ファッション誌『mina』や『SPRiNG』などで活躍するモデルでありながら、豪快な飲み方がなんとも男らしい! お酒好きを公言するモデル・村田倫子が、気になる飲み屋をパトロールする連載。「同世代の人にもっと外食、外飲みを楽しんで欲しい!」と願いを込めてお送りする連載27回目は、京都・祇園に本店を構える餃子専門店の支店である「餃子歩兵 東日本橋店」をパトロール。

呑み屋パトロール vol.27「夏はやっぱり餃子とビールがいい気分」の巻

しとしと降り続く夏の雨。今年は特に長かった梅雨もようやく尻尾を見せ始め、夏本番を前にそわそわするこの頃。 そんな、夏本番の開幕に祝杯をあげるために向かった先は、東日本橋。今夜は、わたしの元気の特効薬的な大好物を心ゆくまで楽しめる、とある場所へ。

「餃子歩兵」は、2017年から「ミシュランガイド」でビブグルマンに連続選出されている餃子好きの間では名の知れたお店で、本店は祇園にある。祇園に集う人々の“呑みのシメ”として人気を博し、舞妓さんや芸妓さんなど地元の人々から愛されている。

そんな祇園を虜にした味を、都内でも味わえるのはうれしい。

暖簾を潜ると広がる、カウンター空間。

そして、その先には広々とした気持ちの良いテラス席が広がっている。外の景色と風を感じながら、頬張る餃子とビール……。想像の時点でもう最高でしかない。

二階にはお座敷の間もあるので、悠々としたスペースでのんびりと食事を楽しめる。

餃子歩兵のオリジナルメニューは、精鋭たちで構成された妥協を許さない選抜お品書き。潔い姿勢に、職人の魂を感じる。そして、注文をしてから焼かれる餃子。その間を楽しむためにかかせないのは、サイドメニューたち。

「肉味噌もやし」480円

豪快に降りかかる旨味たっぷりな肉味噌マウンテンに、シャキッと瑞々しいもやしの食感。二つが重なって、奥行きが増す前菜。

「壺きゅうり」380円

壺にこんもりと詰め込まれたきゅうり。程よい塩加減と食感で、お酒の時間が一層楽しくなる。

ここ「東日本橋店」は、ちょっぴり特別な場所。京都折衷をテーマにした「おばんざい」「生麹田楽」など、店舗限定メニューも数点味わえる。

「おばんざい5種盛り」1,000円

「青菜のお浸し」「ズッキーニの昆布茶炒め」「卵黄の紹興酒漬け」「ぶなしめじのナムル」「紅芯大根の浅漬け」がずらりと並ぶ、パレットのように彩り豊かなおばんざい。繊細な味付けは、どんなお酒のお供もこなす。

特に、わたしを骨抜きにしたのは、冷凍した黄身を紹興酒にじっくり漬け込んだ「卵黄の紹興酒漬け」。旨味が凝縮した球体は、まったりとした余韻と充足感を醸し、十二分の存在感でお酒を運ぶ手をリードする。

「九条ねぎの出し巻き玉子」580円

淡黄色のころんと丸いフォルム。箸先が触れると、ふるんっと可愛らしく震える。みてくれだけでも粋の良い娘のようだということが伝わってしまう罪なビジュアル。

しっとりと柔らかな身、ふんわりお上品なだしの香り、九条ねぎの優しい甘味。口の中で旨味がじゅわんと溶け出して、思わずうっとりしてしまう。

さて、満を持してやってきた、今日の主役の餃子様。

写真手前「ぎょうざ」500円と、写真右手「アサヒスーパードライ」550円

見ているだけでもよだれが出そうな、きつね色の焼き目を纏った餃子歩兵の「ぎょうざ」。パリッとした薄皮と、ジューシーな餡のバランスの良さがこの店の餃子の魅力。小ぶりなところも愛らしい。ぱくぱくと気兼ねなく口に運ぶことができるこの小ぶりさが、舞妓さんをはじめとした女性の心を掴んだ。

極めつきは、餃子のバリエーション。味は、ニンニク、ニラの有無で2種類あり、どちらの種類もベースの餡は豚肉に白菜とキャベツとシンプルなレシピ。そこに一手間、餃子歩兵の魔法がかかる。

国産ニンニク、新鮮なニラを使用し、しっかりとした旨味が味わえる。パンチを備えながら、ぱくぱくと何個でも食べられるクセの少ない軽やかな後味。これはかなり中毒性があるなぁ。ビールとの相性も抜群ね。

一方、「生姜ぎょうざ」はニンニクを使用せず、生姜の香りを利かせて仕立てている。次の予定を気にして「ニンニク抜き餃子」を頼むとき、なんだか腑に落ちない頼りなさが、ニンニクなし餃子の私的な課題であった。しかし、今夜その課題は解決した。新鮮な生姜は、ビリリと鋭角に旨味センサーを刺激し、私の脳を気持ちよく痺れさせる。しかし、生姜が一人歩きすることはない。快感を誘った後は、ジェントルマンよろしく、素材の甘味をじんわりと引き立てて優しく終わりへと導く。

そして特製の味噌だれが、コクと深みを更に後押し。小ぶりで可愛らしい見た目からは想像もつかない打撃力……。この子は革命児なのではないのか? また、生姜ぎょうざはにおいを気にせず楽しめるため、女性にもとても人気があるらしい。

「鬼しじみのエスプレッソ」380円

さて、シメにおすすめなのは「鬼しじみのエスプレッソ」。しじみの旨味とエキスをぎゅっと凝縮した、まさにエスプレッソなスープ。 しじみと言えば酒飲みの味方、肝臓の働きを助けるといわれる「オルニチン」がたっぷり。楽しかった今宵の最後に、そっと寄り添い、翌日の自分も気遣ってくれる優しいスープだ。

装飾がない分、本質を問われるシンプルさ。隅々まで抜かりない繊細なこだわり、ぶれない芯。京都のおもてなし心を感じた食卓。

色々なもので溢れて、飽和している世の中。今夜は本物に触れたような気がする。シンプルイズザベストね。

※価格はすべて税抜

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。

※本記事は取材日(2020年7月16日)時点の情報をもとに作成しています。

文:村田倫子