フードライター・森脇慶子が今注目している店をレポート。今回は、2020年1月に竣工した「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」内に、6月11日開業した複合レストラン施設「虎ノ門横丁」のテイクアウトメニューを、全6店舗、前後編に分けて食べ比べ!

前編に続く後編では、とんかつ「つかんと」、魚介系ビストロ「Ata 虎ノ門」、四川料理「ファイヤーホール4000 虎ノ門」の3店をご紹介。

【森脇慶子のココに注目】虎ノ門横丁のテイクアウト食べ比べ(後編)

【とんかつ】「つかんと」

“とんかつ”のさかさま読みが店名の同店。ミシュラン一ツ星のフランス料理店「TIRPSE(ティルプス)」の流れを汲むとんかつ店と聞けば、思い当たるグルマンの方々も多いことだろう。(ちなみにティルプスはエスプリのさかさま読みである)

元々、その「ティルプス」のイベントで行っていたとんかつコースの内容をメニュー化。夜は、ロースやタン、ヒレ等々豚肉各部位の一口カツをはじめ、サムギョプサルにミラノ風カツレツとグローバルな豚料理をつまみにオレンジワインを楽しむ粋なとんかつバルだが、昼はとんかつ定食やカツ丼を出すとんかつ屋に変身。と同時にテイクアウトも稼働。ご覧の「のりカツ弁当」がそれだ。

「のりカツ弁当」1,080円(税込)

塩鮭ならぬとんかつが海苔の上に鎮座ましますそれが、豪快でありつつもどこか品よく目に映るのは、フレンチ出身の料理人の手を通していればこそだろうか――。「豚ロース肉は1kg程度の塊で低温調理してから揚げています」とは弱冠29歳の桝井紘基シェフ。50~52℃で約1時間火を入れた後、190〜200℃の高温でさっと揚げ、休ませるのがつかんと流。

揚げ油は風味豊かなラードがベース。そこに米油をブレンドして軽やかさを、太白胡麻油で旨味をプラスしている。たしかにラードのみに比べて後口も軽やか。冷めてもくどさを感じさせない。

写真:森脇慶子

また、ミシッと噛み応えのあるとんかつに合わせて、米も胚芽や糠を一部残した歯ごたえのある分搗米を使用。昆布と干し貝柱のだしを用いて甘さを控えた自家製ソースや海苔の下に敷き詰めたおかかの醤油和え等々、とんかつを引き立てる脇役にも抜かりなし。シンプルながらバランスのとれた秀作だ。

【魚介系ビストロ】「Ata 虎ノ門」

港町のビストロをコンセプトに、多彩なシーフード料理で評判の代官山「Ata」。ここ虎ノ門店も、黒板を埋め尽くすメニューはほぼ魚介一色だ。魚介のグリルなど人気料理が満載の「渚のアフタヌーンティー」等々、プレゼンテーションも楽しい同店ならではのテイクアウトがこれ。「Ataの海鮮丼」だ。

「Ataの海鮮丼」1,200円(税込)テイクアウト用

一見しただけでは、ちょっぴり洋風な海鮮丼。だが、そこはアイデアマンの掛川哲司シェフ。食べ進むうち、あちこちに仕掛けが隠れていることに気づかされる。例えば刺身。ただ盛りつけているだけではなく、鰹は叩き、鰤と鯛は一晩塩をして寝かせ、サーモンはハーブでマリネと江戸前よろしくひとつひとつに仕事がしてあるのだ。

更には、クミン入りのキャロットラペに、細切りのきゅうりはミント風味など野菜にもひと手間。カマンベールチーズやアボカド、自家製マヨネーズを加える……といった足し算的料理の構築はフレンチのそれを思わせる。

だが、味の着地点はどこかアメリカン? と思っていたらすかさず掛川シェフがひと言。「発想はカリフォルニアロール。なので、ご飯は酢飯。ターメリック風味になっています」とのこと。おいしくいただくコツは、具と酢飯をビビンバよろしく全てよくよく混ぜ合わせてかっこむことだ。酸味、甘み、ほのかな辛味。これらが、バランスをとりつつ渾然一体化する味わいの妙は格別。

そして、締めは添えられた特製ジンジャースープをかけて汁かけ飯に、が正しい食べ方。掛川シェフ曰く「最後は、酸辣湯の味わいになるんです」。最後までワクワクしながら食べられるはずだ。

【四川料理】「ファイヤーホール4000 虎ノ門ヒルズ」

旨辛味の麻辣スープと生薬たっぷりの薬膳スープ、この2色の火鍋で人気沸騰の「ファイヤーホール4000」。ことに、牛骨と豚骨、そして鶏ガラの3種のスープがベースの麻辣スープは、辛味と旨味が絶妙に絡み合う逸品。菰田欣也シェフ特製の自家製豆板醤や朝天唐辛子、加藤ポークの背脂、にんにく、生姜、クミンに陳皮etc.およそ10種余りの香辛料を加えたそれは、四川料理の達人菰田シェフの面目躍如たるおいしさだ。

「麻婆豆腐弁当」900円(税込)/写真:森脇慶子

その自慢の火鍋スープを使った秀作が、ランチタイムに人気の「麻婆豆腐」。これを家庭でも味わえるというのだから見逃せない。

写真:森脇慶子

香辛料たっぷりの火鍋スープで仕上げているだけに、四川山椒の痺れや香り高い唐辛子の辛味はしっかりと感じられるものの、舌を刺すようなストレートな辛味ではなく、辛さにどこか膨らみがある。多彩なスパイスのせいなのだろう、辛味の広がり方が重層的なのだ。当たり前のことだが、豆腐の味もしっかり感じられる。この口福を1,000円以下で味わえるのはうれしい限り。

「燃飯(ピリ辛まぜごはん)」850円(税込)

また、「燃飯(ランファン:ピリ辛まぜごはん)」も、「麻婆豆腐弁当」と並ぶ人気メニューのひとつ。ご飯を覆うは、加藤ポークの挽肉にフライドエシャロット、ネギ、ピーナッツのみじん切りなどなど。更に下には芝麻醬ベースのゴマだれを敷き、上には辣椒粉が振ってある。ここに、山椒油をかけて仕上げるなかなかアクティブなオリジナルメニューだ。

「冷やし担々麺のご飯バージョンです」とは、虎ノ門横丁店の伊藤龍二シェフ。食べる際にはよくよく混ぜて、が正解。ビールのつまみにもなりそうだ。

テイクアウトもイートインもモバイルオーダーで混雑回避!

虎ノ門横丁では、「LINE」を利用したイートイン利用時の整理券発行機能、テイクアウトメニューのモバイルオーダー機能を採用することにより、館内の混雑を緩和しながら安心して楽しめる環境が整えられているのもうれしいところ。雰囲気を知ってから店内での食事にトライしたい場合など、「まずはテイクアウトから!」という人は、モバイルオーダーを利用して名店の味を気軽に楽しんでみよう。

モバイルオーダーの利用方法詳細は、虎ノ門ヒルズ公式サイトからご確認を。

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。
※テイクアウトは期間限定の場合も多く、予約方法含め日々内容も変化するため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

取材・文:森脇慶子

撮影:食べログマガジン編集部