2021年7月29日、肉の日を祝うが如く発表された「食べログ ステーキ 百名店 2021」。直火で焼くアメリカンスタイル、鉄板焼きスタイルの日本式と、大きく分けて2種類に分かれるステーキの世界をもっと知りたい! ということで、肉料理やアメリカ料理に精通する、ハンバーガー探求家の松原好秀さんに解説してもらいます。

教えてくれる人

松原好秀

ハンバーガー探求家、評論家。2014年に『ザ・バーガーマップ東京』(幹書房)出版。ウェブ・雑誌の連載のほか、テレビ・ラジオの出演も多数。2017年夏には映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』の公開記念キャンペーンの企画協力も担当した。

ハレの日のご馳走「ステーキ」をもっと知りたい!

「食べログ ステーキ 百名店 2021」の発表を祝う記事です。が、百名店の顔ぶれを見て、「半分は行ったことある」なんて人は、もうこの記事を読まなくて結構です(笑)。たぶん多くの皆さんがそうだと思いますが、何万円もするステーキを食べるのは、例えば仕事上の接待であるとか、何かの会にお呼ばれしてとか、そういうケースがほとんどで、自力で食べに行くことはなかなかないんじゃないかと思います。かく言う私もいつもハンバーガーばっかり食べていますので。ですから、今回はあくまでも「普段あまりお店に食べに行かない」というステーキビギナー向けに、ステーキについて語ってみようと思います。

アメリカンステーキとジャパニーズ鉄板焼きの違いとは?

直火&高温でガリッとジューシーに仕上げる、アメリカのステーキ

肉を焼く調理法は世界中どこにもありますが、いま日本でステーキと言っているものは、主に第二次世界大戦後、アメリカから伝わって来たものとお考えください。十字や網目の焼き目を付けながら、直接火に当てて焼く、つまり「直火」で焼く肉――それがアメリカの「ステーキ」です。

写真:Gettyimages

アメリカンスタイルのステーキハウスには高火力のステーキ窯があり、900℃とか、1000℃に近い高温で肉を一気に焼いて、外はガリッと焦がし、でも、中はジューシー……といった具合に焼き上げます。

「BLT STEAK ROPPONGI」のステーキ
「BLT STEAK ROPPONGI」のステーキ   写真:お店から

特にNYはステーキの都。有名なステーキハウスが多数集まっており、百名店でゆくと「BLT STEAK」「BENJAMIN STEAKHOUSE」「Empire Steak House」などはすべてNYから来たお店です。

「ウルフギャング・ステーキハウス」が上陸した2014年前後からは、日本でも「熟成肉」ブームが巻き起こりましたが、このブームのもととなったドライエイジング(乾燥熟成)の技術は、NYのステーキハウスで培われたものです。

肉だけでなく野菜や海鮮も楽しめる、日本の鉄板焼き

一方、日本には「鉄板焼き」というスタイルがあります。終戦後の1945年に、神戸の「元祖 鉄板焼ステーキ みその」から始まったとされており、それが「BENIHANA(紅花)」などの店によりアメリカでも広まって、「日本料理」として知られるようになりました。「Teppanyaki」または「Hibachi」なんて言い方もされています。

写真:Gettyimages

大きな鉄板の上で肉だけでなく、旬の野菜や海鮮なども次々と調理し、しかもその様子をすべてお客さんに見せて、音や香りまで含め「五感で楽しむ」――そんなエンタメ性に富んだ料理です。

写真:Gettyimages

今回の「食べログ ステーキ 百名店 2021」には、アメリカンスタイルのステーキと、日本の鉄板焼きと、大きく2つのスタイルの店が含まれます。それぞれ何店あるか数えてみようと思ったのですが、データを見ただけでは判断できませんでした。ほかにも「窯焼きステーキ 福田」などのように、肉に串を刺して炭火で焼く店もあります。

「窯焼きステーキ 福田」のステーキ
「窯焼きステーキ 福田」のステーキ   写真:お店から
「窯焼きステーキ 福田」のステーキ
「窯焼きステーキ 福田」のステーキ   写真:お店から

ですから、ステーキ店選びはまず「写真」から。どんなステーキが食べたいかは、その店の焼いている写真を見て決めるのが一番です。窯の様子や火の上がり方、切った断面の肉の色などを見て、ピン! と来たら、ぜひ食べに行ってみてください。