシ家庭料理のお店。港区麻布台の在日ロシア大使館のすぐ近くにある。

スタッフは全員ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国出身女性。家庭料理のお店だけあって、厨房にいるのは全員主婦。いわゆるプロの料理人はいないのが特徴。さて、旧ソ連圏の飲み物と聞いて、まず思い浮かべるのは「ロシアンティー」ではないだろうか?

「ロシアンティー」560円(ジャム付きは+120円)

日本でロシアンティーというと、イチゴジャムなどを紅茶に「入れて」飲むものだと思っている人が多いが、ロシアではジャム(またはハチミツ)は、いわば「お茶うけ」的存在で、「食べながら」飲むというのが正当。お店で出されたのは、粗めに実をつぶしたアプリコットジャム。果物のかたちを残してジャムを作るのがベラルーシ流。紅茶の渋味にアプリコットジャムのほのかな酸味と果実味あふれる甘さがよく調和する。

フランス菓子の「シャルロット」

スイーツに行こう。まずは「シャルロトカ」。ロシアの代表的なケーキのひとつだ。フランス菓子をよくご存じの方は、「洋梨のムースとかの周りにフィンガービスケット(ビスキュイキュイエール)を貼り付けたシャルロットのことね」(写真上)と思うかも知れないが、ちょっと、いや、かなり違う。

「シャルロトカ」570円

上記の写真を見比べていただければ、全く異なるものであることが一目瞭然だろう。シャルロトカは、茶色いスポンジ生地の中にリンゴのスライスが入っている。どうしてこうなってしまったのか? よくいわれるのが、ロシアの家庭でお菓子を作るときに、面倒なので、外側の生地も中身も全部混ぜてしまったという説。しかし、ムースと生地を混ぜたスポンジ生地には見えないし、そもそも一方は洋梨で、こちらはリンゴだ。

実はシャルロットには冷製のものと温製のものがある。先に挙げたのは、冷製のものだ。温製のものは、いわゆるシャルロット型の内側に短冊状に切った食パン生地などを立てかけ、シナモンを入れて煮たリンゴを入れてオーブンで焼いたものだ。ここまで考えると、先の説明にも納得がいく。さて、こちらのシャルロトカは、シナモン風味のスポンジ生地にリンゴのスライスを入れて焼いたもので、なかなか洗練された味わい。紅茶とも相性抜群である。

次は、ちょっと変わった名前の「小鳥のミルク」というチョコレートケーキ。

「小鳥のミルク」570円

名前を聞いて、「あれっ? 小鳥って哺乳類だっけ?」と考えた方。そのとおり! 母鳥がひな鳥にミルクを与えることはない。……ということは??

「鳥のミルク」は、スラブ人の古い民話に由来する。昔、美しいお姫様が彼女の求婚者の情熱と機知を試すため、「楽園に住む鳥が自らの小鳥に飲ませるという『鳥のミルク』を取ってきて」と言って、彼を荒野に送ったという話だ。もちろん、この世にそんなミルクはないわけで、「この世にないほどおいしいお菓子」の含意があるともいわれる。

ロシアで「小鳥のケーキ」は「プチーチエ・モロコー」と呼ばれて親しまれているが、実は1930年代にポーランド・ワルシャワの菓子職人ヤン・ヴェーデルが考案したプタシエ・ムレツコという名の菓子が原型だといわれる。これがロシアにも広まり、これを基にモスクワの菓子職人ウラジーミル・グラルニクが1978年に6カ月もの時間をかけて考案したのがプチーチエ・モロコーだといわれる。しかしそのレシピは秘密とされ、主婦たちは、なんとか家庭でその味を再現しようと試みたので、今では数多くのレシピが存在する。

こちらのお店の「小鳥のケーキ」は、レモンとセモリナ粉のクリームを挟んだチョコレートケーキだ。どっしりとした重めのカカオ味の生地に、酸味のあるミルキーなクリームが挟まれている。上には濃厚なチョコレートのグレーズ。酸味のある赤スグリ、サワークリームとよく調和した一体感のある味わいだ。重そうに見えるが、食後にもたれる感じはない。

最後に、インスタ映えするデザートを紹介しよう。

「ホヴォロスト」570円

ホヴォロストは、ほんのりと甘いサクサクの揚げクッキー。名称は、火を起こすときに使う乾燥した木(もしくはそれを折るときの乾燥した音)のことを指し、そのためか、木の枝を積み上げたような形に仕上がっている。周りのデコレーションも手が込んでおり、2色のソースとクリーム、赤すぐりでなんとも可愛らしく仕上げられている。

生地を揚げているので、パリッ、サクッとした感じの生地と思いきや、もっちりとした食感で油っぽさは全くない。リエージュ風ワッフルの食感に近く、生地自体にほんのりとした甘さがある。厨房の様子を見ていたが、注文が入ってから生地をひとつずつ小さくちぎって成形して揚げているようで、ほんのりと温かい。やや塩味を感じる独特のクリーム、ソースと合わせて食すると最高だ。

※価格はすべて税込

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世界には、まだまだ日本で一般的に知られていないスイーツがたくさん! Part2では、トルコ、レバノン、ドバイの興味深いスイーツを紹介します。お楽しみに!

※時節柄、メニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。

※本記事は取材日(2020年12月22日)時点の情報をもとに作成しています。

撮影・文:猫井登