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大人の心を躍らせる、伝統と革新が融合した料理
大阪にある「中国菜 エスサワダ」はオープンから1年足らずでミシュランの星を獲得した話題の店。香港の「福臨門酒家」で修業を積んだ澤田州平さんによる、日本の旬の食材をいかしたクリエイティブな料理が人気を呼んでいる。
そんな同店が、2月28日、東京・西麻布に2店舗目となる「中国菜 エスサワダ 西麻布」をオープンした。澤田さんが総料理長を務め、本店と変わらぬ味を東京でも楽しめるようになった。
看板メニューのクリスピーチキンを堪能する、全7品のコース
総料理長・澤田さんの考える、「日本の食材をいかし、日本人だからこそ生み出せる中国料理」をひと通り堪能できるのが、全7品のコース「百祥」だ。一見すると中国料理とは思えないような斬新なひと皿から、本場・香港で学んだ技術をいかした伝統的な一品「クリスピーチキン」まで、同店の魅力が詰まっている。
「中国菜 エスサワダ 西麻布」で料理長を務めるのは滝沢哲治さんだ。料理人として20年のキャリアを持ち、以前はザ・ペニンシュラ東京の「ヘイフンテラス」でも腕を振るっていた。澤田さんが考案したコースを、忠実かつ丁寧に再現して提供している。調理のなかでも気をつけているのが、火入れだそう。
「澤田総料理長が最も気を使っているのが火入れです。食材のよさを最大限にひきだすよう、細心の注意を払います」と語る。
季節の食材を華麗にあしらった、軽やかな中国料理
ひと品目の「からすみと昆布締め鯛の冷製ビーフン」は、イタリアンのカッペリーニに着想を得た料理。金華ハムからとった清湯(チンタン)スープをゼリー状にしたソースに、太白胡麻油で熱したネギと冷製ビーフンを和えている。そこに鯛の昆布締めをのせ、からすみと穂紫蘇を散らして完成。からすみの風味と塩気、鯛の昆布締めのうまみ、胡麻油とネギの香り、そして穂紫蘇の爽やかさが調和し、冷たいビーフンを包み込んでいる。シャンパーニュなどを合わせてもピタリとハマる味わいだ。
ちなみに同店では、サラダ油は使わず、太白胡麻油を調理に使用する。その理由はヘルシーだから。中国料理にありがちな脂っぽさがなく、軽やかな仕立てなのはこうした食材へのこだわりも理由のひとつである。
ふた品目は「本日の蒸し点心2種」。この日は翡翠海老蒸し餃子と小籠包。上品な味わいで、皮と具材のバランスが素晴らしい。
次の品は「鰆のスパイス揚げ」だ。鰆の上にのっているのはパクチー、揚げたネギ、唐辛子。そして、五香粉、山椒、クミン、カイエンペッパーなどを合わせたスパイスをふりかけている。特筆すべきは、鰆の食感。高温でさっと揚げ、表面だけに火を通して余熱で身を蒸し、提供の直前に再度揚げることで、皮目はパリッとなかはしっとりとした食感を実現させている。火入れの巧みさは、さすがの一言だ。
「ホッキ貝のスチーム」は、上質な食材にこだわる同店だからこそいただける逸品だ。生でも食べられる新鮮な活ホッキ貝を仕入れて、蒸して提供している。貝殻に茶碗蒸しを敷き、ナンプラーを少々たらしている。ホッキ貝をひと口いただくと、肉厚でジューシーな食感が最高においしい。ホッキ貝の蒸し汁も茶碗蒸しと一緒に食べられるため、そのうまみをあますところなく堪能できる。
料理と共に楽しむお酒も、食にうるさい大人たちをうならせる上質なものが揃えられている。紹興酒はストレートかロックでおいしくいただける銘柄を厳選。ワインはフランスを中心に、中国料理に合うものをソムリエがセレクトしており、グラスは常時6種類ほど、ボトルも90種ほど用意されている。
名物料理 しっとりジューシーなクリスピーチキン
そして登場するのが鶏の半身を揚げた名物料理「スペシャリテ クリスピーチキン」。日本人の味覚に合わせて選んだ、セロリ塩、五香粉、山椒、豆板醤、赤酢のだいこんおろし、わさび、レモンという、7種の薬味が添えられている。
まず驚かされるのが、肉のジューシーさだ。クリスピーチキンというと皮面のパリッとした食感に注目しがちだが、真髄は鶏のうまみが凝縮した肉にある。半身を使っているのでむね肉、もも肉、背肉と、それぞれに違った味わいを楽しむことができる。まずは何もつけずに食べ、その後に薬味をつけて味の変化をつけるのがオススメだ。
しっとりジューシーな仕上がりは丁寧な下処理と火入れによる。その工程を紹介しよう。
まず、栃木県産の香鶏を、特製のブレンド塩をつけ30分ほど味をしみこませる。その後、全体に湯をかけて皮面を張らせ、さらに酢と砂糖と水を合わせた水飴で下味をつけ、5時間ほど干す。次に油をまわしかけて、鶏の表面をコーテングしておく。ここまでが下処理だ。
ゲストのコースの進み具合を見つつ、鶏をオーブンでゆっくりと20分ほど火入れする。そして提供直前に油の温度を低温から高温に上げながら、何度も油をまわしかけて仕上げている。時間をかけて丁寧に作られるからこそ、鶏肉のうまみがギュッと凝縮されるのだ。
コースのラストを飾る、中国料理の定番・麻婆豆腐と杏仁豆腐
料理の〆は「四川麻婆豆腐飯」。木綿豆腐を使い、四川豆板醤、熟成豆板醤、豆鼓、甜面醤、山椒、太白胡麻油で仕上げている。一番強く感じるのは辛さではなく奥深いコクだ。適度な痺れとやさしい香りもたまらない。定番料理だからこそ、クオリティの高さに感動させられる。自家製の山椒辣油が添えられているため、辛党の人はたっぷり加えるとよいだろう。
コースのラストを飾るのは、「クリーミー杏仁豆腐 沖縄県産 黒糖ソース」。こちらは、同店ではおなじみのデザート。舌ざわりのよいクリーミーな杏仁豆腐と、シンプルな黒糖のソースが最高だ。
中国料理の枠を超えて進化する「中国菜 エスサワダ 西麻布」
「中国菜 エスサワダ 西麻布」の料理は軽やかで、コース料理をすべていただいても食べ疲れることがないのもうれしい。
また、土日祝日限定でランチ営業もしており、お手頃な4,000円のコース(全6品)や、クリスピーチキンもいただける6,000円のコース(全7品)も用意されている。
料理長の滝沢さんは「スペシャリテのクリスピーチキンを、ぜひお召し上がりいただきたいです。しっとりジューシーな味わいに、きっと驚いていただけると思います」と話す。
今回紹介した「百祥」コースのなかで、定番の料理は「スペシャリテ クリスピーチキン」と「クリーミー杏仁豆腐 沖縄県産 黒糖ソース」の2品。そのほかの料理は、季節によって変わるので、予約の際に問い合わせるとよいだろう。
旬の食材で華やかに彩られた、中国料理の概念を覆す逸品をぜひご賞味あれ。
※価格はすべて税抜