【定食王が今日も行く!】

 

夏のパワーフード!徳川慶喜も好んで食べた!?

 

定食の中で王道のメニューといえば、豚の生姜焼き定食。定食のためのメインディッシュといっても過言ではない。肉と甘辛いタレがご飯に合い、白米が進んで仕方がない。これからの暑い季節にはぴったりの、サラリーマンのためのパワーフードだ。

 

実は日本において豚食の歴史は浅い。沖縄や鹿児島などでは郷土料理として食されていたが、豚好きの「豚一様」と呼ばれていた徳川家最後の将軍、慶喜が西洋文化に影響を受けて食べていたのは、当時としてはとても珍しかったようだ。

 

豚の生姜焼きが日本全国で一般的に食べられるようになったのは、関東大震災以降。銀座の大衆食堂「銭形」が初めてお店で出したと言われている。火が通りやすく、すぐに提供できることもあり、戦後一気に労働者の間で人気となった。まさに高度経済成長を支えた活力となった定食なのだ。

 

 

戦後からサラリーマンを支えた蒲田の老舗洋食店

今回ご紹介するのは、そんな昭和のサラリーマンたちをリアルに支えてきた昭和30年(1955年)創業の「ぐりるスズコウ」。豚の生姜焼きで知られる蒲田の老舗洋食店だ。看板の書体もレトロ感がたっぷり。店内も昭和の情緒が漂い、昭和30年代を描いた映画「ALWAYS三丁目の夕日」の世界に迷い込む。

 

 

ランチメニューはたった2種類で、生姜焼きとポークソテーのみという潔さ。この店の看板名物「特大生姜焼」を注文。そして迷わずライスは大盛りで!(無料)。ここも意外とうれしいポイント。最近では大盛りで100円という店も増えている。昔から働く人たちを支える食堂ならではの愛を感じる。

 

テーブル席だけでなく、お店の厨房が見えるカウンター席があるのが昭和の大衆食堂感を盛り上げる。お一人様で気軽に入れるのが、独身サラリーマンにもうれしい。

 

ちなみに2代目のご主人は九重部屋に在籍した元力士。厨房でのその存在感に期待が高まる。

 

注文するとテーブルにセットされるのは箸ではなく、ナイフとフォーク。これから来る豚の生姜焼きの分厚さをすでに物語っている。

 

 

厚さ!やわらかさ!大量の生姜!で概念を覆す、贅沢生姜焼き

じゅうじゅうと大きな音を立てて登場したのは、手のひらほどの大きさの豚の生姜焼き!250g、厚さは2cmほどある超特大サイズだ。

 

一見、ヘビーに見えるが、口に入れるとその食感は柔らかくしっとり。幸せを感じる瞬間。通常、豚の生姜焼きは豚ロースのスライスを使うが、この店では豚の肩ロースのブロック肉をお店でスライスして提供している。

 

この分厚いステーキのような豚肉に小麦粉をまぶして表面を焼き、その後オーブンで肉が硬くならないように、じっくり中まで火を通すのは熟練の技だ。

 

 

そして驚くのは大量の生姜!この店では焼きあがったタイミングで、生姜を後のせして、甘辛しょうゆダレをかけて提供される。

 

柔らかくジューシーな肉に、通常の生姜焼きほどの濃厚さはない、さっぱりとしてほどよい甘さのタレが合う。大量の生姜を一緒に口に含むことで、後味がさっぱりするので、250gの大きさでもあっという間に完食できる。

 

最近では肉料理に口直しのサラダを添えることが増えて来たが、人参やほうれん草のグラッセ、フライドポテトなどの副菜も、昭和レトロを感じさせる胸キュンポイントだ。

 

ランチは月、水、金のみの営業。夜はコロッケやビーフシチュー、ナポリタンなど洋食屋定番のメニューをつまみに酒を楽しむことができる憩いの場となっている。

蒲田でサラリーマンの胃袋を支え続ける「ぐりるスズコウ」も、今月から10年ぶりに100円の値上げに踏み切るそうだ。ランチ1,600円はかなり贅沢だが、それでも食べる価値のあるパワーフードだ。暑さにバテそうなときこそ、厚くて熱い!豚の生姜焼きをぜひ、食らってほしい。