【カレーおじさん\(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2024年8月を振り返る

今年は非常に暑い夏となり、個人的にも非常に忙しい夏となりましたが、毎日カレーを食べたおかげで今年も夏バテになることなく乗り越えることができそうです。とは言えまだまだ暑い日は続きそう。引き続きカレーで夏バテ予防をしつつ、残暑をしのぎたいと思います。

そんな8月のトピックスは以下5つ。

1. カレーも人気のつけ麺の有名店が4年ぶりにお茶の水に帰ってきた

2. 人気店のカレーを手がけたシェフが南阿佐谷で独立

3. 石垣島から市谷にやってきたスパイス欧風カレー

4. 流浪の料理人が久々に構えた店舗は都立大学の隠れ家的民家レストラン

5. 西蒲田に誕生したポップでキャッチーな全世代対応型スパイスバル

どのお店もカレー好きなら要注目。続々と生まれる新店舗。あなたの新しいお気に入りを見つけてください!

【第1週のカレーとスパイス】実はカレーもすごいんです。4年の歳月を経て「お茶の水、大勝軒」が大復活!

2024年7月6日、「お茶の水、大勝軒」復活!

今週は「大勝軒」のご紹介です。ご存じの方も多いでしょう。つけ麺ブームの火付け役となったあの大勝軒なのですが、2024年7月6日に4年の時を経て復活した「お茶の水、大勝軒」は他の大勝軒と大きく違う点があります。それはカレーでも評価され、ファンが多いということ。何しろ日本最大のカレーフェスと呼ばれる「神田カレーグランプリ」で優勝をはじめ各賞を受賞し、他のカレーフェスでも受賞経験があるという、カレーだけで見ても凄まじい経歴なのです。

「東池袋大勝軒」(2007年閉店)前で撮影された、山岸さん(写真左)と田内川さん(写真右)の記念写真

お茶の水、大勝軒のシェフ・田内川さんは幼少期より東池袋の大勝軒に食べに行き、その味に感銘を受けて通ううちに、自然と働くようになったという大勝軒の申し子的存在。だからこそ大勝軒の山岸さんと共に創業時の復刻メニューの開発を任されたわけですが、カレーライスも創業時のレシピを再現したもの。昔ながらの昭和カレーであり、これも懐かしいおいしさなのですが、僕のおすすめは「スパイシードライキーマ」1,500円。

「スパイシードライキーマ」

しっとりとジューシーなキーマカレーの上には卵黄とカスリメティ。ご飯の周りには中東のミックススパイスであるデュカが添えられているというスパイスカレーなのです。スパイスカレーでありながら中華感も失っていない独創的な仕上がり。

黄身がとろ〜り

黄身を割り、デュカやカスリメティと共に口に運べば、香りも食感も良く立体的なおいしさを堪能できることでしょう。

「チャーシュー」をトッピングした「もりカレー」

そして大勝軒名物のもりそばのカレーバージョンも忘れてはいけません。「もりカレー」1,300円に「チャーシュー」400円をトッピング。大勝軒らしい酸味と甘みが特徴のつけ汁の上に復刻版カレーのルウがかかる2層式。

麺をつけ汁に絡ませ、ブラックペッパーをがっつりかけて一気にすすりたい!

つるっとした食感の麺をカレーにつけて食べ、カレーの下のつけ汁につけて食べていくうちに、カレーとつけ汁が渾然一体となり、味が変化していくのが楽しいです。チャーシューもしっとりとした食感で満足度を高めてくれるトッピング。僕はいつもこれを食べる時は麺にブラックペッパーをしっかりとかけていただくのですが、スパイス好きにおすすめの食べ方です。

どちらも相変わらずのおいしさで懐かしくなりました。相変わらず、というのは、お茶の水、大勝軒は2020年に建物の建て替えにより一時閉店。その後、田内川さんは山岸さんの故郷である長野県山ノ内町に「山ノ内大勝軒」をオープンさせていました。それが4年ぶりに戻って来たというわけです。

注文は食券制

以前の店舗は2階にあり、階段を上らないと入れませんでしたが、新しい店舗は1階で入りやすいです。店内は食券制、カウンターでのセルフサービス方式で活気があり、混んでいても回転が速いのは長年人気店を切り盛りしてきたからこそ。ラーメン好きのみならず、カレー好きも要注目の大勝軒。カレーメニューも充実しているお店なので、僕の中ではもはやカレー店なのです。

【第2週のカレーとスパイス】間借りカレーで人気を集めたシェフが南阿佐ケ谷駅近くに待望の独立店舗をオープン!「Spice Curry Toca」

今回ご紹介するのは、2024年8月1日、南阿佐ケ谷駅近くにオープンしたばかりの「Spice Curry Toca」。

2024年8月1日にオープンしたばかりの「Spice Curry Toca」

まずその経歴からまとめると、ビストロで修業しながらミュージシャン活動も続けていたシェフが下井草で間借りカレー店「spice curry HIRUDOKI」としてスタートし、その後高田馬場のバーの間借りで「Spice Curry Toca」として営業。その味に惚れた高田馬場の「フィクションスパイス」のオーナーからスカウトされ、フィクションスパイスのシェフに就任。同店のメニューをブラッシュアップしつつ、Tocaのメニューもフィクションスパイスのメニューとして加え、お店を盛り上げました。そして遂に自身の独立店舗として南阿佐谷すずらん商店街にお店を構えたという次第です。

改装前のお店の雰囲気を有効活用した、爽やかな印象の店内

地中海料理のお店を改装したという店内は青を基調とした爽やかな雰囲気。小さいお店ながら天井は高めで開放感があります。

取材時のメニュー表

「2種あいがけ」1,350円に「レモンアチャール」150円をつけてオーダー。ご飯小盛りだと50円引きになるのもうれしいです。2種は高田馬場時代から人気のスパイスチキンカレーとネパール山椒ポークキーマカレーを選択。

「2種あいがけ」に「レモンアチャール」を追加

チキンはスパイスカレー慣れしていない一般層からスパイス料理ばかり食べているマニアにまで幅広く受け入れられそうな安定感ある仕上がり。

写真左側がネパール山椒ポークキーマカレー、右側がスパイスチキンカレー

キーマはティムールペッパーを使ったフルーティな刺激が心地よく、ジューシーな豚ひき肉を重く感じさせない着地点が見事。どちらのカレーもどことなく洋食感があるのはビストロ出身シェフだからこそでしょう。

「レモンアチャール」

レモンアチャールはレモンの程よい酸味とほのかな苦みがそれぞれの味の輪郭を立たせる役割を果たすトッピングです。

トロトロ豚バラのポークビンダルーとスパイスチキンカレーのあいがけ

ポークビンダルー(通常価格+100円)も同様で、万人受けしつつマニアにも納得できる味になっているのはシェフのセンスがあってこそ。特に酸味好きにはたまりません。

「アイスマサラチャイ」

「アイスマサラチャイ」300円は甘み無し、ガムシロップと一緒に提供。爽やかなテイストで食後の満足感をさらに高めてくれます。

僕も本業はミュージシャンなので音の帯域のバランスをどう取るかが重要だと常々考えているのですが、Tocaのシェフもミュージシャンだからこそ、音域のバランスを取るような感覚で味のバランスを整えているように感じます。ミュージシャンにカレーシェフが多いのはその作り方の感覚が似ているとよく言われるからですが、Tocaのシェフもまさにミュージシャンならではのセンスをカレー作りに活かしている方です。

オープンからしばらくはカレーのみですが、慣れてきたら高田馬場時代と同じように、ディナータイムにはスパイス料理とワインの提供も考えているとのこと。今後にもますます期待が高まる新店舗のオープンです!

【第3週のカレーとスパイス】新ジャンル「スパイス欧風カレー」とは? 石垣島発の人気カレー店が市ケ谷に独立店舗をオープン「スパイス欧風カレー PAIKAJI」

石垣島の「ビストロスマイル」が、店名を「スパイス欧風カレー PAIKAJI」と変えてカレーメインのお店に業態変更し、2024年8月8日、東郷公園の隣にオープンしました。過去に本連載でもご紹介した「石垣島カレー南風」と統合した形とも言えます。

シェフは和食から料理人人生をスタートし、ホテルのレストランで洋食を中心に修業した後、石垣島でパンとサンドイッチのお店をスタート。その後「ビストロスマイル」としてビストロに業態変更しカレーも話題となり、ビストロスマイルと並行する形で東京・新橋で間借りカレー店「南風」をスタート。カレーイベントなどにも出店した後、ビストロスマイルと南風が統合する形で独立店舗としてこちらに移転オープンしたという経緯。

2024年8月8日、市ケ谷駅近くにオープンした「スパイス欧風カレー PAIKAJI」

リゾート地である石垣島の白い砂浜と青い海を思わせるような彩色の店内は公園から見える緑もあいまって非常にくつろげる空間となっています。メニューはカレー中心ですがカレーが苦手な方のためにハッシュドビーフや、ビストロ時代から人気だったハンバーグもあります。

店内はカウンターとテーブル席も用意

今回は「ラムポークキーマ&ピパーツカレー」1,300円に「バーグカツ」700円と「チーズ」100円をトッピングしたものをご飯少なめでオーダー。

食事の前にフォンが提供されるという粋なサービス

まず最初にフォンが出てくるのがとても楽しいです。4日間かけて丁寧に作るフォンは塩も入れていないのに十分なおいしさで、これを最初に味わえるのはこの後に出てくるカレーの期待感を膨らませる素敵なサービスと言えるでしょう。

「ラムポークキーマ&ピパーツカレー」、トッピングの「チーズ」と「バーグカツ」をチョイス

期待が高まったところでカレー。ピパーツ(ヒハツ、ヒバーチなどとも呼ばれる島コショウ)のフルーティな刺激が印象的なグレイビーは、島パインも隠し味となって程よい甘みと酸味が印象的。焼きを入れた鶏ガラと牛すじの香りとうまみにスパイスの香りの相乗効果。欧風とありますがカレーに小麦粉は使わず、フォンを使用するのが西洋料理的なので「スパイス欧風カレー」というわけです。

ラムポークキーマも仔羊と豚の肉のおいしさが堪能できる仕上がり。良い部分のクセは残しつつ、苦手な方が多い部分のクセは感じさせないという絶妙の着地点にシェフの力量がうかがえます。

こんがりと焼き色のついたチーズ

チーズは通常100円ですがSNS投稿サービスで無料に。こちらにも軽く焼きを入れてある丁寧な仕事ぶり。付け合わせのピクルスにはゴーヤも含まれており、ここにも感じる南の島の雰囲気にお店の姿勢が感じられます。

薄い衣が特徴的なバーグカツ
カレーと一緒に食べれば、うまさ倍増!

バーグカツはハンバーグをカツにしたもの。つまりはメンチカツなのですが、薄い衣で上品に揚げられたバーグカツはメンチカツのイメージとは一線を画す仕上がり。肉を食べているという満足感を得られながらも重くない絶品で、肉好きなら必須のトッピングです。

「石垣島産はちみつアイス」

食後に「石垣島産はちみつアイス」600円も。素材の良さを感じさせる自家製アイスクリームに柔らかく華やかな石垣島のはちみつをかけたもので、完璧なデザートでした。

欧風カレーともスパイスカレーとも違う欧風スパイスカレー。随所に石垣島を感じさせる料理は、東京のカレー界に文字通り「南風(ぱいかじ)」を吹かせてくれそうな存在です。