大規模な再開発にともない、しばらくこの地を離れていた大人たちから再びの注目を集める街・渋谷。だけど、いざ来てみたら食事処に迷ってしまうというケースもしばしば。そんな、“シブヤお久しぶり組”の迷える大人たちのため、「食べログ グルメ著名人」で渋谷区初のCEO(Chief Eat Officer)を務める小宮山雄飛さんに渋谷の新&定番グルメスポットを両方教えてもらっちゃおう! というこの連載。
[定番]編16回目となる今回は、渋谷のフレンチの名店「ラチュレ」をご案内します。
【大人の渋谷メシ・定番編】第16回「ラチュレ」
コロナ禍が長引くこんな時期こそ、たまのランチは贅沢したいもの。ということで、今回は渋谷で体験できる最高かつ最新のフレンチをご紹介。ミシュランガイド東京で4年連続一つ星、「The Tabelog Award」でも3年連続Silverを獲得する名店「ラチュレ」です。
こちらの室田シェフはサステナブルにも力を入れ、本来駆除されてしまう害獣をジビエとして積極的に取り入れ、また可能な限り食材の無駄を出さないように努めています。
室田シェフの料理はどの一皿をとっても、味だけじゃなく、食材そのものへの思いが伝わってきます。そのメッセージが明確に伝わってくるのが、「Menu LATURE PLUS〜ランチスペシャルコース〜」7,600円(税込)の1皿目。
「蝦夷鹿のブラッドマカロン」。鹿の皮が内側に引かれた特製のお皿の上にのるのは、ブーダンノワール(血抜きをした際の血を練り込んだソーセージ)のマカロン。生き物の血までしっかりいただくという、サステナブルな精神を表したラチュレの名物料理。マカロンの軽い食感の中に鹿の血の力強い味わいを感じます。
2皿目は「猪のタルトレット」。キノコの図鑑の上にのった可愛らしいタルトレット。食感の良いタルト生地の上にのった猪とキノコの組み合わせは、一口で食べられるのに、しっかりとした一皿料理を食べているかのような満足感を得られます。
続くお料理は鰹のグリエですが、かけてくれるソースが実に鮮やかな緑色。
こちらのソースの正体は、トマトを使ったコンソメ。さらに上にのるのはエシャロットや新生姜、大葉などを使った「山形だし」の洋風版! 焼き目のついた香ばしい鰹と、爽やかなソース・洋風だしの組み合わせが、味わい深くも実にフレッシュな一皿。
ジビエのパテと一言で言っても、その中身は鹿・穴熊・猪・熊の4種の肉!
さらに中央にはフォアグラ。サイドに添えられているのは、ナスのピクルス、ブルーベリー、ルバーブのジャム。一皿の上で、自然界がしっかり表現されているようです。
4種の肉を使っているパテは、肉の旨みこそ強くありますが、臭みや脂っぽさは全くなく、最小限の味付けで丁寧に調理されているのが分かります。
鮎の爽やかなおいしさを際立たせるために、あえて肝を使用せず、繋ぎにホタテを使用。バターソースで味付け。
ナイフを入れると、すっと切れ、層になった断面がまた綺麗。歯を使わなくても食べられるんじゃない!?というくらいのふんわり食感が魅力で、肝を使っていない分、鮎特有の風味だけを見事に引き出していて、日本人が慣れ親しんできた鮎の、また新たな魅力に気付かされます。
メインは鹿肉のロースト。パースニップ(白ニンジン)、パースニップのピューレ、椎茸、人参、ヤングコーン、グランブヌールソース、赤スグリと黒胡椒のソース。
絶妙な火加減の鹿肉は、旨みはありつつもあっさりとしていて、脂はなくても筋っぽくないという、まさに理想の赤身肉!
さらに、ジビエと言ってもおいしいのは肉ばかりではありません。赤スグリの酸味に、添えられたパースニップの素朴なおいしさなど、食べ進むうちにそれらが自生していたであろう自然の風景が頭に浮かんでくる、これぞ良質のナチュラル料理なのでしょう。
完熟マンゴーに、チャイのグラマンジュ、ヨーグルトのソルベを合わせ、ホワイトチョコレートカップに盛った一品。あまりに綺麗な見た目で食べてしまうのがもったいないですが、ホワイトチョコのカップごと食べれば、口の中が一気にリフレッシュされる爽やかなおいしさ。
食後のミニャルディーズは「自家製レーズンバターサンド」。
自家製ラムレーズンと塩キャラメルナッツを合わせた、甘すぎない大人のスイーツ。店舗で一つひとつ作っているため、生産を間に合わせるのに精一杯というほどの人気メニューですが、お取り寄せなら「食べログモール」からも注文できるので、気になった方はぜひそちらもチェックを。
・購入方法:「食べログモール」にて
コースを通して、食材や産地に思いを巡すことのできる、ラチュレのランチ。サステナブルな考え方へのシフトが求められている今こそ、ぜひ行ってみてほしい名店です。