牛は「西高東低」、豚は「東高西低」。国内でも分かれる肉の消費量

もうひとつ、百名店を見て気づくのは、「西」の店が多いことです。総務省が発表している家計調査で、牛肉の消費は西日本が多いというデータが出ていますが、まさにそれを裏付ける結果が「食べログ ステーキ 百名店 2021」にも表れています。

龍果実
「ジャッキー ステーキハウス」のステーキ   出典:龍果実さん

一大消費地・東京の50店を除けば、東日本の店が16店なのに対して、西日本は35店と、倍の店数です。府県別に見ると、兵庫の9店、愛知と大阪の7店に次いで、沖縄の6店が目を引きますが、これこそまさに戦後、米軍から伝わった文化・風習の影響でしょう。沖縄・旭橋の「ジャッキー ステーキハウス」は1953年創業。百名店中でも一、二を争う古いお店です。

ちなみに豚肉の消費は「東高西低」。牛は西が強く、豚は東が強い。なぜか? これにはさまざまな分析があり、ネットにも多数上がっています。そのうちの一説はあの「チコちゃん」も知っていました。各自調べてみてください。なお、豚のステーキを「トンテキ」などと呼びますが、ステーキと言えば本家本流は「牛」なので、今回は「牛」をテーマにお送りしています。

ステーキ初心者が押さえるべき肉の部位は3つ!

「ヒレ」 写真:Gettyimages

牛肉の部位についてですが、「ヒレ」「サーロイン」「リブロース」……この3つを知っていれば、まずは十分です。食べる上で必要な情報だけ書くと、「ヒレ=脂ほとんどなし。牛肉の中で一番やわらか。但し小さい」「サーロイン=赤身肉の上に脂身が付属」「リブロース=赤身の中に脂が混ざっている。脂好きはこれが好き」……ざっくりこんな感じです。

「サーロイン」 写真:Gettyimages

派手な食味のサーロインと比べてヒレは一見地味ですが、しかし! おいしいヒレはものすご~くおいしい! そんなヒレとサーロインが同時に食べられるのが「Tボーンステーキ」。アメリカンなステーキハウスの定番です。T字型の骨の左右にどちらの部位も付いています。ですからまずはTボーンを頼んでみて、ヒレかサーロイン、どちらか気に入った方のステーキを次回頼む……なんて作戦もいいんじゃないでしょうか。

「ウルフギャング・ステーキハウス 六本木」のTボーンステーキ
「ウルフギャング・ステーキハウス 六本木」のTボーンステーキ   写真:お店から

但し、Tボーンは大きいんです。「for 2(2人前)」で750gとか。「for 3(3人前)」で1,200gとか。値も張ります。ですから「人手」が必要。お仲間を誘って食べに行きましょう。コストコなどでも5,000~6,000円で売っていますが、なにしろ大きいので、家ではなかなか上手く焼けません。ですから、ステーキは店で食べるのが一番! 値段はしますが、そこは腕の差、道具の差。お金を出したら出しただけおいしい――これが牛肉の基本と思ってください。

ステーキはコースで楽しむものなのか?

それでいくと、「コースも高価で豪華なほどよいのか?」という話になりますが、そこは目的次第。コースの品数が多過ぎて、肝心要の肉に辿り着くまでにお腹パンパン……なんてことでは本末転倒(でもコレ、実際に起き得ます)。中には“助走”は短めにして「早くステーキが食べたい」という人もいますので、そんなときは軽めのコースを選べばよし。アラカルト(単品)でステーキだけ頼める店もあります。

「Empire Steak House Roppongi」のコース一例
「Empire Steak House Roppongi」のコース一例   写真:お店から

一方でコース料理には、それに要する時間そのもの、空間そのものを楽しむといった一面もあります。百名店に選ばれるような店ならば、それはそれは豪華で優雅な、夢見るようなひとときを提供してくれるでしょうから、ステーキを楽しむだけでなく「そのひとときを優雅に過ごす」といった楽しみ方も大いにありでしょう。その辺りは何を目的にするかによって、自由に選んでよいと思います。

ステーキとハンバーガーの違いとは?

最後にちょっとだけ、ステーキとハンバーガーの違いについてお話しします。

「BENJAMIN STEAKHOUSE ROPPONGI」のハンバーガー
「BENJAMIN STEAKHOUSE ROPPONGI」のハンバーガー   写真:お店から

ハンバーガーは、牛肉を挽いて、スジや繊維を細かく断ち切っていますので、ナイフやフォークを使わずとも、かぶりつけば、そのまま肉を噛み切ることができます。一方、ステーキは、どんなにやわらかくても、口で噛み切ることはさすがに難しく、ナイフとフォークはやはり必要です。そこが一番の違いですね。ハンバーガーは道具要らず。手で持って、何なら歩きながらでも食べられる。その手軽さ・気軽さが魅力の食べ物です。

それと先ほどは「牛肉はお金を出したら出しただけおいしい」と書きましたが、それは「上質な」肉の話であって、ハンバーガーはその限りではありません。逆に安っちい、チープなバーガーほどおいしかったり、ハンバーガー「らしさ」に溢れていたりすることもありますので、そこは料理の性質やキャラによって変わるものとお考えください。

百名店の中にも、ステーキハウスならではの技を活かしたバーガーを出す店がいくつもあります。いずれそんな特集も面白そうですね。そんなことで、アメリカンなステーキか日本の鉄板焼きか、ヒレかサーロインか、肉が目当てかフルコースか……いろいろ作戦を練ってアタックしていただければ、きっと百名店も大喜びすることでしょう。暑い夏にがっつりステーキ! 行っちゃいましょう!

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

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文:松原好秀、食べログマガジン編集部