【じっくり食べたいハンバーガー】第24回「Cheeseness Burger ToGo」(チーズネスバーガー トゥーゴー)
今回は「最近ハンバーガーがシンプルな方へ向かいつつある」というお話です。私のような日常よくハンバーガーを食べる者にとっては、背が高くてゴージャスなバーガーより、薄くて平たいバーガーの方が食べやすくて重宝なワケです。服に晴れ着と普段着があるのと同じで、普段使いのバーガーにはハレの豪華さより食べ心地や機能性が求められるという。そんなことを実は私、4年前に食べログマガジンで公開した記事で語ったのですが、それがようやく世の流れになりだしたのかな……と感じる中、登場したのが「チーズネスバーガー トゥーゴー」というお店です。
2021年10月15日、東京・西五反田にオープンしました。あの「フレッシュネスバーガー」が始めた新業態です。最後に「ToGo」と付くのがカッコイイですね。その名の通りのテイクアウト専門店であり、チーズバーガーの専門店です。場所は東急池上線・大崎広小路駅の改札から30mほど。テイクアウト専門なのでイートインスペースはありません。デリバリーはやっています。
注文は完全モバイルオーダー制。LINE公式アカウントのトーク画面から商品を選んで注文します。店内にタッチパネル式の販売機の設置はありません。支払いはクレジットカード、LINE Pay、PayPayによる事前決済。店頭での現金による支払いはできません。あとは受け取り時刻に店へ行き、専用のロッカーに置いてある商品を受け取る――そんな流れです。
昨年11月に中目黒にオープンした「ブルースターバーガー」、今年5月に吉祥寺にオープンした「ベックスバーガー」と似たシステムの、いわゆる「非接触型」の飲食店ですが、両店との一番の違いは「ハンバーガー屋が始めたハンバーガー屋」という点でしょう。先の2店は他分野で実績のある外食企業がハンバーガーに新たに参入したケース。一方のチーズネスは、来年で創業30周年を迎えるフレッシュネスバーガーが、これまで積み上げた技術やノウハウを注ぎ込んで生まれた店と言えます。
さて、受け取った包みからは、紙袋のにおいと混ざって、すごくいい食べ物の香りがします。肉屋で買った惣菜みたいな香りで、持ち歩きながらワクワクします。開けると中にはこんな箱が。もちろん中身はバーガー。このパッケージいいですよね。チロルチョコみたいで。
バーガーメニューは全6品。うち5品がチーズバーガーで、残りの1品はチーズなしの「NOチーズバーガー」です。レジなし・イートインなしで抑えたコストを食材に回して、原価率なんと約65%。290円から540円という価格帯で、あれこれ食材を挟まず、チーズのみに絞り込んでシンプルにまとめ上げた――私がまさに待ち望んでいた普段使いのバーガーです。6品全部食べてみました。
まずは王道の「チェダーチーズバーガー」。これが個人的に一番好みです。横綱相撲と言いますか、おいしさの安定感と安心感が抜群。温めて食べるとハッとするほどおいしくなります。それについては後ほど……。
パティはオージービーフ使用の55g。フレッシュネスのレギュラーパティより大きめです。卵・玉ねぎなどの「つなぎあり」と聞いていますが、正直、食べてもわかりません。理由は強く利いたスパイス。ナツメグとガーリックでしょうか。この強めのスパイス味によって輪郭のクッキリした、力強いバーガーに仕上がっています。
バンズは直径約8cm。ヒール(下バンズ)にマヨネーズ。チェダーチーズは米国産。ナチュラルチーズです。トマト、レタス、オニオンの生野菜3点はすべて店内でカットしたもの。
パティは丸めた状態の挽肉を鉄板にのせ、上から潰して焼く方式。「ミッケラー カンダ」の回で紹介したスマッシュバーガー式です。押し潰された挽肉がギュッと詰まってタイトな食べ口。バンズも生地に弾(ひ)きがあり、パティ・バンズともに「食べごたえ」を重視したバーガーです。小さい中にもおいしさやパワーがギュッと凝縮されていますね。
「クリームチーズバーガー」は北海道産クリームチーズを使用。スライスチーズ1枚分程度の分量です。ヒールに塗ったマヨネーズの酸味と混ざってフレッシュな印象と食べ口。
「スモークチーズバーガー」はニュージーランド産ほかのスモークチーズがスライスで2枚。香りがいいです。こうなると野菜なしで食べたいですね。そこで、注文画面のオプション選択で、トマト、玉ねぎ、レタス、マヨネーズ抜きで注文して、家で粗挽き胡椒を振り、温め直して食べました。ロッテリアの「絶品チーズバーガー」的な食べ方です。これはいい感じ。スモークフレーバーがプンと香って、酒のおつまみ的バーガーに。
イタリア産のゴルゴンゾーラを使った「ブルーチーズバーガー」が上の写真です。これまでの全バーガーそうですが、このバーガーもチーズの味がしっかり来ます。塩気よりも風味が来ますね。「はちみつ」トッピングを検討中とのこと。試しましたが、味のコクと深みが増す感じで、派手ではないですが、いい味変です。
「カマンベールチーズバーガー」のチーズはデンマーク産。約30g、スーパーなどでよく見る丸い形のカマンベールの4分の1の量が挟まっています。なお、チェダー、カマンベール、スモークチーズの3種は、鉄板の上で加熱し、軽く溶かしてからのせているそうです。
そして「NOチーズバーガー」。ニンジン、玉ねぎなど数種の野菜をすりおろしたソースが、チーズの代わりにかかっています。レストランで出てくるような、ちょっと「もろっ」としたソースドレッシングで、これも派手ではないけれど「じわっ」と後引くおいしさ。
とにかく食べごたえ重視のしっかりしたバーガーです。チーズも確かな存在感。「チーズはどこへ消えた?」ということにはなりません。あとはここに「熱」が加われば、なお良し。ならば足りないものはこちらで足しましょう。このバーガーは温めるとウンとおいしくなります。
ベストな温め方を探ってみました。電子レンジを使います。お店では「箱ごと600Wで20秒温めて」と推奨しています。面倒なので野菜だけ抜くなどせずに、まるごと行っちゃいます。試した結果……筆者宅のレンジでは20秒は短いですね。まだぬるい。逆に1分を超えると今度は水分が出てきます。その手前「600W・50秒」辺りがアツアツになり、かつ、水分が出ない、絶妙の時間と見ました。
アツアツは断然おいしいです。パティが熱によってほぐれだし、ちょっと存在感強めだった生オニオンの香りも気にならなくなり、分厚いチェダーチーズが風味を利かせ始めたところへ、ガーリック以下スパイスの風味が混ざり合って、これはゴキゲン! このチェダーチーズバーガーは熱すると何倍にもパワーアップします。ぜひアツアツを!
ブルースター、ベックス、そしてチーズネスと、3店を利用してみて思ったことなのですが、ちょっと思ったのは、良質な材料で作った良質なハンバーガーを並ばず、待たず、スムーズに、完全非接触でスマートに買えたとしても、それを家や会社でただ黙々と食べるだけだと、ちょっと味気ないんですよね……。満腹になれども満足せず。そんな心境です。商品に対する不満じゃないんです。おそらく店内で食事をすること、そして、そこで生じる店員さんとのちょっとした会話が、実はけっこうな「スパイス」になっていたということなんです。コロナ禍を経て、そうした何気ないやりとりに「飢えている」ことに気付きました。ですからお店の方は、何でもよいので「ムダなひと声」を受け取りに来たお客さんにかけてみてはいかがでしょう。予想以上に喜ばれるかもしれませんよ。
「おいしい料理にはムダも必要」というところでしょうか。とにかく、アツアツのチェダーチーズバーガーは最強です! ぜひご賞味を!
※価格はすべて税込