おしゃれフードトレンドを追え! Vol.35

食事の前後に一杯どう? 立ち飲みはいつものパーティ感覚で!

おしゃれ業界にはパーティがつきものだ。ショップの開店お祝いパーティ、ファッションショーやイベントのオープニング、新作お披露目パーティなど毎月のように何かしらのパーティが開かれている。繁忙期には連日シャンパン片手に立ち話を楽しんでいるのだが(これも大事な仕事なのだ)、椅子に座って話すより、ウロウロと歩きながら知り合いを見つけておしゃべりするのが盛り上がるわけだ。立ち話の輪が2人から3人に増え、さらに増えてネットワークが広がっていくのもパーティの魅力。立って飲むことに何となくクールさを感じている。だからこそ、最近の立ち飲み屋ブームの再来には心躍るものがある。

 

しばらく下火だった立ち飲み屋だが、最近またおしゃれ層を中心に人気が再燃中だ。立ち飲みブームは、さまざまなスタイルで何年かおきに来ている。例えば下町に代表される大衆酒場や酒屋の「角打ち」、本格ビストロ料理やスペイン料理が楽しめる立ち飲み、「俺のイタリアン」などに代表されるハイクオリティかつカジュアルな立ち飲みなどがここ10年くらいの流れだ。そして今、昨年あたりから人々が集まっているのは、和風居酒屋系立ち飲み。刺身や渋いお惣菜をつまみながら日本酒を少しずつ、そんなしっぽり系立ち飲みが今の気分だ。

 

相変わらずファッション業界の人だらけの人気居酒屋「なるきよ」(渋谷)では、玄人は奥の座敷に座らずに手前の立ち飲みゾーンで、というのがお決まりになっているらしい。

割烹並みのクオリティの料理をアンティーク食器で:立ち呑み 三ぶん(日比谷)

大人世代なら、立ち飲みとはいえ味や雰囲気に妥協はしたくない。立ち飲みの気軽さと本格的な料理と渋い雰囲気、その全てを兼ね備えた店が東京ミッドタウン日比谷3Fの「三ぶん」だ。L字カウンターだけの小さな店は、レトロ感が漂い、食器棚にはおちょこや小皿を中心に、大正や昭和の和食器が並んでいて眺めるだけでも楽しい。

まず店に入るとサービスで出てきたのがおちょこに入ったお粥。ぐっと一口、出汁の美味しさに驚愕する。「刺身盛り合わせ」はカツオ、ブリ、帆立貝の盛合せで、辛子と本生山葵が添えられ、江戸時代の醤油と言われる“煎り醤油”や塩をつけて。この日は牡蠣「サムライオイスター」や旬の「白子ポン酢」がおすすめだった。料理は素材も良く、練り物も一から手作り、調味料も手作りのものが用意されている。日本酒(コップ酒)は全て500円、お料理も200円〜1,000円。立ち飲み価格とスタイルを守りながら、割烹並みのハイグレードな和食が味わえる。隣には「割烹酒亭 三分亭 東京ミッドタウン日比谷」があり、厨房は立ち呑み三ぶんと共通。なるほど、割烹レベルの料理であることに合点がいく。

日本一の鮭定食のお店の姉妹店!:しゃけスタンド(代田橋)

出典:ellaguruさん

出典:ropefishさん

 

京王線代田橋駅に降りて徒歩5分の「沖縄タウン めんそーれ大都市場内」に、「しゃけスタンド」はある。日本一の鮭定食が食べられると定評のある鮭専門店「しゃけ小島」の姉妹店で、立ち飲み形式で絶品の焼き鮭や鮭つみれのおでんなどのしゃけメニューが味わえる。揚げウインナー、鶏のから揚げなど家庭料理も充実。すじこのクリームチーズは日本酒にぴったりだし、締めの名物しゃけカレーはビジュアルがエキゾチック! しゃけの懐の深さに気づき、魅力にハマるだろう。

奥三茶にありながら連日大人気の新立ち飲み:コマル(三軒茶屋)

撮影/石渡朋

写真:お店から

 

昨年オープンした三軒茶屋のスタイリッシュな立ち飲み屋は、10坪ほどの空間で円形カウンターを囲む立ち飲みスタイル。地元から集まったのか、若く個性的なファッションの男女でいつもいっぱい、ワイワイしている。キャッシュオンの立ち飲みスタイルが海外っぽい。刺身、ウニと岩のりワサビ、豚の生姜焼き、ラムレーズンチーズ豆腐など創作和風メニューが親しみやすい。おでん(100~300円)肴にちびちびやるのも良い。

 

立ち飲み屋は自由度が高い。仕事の流れで、パーティ後の2軒目として、アペリティフで、「どう? 一杯」という軽いノリで誘えるのが魅力的だ。いい企画が会議室ではなく喫煙所で生まれることがあるのと同様、座るよりも立って飲んだ方が、人との距離も縮まってアイデアも生まれやすい。新たな出会いも生まれやすいし、“わざわざ感”を嫌うクリエイター職にとっては偶然を生んでくれる立ち飲みは、パーティ以上の社交の場なのだろう。いつ来てもいつ帰ってもいい、そんな“ゆるさ”がたまらなく優しく心地よく感じるのだ。

 

※価格は税抜