長野県・北安曇郡白馬村といえば、冬のスキーのイメージが思い浮かぶ人が多いのではないだろうか。しかし今、「白馬のグリーンシーズン」がすごいことになっているという。なんでも、超絶景を前にして出来立てのパンが食べられるとか……一体、どういうことだろうか!? 早速、現地に向かった――。

HAKUBA MOUNTAIN HARBORで味わう“夏への扉”

まずは、この写真を見てほしい。眼前にそびえるのは、北アルプスの一角、2,800~2,900mクラスの山々が集う後立山連峰(白馬鑓ヶ岳・杓子岳・白馬岳など)。

 

「すごい景色だね!」「キレ~イ! 行ってみたい!」。うんうん、分かる、その気持ち。どっから見ても、間違いのない絶景だもの。ただ、このデッキ、単なる展望台ではない。もっと、もっと、楽園に近いテラスなのだ。

なぜなら、ここは……テラス席で焼き立てのパン、淹れたてのコーヒー、そしてキンキンに冷えたビールが楽しめる飲食スペース。しかも、ニューヨークで20年以上も愛される人気の「THE CITY BAKERY」のパンが食べられる“天空のベーカリー”なのだという。

 

つまり、こういうことである。

サンドイッチ越しの、ビール越しの北アルプス。皆さん、想像してみてほしい。思考が停止するような猛暑を抜け出し、標高約1,300mの天空のテラスでいただく冷えたビールと、出来立てサクサククロワッサンのサンドイッチ。目の前にどこまでも広がる、万年雪を抱えた日本屈指の名峰群。その山々の合間から運ばれる心地よい薫る風。

 

ここ、「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(白馬マウンテンハーバー)」のテラス席は、“夏への扉”と形容したくなる、夏が擁する魅力を全開放するかのような圧倒的なトリップ感がある。

サンダルでも大丈夫! 準備や装備は必要なし

実は、白馬山麓にある10のスキー場では、マウンテンリゾート化を図るべく、5年前から「Hakuba Valley」と銘打ち、さまざまなプロモーションを展開している。例えば、2016年には単一チケットを利用して滑走できるゲレンデ群にするべく、共通自動改札システムを導入。「日本最大のスキー場」として生まれ変わっているほどだ。昨今、オーストラリア人を中心とした外国人スキー客が増加している、という話を耳にした人も少なくないはずだ。

 

その一方、春から秋にかけたコンテンツ不足による低稼働や、低迷する国内スキー・スノーボード参加率などの影響から、リゾート地としての通年の稼働率に関しては改善の余地があった。そこで、グリーンシーズンの観光客誘致に力を注ぐべく、超目玉スポットとして「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」が、満を持して誕生したというわけである。

「ハーバーのある岩岳山頂へはゴンドラでアクセスできるため、サンダルでお越しいただいてもまったく問題ないです。近くにはドッグランもあるので、ワンちゃんと一緒に楽しむこともできます」

 

そう笑うのは、「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」を手掛けた白馬観光開発株式会社、代表取締役・和田寛さん。日本百名山を踏破中の山に魅せられた人物でもある。

 

「夏山=トレッキングという画一的なイメージから脱却したかった。これだけの魅力を誇る山は、国内でも屈指。その魅力を最大限に活かすべく、食に関しても手を抜きたくなかった」

 

「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」に入っている「ザ シティ ベーカリー」は、長野県では初出店となる。信州初の場所が山頂というのが、同県の魅力を物語る。山頂に初出店、なんというパワーワードだろうか。「この景色を最大限に楽しむには、美味しくておしゃれなシティ ベーカリーさんがピッタリだと思ったんですよね」。

左から、「白馬豚のクロワッサンサンド」(950円)と「クロワッサンサンド たまご」(900円)

「白馬豚のクロワッサンサンド」は、ここでしか食べることができないオリジナルサンドイッチ。甘みがあって柔らかい白馬豚と、サクッと音を奏でるパンとの相性たるや! そして、他の店舗では絶対に真似することができない“絶景”という隠し味……いや、隠し味というには、あまりに雄大で隠しようがない。「雲に届きそうな場所で食べるサンドイッチ」を、登山をせずとも体験できてしまうのだから、白馬恐るべし、である。

店内にも飲食スペースがある。ベーカーズマフィン(440円)、チョコレートチャンククッキー(360円)など、「ザ シティ ベーカリー」おなじみのメニューも

秋になると、一面が紅葉に染まる――。もう想像しただけで、旅の準備をしたくなる。「7月中頃には、ハーバーの隣にWi-Fiスペースを設けます。ノートパソコンを広げて、のんびり仕事をしてもいい。目の前に白馬の山が広がることで、きっと新しい働き方や休み方を提供できると思います」と和田さんが語るように、白馬のグリーンシーズンは、冬とは異なる栄養価の高い体験を与えてくれそうだ。

「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」の入口は、まさに夏への扉以外の何物でもない。夏を味わいに行く。夏の海に勝つことのできる夏の山が、白馬にはある。

 

※価格は税込

取材・文:我妻弘崇(アジョンス・ドゥ・原生林)