緊急事態宣言発令に伴う営業時間短縮の要請を受け、テイクアウトに注力する店が急増している。そこで、フードライター・森脇慶子が「お店さながらのクオリティの高さに注目!」と舌を巻く、テイクアウト特化編をお届け。今回は、東京・新橋「モンゴリアン・チャイニーズ BAO」のメニューをご堪能あれ。
【森脇慶子のココに注目 テイクアウト特化編】「モンゴリアン・チャイニーズ BAO」
新橋の小さなモンゴル。それが、ここ「モンゴリアン・チャイニーズ BAO」だ。店主の大原万理香さんは、モンゴルと言っても、中国統治下の内モンゴル自治区の出身。「中国の食文化の影響を受けた内モンゴルの料理は、岩塩のみのシンプルな味付けのモンゴル国に比べ、料理や味のバリエーションが多彩です。香辛料や香味野菜もよく使いますね」と、子供の頃から台所に立つのが大好きだったという大原さん。そんな料理上手な彼女ならではのオリジナルの味がなんといってもBAOの人気の秘密だろう。
“モンゴリアン・チャイニーズ”と謳うように、3,500円〜7,000円(いずれも税抜)のコースでは、「羊塩茹で(骨付き)」や「羊のボーズ」といったガチなモンゴル料理から、「激辛麻婆豆腐」に「汁無し担々麺」、羊肉を用いた「紅油餃子」といった中華風のメニューまで取り揃えている。いずれも、大原さんならではの手作りのタレや味噌が味の決め手だ。
そんな、以前から持ち帰りを希望する常連客の多かったお店の人気メニューが、今回の緊急事態宣言を機にテイクアウト解禁となったのはうれしい限り。リピート客続出の「激辛麻婆豆腐」を丼仕立てにした「麻婆豆腐丼」1,080円に、自家製麺で作る「汁無し担々麺」1,080円、そして裏メニューの知る人ぞ知る逸品「羊肉のキーマカレー丼」1,300円の3種類だ。
「私の麻婆豆腐はシンプルな味なのよ」との大原さんの言葉通り、四川のピーシェン豆板醤で作るそれは、シャープな辛味と豆腐のスッキリとした甘みのコントラストが後を引くおいしさ。また、肉は、豚肉ではなく羊肉というのも同店ならではだろう。しかも、挽肉ではなく刻んだ肉を入れ存在感を強調。さらに、羊を茹でた煮汁を隠し味に加え、独特の風味を醸し出している。また、熟成期間が1〜2年と長く、通常の豆板醤に比べコクがあり厚みのある辛味が特徴のピーシェン豆板醬を使っている点も美味の秘訣だ。
同じく羊肉のカットがトッピングされた「汁無し担々麺」も試してみたい一品。ピリ辛のタレはもちろん自家製。醤油と酢、自家製辣油、山椒に胡麻油等々を合わせたオリジナルで、そのクリアな辛味が小麦粉と水だけで作るモチモチの特製麺とベストマッチ。
羊肉のほか、揚げて細かく砕いたピーナッツもトッピング。香ばしさとサクサクとした食感が味に変化をつけ、最後まで舌を飽きさせない。ちなみに麺は、生のまま・茹でてと、お好みの形でテイクアウトできる。
スパイシーな香りとマトンの風味が渾然一体となって、食欲を刺激する「羊肉のキーマカレー」。こちらは、常連客のみぞ知る隠れた名物料理だ。カレー粉にクミン、そして自家製の辛味噌で味付け。一口目は一瞬、まろやか。だが、じわじわと身体の内側から込み上げるような辛味が広がり、全身がカーッと熱くなっていくのがわかる。
その辛味を支えているのが羊の風味とコク。モンゴルの大草原を連想させるようなスッキリとした辛さと後味が醍醐味だ。好みで生卵をトッピングするのもアイデア。辛味がマイルドになるとともに、卵かけご飯の変化球としても楽しめそうだ。
※テイクアウトニューの価格はすべて税込