【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレー#142】「味楽来」

中華カレーは、もはやひとつのジャンルになったと言っても良いのではないかと思います。もともと中華料理とスパイスは相性が良く、油の使用量が多いこともインド料理と共通する部分です。中華料理のなかにも麻婆豆腐などカレーに近い料理も少なからずありますし、中華のお店でもカレーを出すお店が近年増えてきています。

本連載でも何度か取り上げてきているのですが、今週ご紹介するのは中華カレーの中でも異質であり、そもそも中華料理店としてもかなり個性派なお店、池袋の「味楽来」です。

JR池袋駅の西口や北口から近い位置にあるのですが、裏通りであることや一見古めかしいラーメン店にしか見えないということもあり、まさかここに個性的な料理がたくさんあるとは思われにくい穴場です。

「酢キャベツ」

カレーも個性的なのですがほかの料理もおいしいです。前菜におすすめなのは「酢キャベツ」550円。キャベツに生のニンニクと生姜、唐辛子、酢と調味料で和えたシンプルな料理なのですが、これが後引く味わい。唐辛子が輪切りではなく潰したものが入っていることによって辛味が立ち、それが全体の味を引き締めています。

「鶏の唐揚げタルタルソース」

「鶏の唐揚げタルタルソース」1,080円はいわゆるチキン南蛮的な料理なのですが、タルタルソースの隠し味に搾菜や老酒を使っているので中華感もあり、面白いおいしさに仕上がっています。

「海老の塩こしょう炒め」

「海老の塩こしょう炒め」1,280円はプリっとした絶妙な火入れの海老をシンプルに塩とブラックペッパーなどで味つけしたもの。細かく刻んだピーマンや玉ねぎ、添えられたパセリにもちゃんと意味があり、一緒に食べればおいしさが確実に増します。

どの料理も正統派の中華料理とも日本式の町中華とも少し違うベクトルであり、東南アジアの中華街で出てくるようなテイストなのがとても興味深いです。

「エスニックカレー」

そしてカレー。「エスニックカレー」800円という名前なのですが、このカレー、中華カレーというよりはカンボジアの「ソムローカリー」に近い味わいなのです。鶏肉、ブロッコリー、そしてじゃがいもと思いきや甘さの弱いタイプのさつまいもが入ったサラサラのカレー。

ソムローカリーともまた少し違ってどことなく中華感もあり。ひと口食べて驚くようなおいしさとは違うのですが、シンプルなおいしさが食べ進めるごとに蓄積されていき、食べ終える頃に確かな満足感を得られるようなカレーです。

実はこちらのマスター、カンボジアで生まれ育ち、十代から台湾に移住したという経歴の持ち主。それ故、東南アジアを感じさせる独特な中華料理を作れるのです。カンボジアにも台湾にもカレーを食べる文化があり、だからこそメニューにカレーがあるのは意外に思えて実は当然なのだとも言えます。

店名は「味楽来」と書いて「ミラクル」と読ませるのですが、様々な奇跡が重なってこの料理となり、それを日本の池袋で提供しているのも奇跡的と言えるかもしれません。メニューも多種多様ですし、時期によって限定メニューがあったり予約すれば裏メニューを出してくれたりもするので通い甲斐もあります。

カレー好きはもちろん、中華料理好きで東南アジア料理好きなら、一度は行っておきたいお店です。

※価格はすべて税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。

※本記事は取材日(2020年12月8日)時点の情報をもとに作成しています。

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/