【じっくり食べたいハンバーガー】第23回「RIGOLETTO BAR AND GRILL」リゴレット バー アンド グリル)

お久しぶりです。この夏は連載をお休みして「食べログ ステーキ 百名店 2021」に関する記事などを皆さんにお届けしておりました。こちらもぜひご覧ください。

少し間が空いたので「じっくり食べたいハンバーガー」についてあらためて説明します。主食としてじっくり味わえる、とっておきのハンバーガーを紹介する月1連載ですが、一方で、腕はいいのに評価がイマイチ追いついていない“隠れた実力店”や、世間で思われているイメージと実像の間に差がある店などを取り上げ、掘り下げる、そんな裏テーマも持ちつつお送りしています。

さて、今回ご紹介するのは「リゴレット バー アンド グリル」。毎夏開催される「六本木グルメバーガーグランプリ」にあっては優勝回数最多を誇る、参加者の間では知らぬもののない有名店ですが「食べログ ハンバーガー 百名店」には選ばれていないという、これこそまさに“隠れた実力店”。では、なぜ選ばれていないのかというと、それは「ハンバーガーの店ではないから」です。すると一体、リゴレットとはどんな店なんでしょうか? その魅力をじっくりとご紹介してまいります。

六本木ヒルズの「ウェストウォーク」というエリアの5階にあるお店です。店構えはキラキラのギラギラ。でも、奥に見える店内は薄暗くて「暗がりで何やってるんだ?」という、ちょい謎な雰囲気。しかも、コロナ以前は深夜2時まで、週末は朝4時まで営業していました。暗がりに夜な夜な集う大人たち……彼らは一体何を? 謎はますます深まるばかり。

まず通されるワインセラー。なお、白ワインは別の場所に貯蔵されています

そんな謎な店内に踏み入れば、まず通されるのがワインセラー。赤ワインばかり約2,500本を貯蔵するセラーの中が長さ10mほどの通路になっており、そこを抜けるといよいよ店内。席数164席+個室2室。ホール・キッチン合わせてスタッフ常時20名、繁忙期には40名態勢という、文字通りの大箱です。フードメニューを数えたら118品ありました。

外観に負けず劣らずギラギラな店内。なお、天井中央の球体は回りません

リゴレットは「スパニッシュ・イタリアン」のお店です。「HUGE (ヒュージ)」という外食企業が経営するレストランで、国内とハワイに12店。リゴレットの前後に付く「○○」の部分は全店違っていて、メニュー内容も含め、各店それぞれに独自色を出しています。六本木のリゴレットのサブタイトルは「バー アンド グリル」。つまり、「バー」であり「グリル」であると。そしてベースはスパニッシュ・イタリアン……ん? ハンバーガーはどこ行った? さらに詳しく見てみましょう。

まずはタパス(小皿料理)から。全28品のうち22品が660円均一。日本ではHUGEグループの店でしか飲めない“エクスクルーシブワイン”が1本3,025円均一で全34銘柄あるので、これと一緒に頼めばコスパ最強! 週末深夜の客たちは、このワインとタパスで六本木のスペシャルな夜を楽しんでいたワケです。

「ホット・チキントルティーヤロール」660円

小皿と言ってもご覧の通り、そこそこの量があり、そして結構な手間がかかっています。料理長の島田義徳さん曰く「ピザやパスタはおいしくて当たり前。だからこそ、タパスはしっかり作り込む」のだと。

人気メニュー「ホット・チキントルティーヤロール」はたっぷりボリューミーなフィンガーフード。香辛料に漬け込んだ後、低温でコンフィした鶏むね肉をハラペーニョ、きゅうりとともにソフトトルティーヤに巻き、トマトサルサをのせた一品ですが、そんな中、そっと顔を覗かせるゴーダチーズのコク味が堪りません。

「イベリコ豚と甘長唐辛子のプランチャ“ソルサ”」660円

「イベリコ豚と甘長唐辛子のプランチャ“ソルサ”」はスパイシーでパワフルな豚肉の鉄板焼きです。イベリコ豚が意外やたくましく力強い食感で、充実の食べごたえ。そのスパイシーな味に対して、じゃがいも「インカのめざめ」が超甘くて、この味の対比が鮮やか。

人気メニュー「ミガス」660円。生チョリソー(非加熱のチョリソー)とバゲットのソテー。イタリア産トマトで作ったソースがなめらかで、いい~ゆるさ加減

そして「ミガス」が最高! ひと口目からいきなり美味! 生チョリソーの風味が素晴らしく、程よいゆるさのトマトソースを吸う役割でバゲットとともに“なす”が入っているのがポイント。目玉焼きの黄身がとろ~り絡めば、ジューシーかつスパイシー!

こんな調子でタパスが28品あります。パスタは24品。おすすめトップ3は「オマール海老のトマトクリームソース」「小海老と甘長唐辛子のロザマリーナ -カラブリア名物 シラスの塩辛のパスタ」、そして「国産鶏とマッシュルームのラグーソース ローズマリーとレモン」です。

「国産鶏とマッシュルームのラグーソース ローズマリーとレモン」1,320円。レバーとハツはマデイラワインに漬け込み、臭みを抜いてから調理。舌の上にのる丸くてやさしいバター味が絶品

コンキリエというショートパスタの一品。国産鶏のもも・レバー・ハツをマッシュルームとともにフォン・ブラン(鶏のブイヨン)で煮込み、ローズマリー&レモン入りのバターソースと合わせたパスタですが、旨味の出し方が絶妙で「出過ぎず・隠れ過ぎず」な、針の穴に糸を通すような微細な味の調整がなされています。先ほどのタパスのハッキリした味とは好対照。ましてハンバーガーにはこういう繊細な味の表現はできませんので、そこにレストランとしてのレンジの広さと奥行きを感じます。

「松阪豚スペアリブのグリル」2,640円。350g。骨を除けば250gほど。その骨の周りが一番美味。でもやっぱり、外側の硬いところも美味!

グリルメニューからも一品。牛から魚まで12品ある中で「今日はこれが仕上がりよし」と薦められたのが「松阪豚スペアリブのグリル」です。松阪牛と同じ三重県松阪市の銘柄豚で、ポイントは脂の甘味。醤油、みりん、酒などで下味を施した後、20~25分ほどかけてじっくりグリルしたスペアリブは、外はカッチリ硬く、中はぷるりとやわらか。特に骨ギリギリをこそげ落として食べる肉が美味。いつまでもしゃぶり続けていたいおいしさです。そう、牛より豚の旨味の方が飽きないんですよね。レモンを搾るとキュッ!と締まってさらに美味!