〈食べログ3.5以下のうまい店〉

グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回はトルティーヤ研究家の吉川さんが教えてくれた、メキシコ屋台と日本のラーメン店を掛け合わせたような、タコス界隈でも話題の一軒を紹介。

ストリート感が魅力のカルニタス専門店

見た目はほぼ肉!? 驚きのボリュームながら、どんどん食べられるカルニタスが大人気!

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

渋谷駅から約5分。ガラス越しに見える「健多幸」「TACO」の文字が入った緑と白の提灯が目印。入口上には、出資してくれたバーオーナーが経営する店の名前「Conquistar」が掲げられている

メキシカンやテクスメクス料理店、ファストフードまで、さまざまなスタイルのタコス店が点在する東京・渋谷。中でも、ホロホロに煮た豚肉をのせたメキシコの伝統的なタコス「カルニタス」の専門店として話題を集めているのが、道玄坂の上にある「タコストリート」(食べログの点数は2026年10月現在で3.39)。
渋谷という立地や、深夜営業も行っているスタンディングスタイルの小さな店ということで客層は若者メインかと思いきや、実際は40、50代の客や外国人観光客など、幅広い層が続々と訪れている。人気の秘密は、日本の“とある有名店”にも通ずる独特な味わいにあるようだ。

 

吉川さん

界隈で話題になっていたので知りました。カルニタス専門店ならではの衝撃的なタコスの味わいと「タケリア感」(メキシコの屋台)の雰囲気を感じられ、日本にもついにこんなタコス店が現れたかー!とうれしく思いました。

店内はスタンディングで7、8名が利用可能。店主曰く「パンパンに詰めればマックス14名入れます(笑)」

店内は白のタイル張りに木の板のカウンターが設置されたコンパクトな空間。
奥の扉から入り、2ピースからオーダー可能なカルニタスを好きな数だけオーダー。受け取り口にある4種のサルサを自由にかけたらスタンディングのカウンターで豪快に手でかぶりつく……という流れになっている。
週末は時間帯により行列ができることもあるが、回転が早いのでファストフード感覚で気軽に利用できる。また、テイクアウトも対応しているため、オフィスランチや自宅でカルニタス丼にアレンジするなど、楽しみ方も拡大中だ。

 

吉川さん

立ち食いスタイルの狭い店内ですが、そこがまたメキシコの屋台っぽい雰囲気を醸し出していていいです。朝4時までやっているので、飲んだ後の締めタコスにも最適! それと店主のケンさんはじめスタッフが皆フランクでフレンドリーなのもよいです。聞いたら色々教えてくれます。

タコスの歴史を遡るようにたどり着いたのがカルニタス

「いらっしゃいませ!TACO!!」と明るい声掛けが印象的な店主の加藤健さん

「一口で豚一頭をまるごと味わえる幸せを届けたいんです」と語るのは、店主の加藤健さん。
タコスとの出会いは2020年。始まりは、沖縄のソウルフード・タコライス作りからだったという。タコライス発祥の店として知られる沖縄の「キングタコス」、通称“キンタコ”のタコライスのおいしさに衝撃を受けた先輩から「東京でもあのタコライスが食べられたら……」と持ちかけられ、寿司、焼鳥、串カツ店のバイトで料理経験があった加藤さんは、自身はタコライスを食べたことがないままタコライス作りをスタート。
しばらくは先輩に味の評価を頼んでいたものの、やはり本場の味を知りたいと沖縄へ。現地で食べてみたところ、タコライスよりも沖縄タコスに魅了されてしまい、タコライスからタコスへとシフトチェンジ。

自家製カルニタスやトルティーヤ、サルサの作り方を、なんと公式インスタグラムで公開。それをもとに他のスタッフにも継承している

さらにその後、2022年に東京・原宿にあるメキシカンタコスの人気店「TACOS 3hermanos Harajuku (タコス トレス エルマノス)」でカルニタスを食べて、またもや衝撃が走る。
「おいしさとシンプルさに感動しちゃって。その瞬間に、カルニタス一本でいこうと決めました」(加藤さん)
そこから、独学で研究してカルニタスの味を完成させ、知り合いの店の軒先を借りて路上販売を開始。名店の屋号に自身の名前をかけた「ケンタコ」の店名で文京区を拠点に2023年まで続けたが、徐々に評判となり生産量が増えたため、店舗での販売を考えるように。

2023年からは中学の同級生が経営する渋谷の立ち飲み店の一角で間借り販売をしていたところ、その味に惚れ込んだ近隣のバーオーナーが出資してくれることとなり、2025年4月、現在の場所に店をオープンした。

メキシコに行って現地の味と伝統的な調理法を確認し、唯一取り入れたのは熱伝導の良い銅鍋を使うこと。味の入りがよくなり、よりしっとり仕上がるようになった

独学で完成させたカルニタスは、ガツ、皮、モツ、タン、耳、肩ロース、バラなど、豚のさまざまな部位を銅鍋でラードとともにじっくり8時間煮込んでいる。意外にも干し椎茸や味噌、醤油など、和の食材も使用。その一方で、素材本来の味を活かすため、塩などの味付けは最小限にしているという。
「自分が好きな味とカルニタスの(古くから)大事にされてきた部分を踏襲してできた味です」と加藤さん。
店舗出店前にメキシコに赴き本場の味を確認した後も、調理工程だけを参考にしてレシピは変えなかったそう。
「日本の皆さんに認めてもらっている味を変える必要はないと感じて。改めて自分の味に自信を持って帰国しました」
ガツ、モツなど臓物系のうまみ、皮や耳のプルプル感、肩ロースなどの繊維質の食べ応えといった部位ごとに異なる味わいを一度に楽しめるのが最大の特徴だ。

トルティーヤはメキシコ産のマサ(トウモロコシ粉)から仕込んで焼くコーン100%の自家製。焼く時にあえて膨らませず、しっとりした食感に仕上げている
 

吉川さん

カルニタス専門店でしか味わえない豚肉のうまみのオンパレードです。個人的な感想としては家系ラーメンや豚骨ラーメン店に食べに行く感覚に近いと思っています。

部位ごとの味わいを楽しめる「カルニタス」

オーダーは2P 1,000円から。写真は2人でのシェアにおすすめの6P 2,500円

提供されたカルニタスを見てまず驚くのがそのボリューム感。
小ぶりなトルティーヤの上に、提供直前に軽く焼いて表面をカリッとさせた豚肉がてんこ盛りにされており、5ピース以上ともなれば、皿の上はほぼ“肉の山”だ。
しかも、1メニューだけとなれば「食べ飽きるのでは」と考えがちだが、そうさせない名脇役もしっかり取りそろえている。

1ピースでもこのボリューム感!

お店のおすすめは、まず塩とライムのみをかけて、豚肉本来のうまみを感じてから、サルサをかけて味の変化を楽しみ、自分好みの味を見つけるという食べ方。

実際に塩とライムだけでも、豚のさまざまなうまみや食感がMIXされているので食べ応えは十分。ちなみに最近はリピーターたちの間で、豚のうまみやラードのコク、にんにく、生姜などの風味を感じる味わいが人気店のラーメンに似ているとして“二郎系タコス”と呼ばれているそう。

持ち上げるとこぼれ落ちそうなほど具材たっぷり。それでいて味は重くないのが人気の秘密
 

吉川さん

カルニタス専門店なので基本メニューはカルニタスだけですが、豚肉の複数の部位を使って銅鍋で煮込まれているので、食べる部分によっても食べ応えが違って感じたりします。肉汁溢れるパンチのあるカルニタスに、自由に選べるサルサや付け合わせのピクルスと合わせることでまたいろいろな味に変化できて面白いです。何ピース注文するか選ぶことができるので、その時食べたいだけ注文できるのもうれしいポイント。