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【カレーおじさん \(^o^)/の今月のカレー】9月を振り返る
今月は東京の期待の新店舗2軒と、大阪で見つけた個性派間借りカレー、そして10日程仕事でインド滞在していた関係でインドからお送りした特別編として、都内の北インド料理店特集といったラインアップです。
インド滞在時にインドカレーを食べ続けて思ったのは、「日本のカレーが食べたい」ということ。インドカレーも当然大好きですしおいしいのですが、日本のカレーも最高です。日本は世界一カレーのバリエーションが多い国だと思います。そしてカレーのレベルも高い国だと感じています。インドの名店と日本の名店を食べ比べても、味のレベルにそれほど差はありませんから。
インドカレーも日本のカレーもその他各国のカレーも大好きな僕は、やっぱり日本を離れられません。これからもこちらで様々なカレーをご紹介していけたらと思っています。
【第1週のカレー】唐辛子不使用なのに、スパイシー。カレーの達人が発見した個性派カレーに注目!
スパイスカレーの聖地であり、間借りカレー百花繚乱の大阪。カレーの自由度が日本一、いや、世界一高い地域といっても過言ではないでしょう。そんな大阪の中でもカレー密集地帯のひとつであるアメリカ村で、とてつもない個性とポテンシャルを秘めたお店と出合いました。
その名も「カリー ガガ」。店名は、大ヒット映画「ボヘミアン・ラプソディ」主人公のバンド、QUEENの大ヒット曲「RADIO GA GA」からきているそうです。「THE BAR」というバーのランチタイム間借り営業。卓球台がテーブルにもなっていたり、自由な雰囲気です。
この日のメニューは「ガガビーフ」「ガガチキン」「ガーリーポパイ」の3種。せっかくなので3種あいがけで注文。まずビーフを食べてみると、牛肉の旨味とスパイスの香りが渾然一体となった深みと奥行きのあるおいしさ。玄米との相性もよく、ご飯が進みます。

続いてポパイ。こちらはインド料理のサグパニール(ほうれん草とチーズのカレー)のように、パニール(インドのカッテージチーズ)入り。バターのほのかな甘味と、メース(スパイス)の同じくほのかな甘味。この相乗効果によって、確かな甘味となっていました。
そしてチキン。通常チキンカレーは最も頼む人が多い王道のメニューなのですが、ここのチキンは王道ではないんですよ。ほのかに苦味を感じるカレーです。これだけを食べると、違和感を覚える方もいるかもしれません。
しかし、提供時に聞いた「こちらの野菜をカレーに混ぜながら食べてみてください」との言葉を思い出し、チキンカレーにサラダを混ぜてみると、サラダの持つほのかな酸味とチキンカレーの苦味があいまって、おいしくなるという奇跡!
旨味のビーフ、甘味のポパイ、苦味のチキン、酸味のサラダ。ここまできて気づきました。こちらのお店のカレー、辛さが無いんです。マスターによると「当店のカレーは唐辛子を入れずにスパイスを感じてもらうカレーを目指しているんです。今日のカレーは全て唐辛子を使っていません」とのこと。これは本当に凄い!
カレーって、ほぼ確実に唐辛子が入るんです。生にしろ粉にしろ、赤にしろ青にしろ、とにかく唐辛子はほとんどのカレーに入っている必要不可欠なスパイス。それをあえて使わないカレー。全国各地、世界でも様々な場所でカレーを食べてきた僕ですが、こういうスタイルのお店には初めて出合いました。
カレーを食べたいけど辛いものが苦手という人にも当然おすすめ。そして、普段から辛口好きな方にも是非食べてみてほしいカレーです。
基本は大阪で間借り営業ですが、各地のフェスやイベントなどでもカレーを振舞っているそうです。見つけたら必食の絶品個性派カレーですよ!
【第2週のカレー】新たなカレージャンル誕生! イタリアン×スパイスカレーのお味はいかに?
「イタリアにはカレーを出すお店がほとんど無い」。そんなことを聞いたことが何度かあります。以前某TV番組で行われたアンケートでも、世界で一番カレーを食べない国がイタリアだという結果が出ていました。イタリア料理といえばトマト。そしてニンニクやハーブを使うことも多いので、カレーとの共通点も少なくないのですが、逆に共通点があるからこそ、カレーにするよりはイタリア料理にしたくなるのかもしれません。
ただし、イタリア料理とインド料理の相性が悪いわけではありません。特に日本人は現地の料理をアレンジすることに長けている民族。そもそもスパゲッティのナポリタンはイタリア料理風の日本料理ですし、カレーもインドの料理とは別物として成り立った経緯もあります。
そして日本のカレー界は今、自由で新しいカレーが続々と生まれている状況。中華とカレーの融合は既にかなりのお店で試みていますし、フレンチとインド料理を融合させた「モダンインディアン」と呼ばれる料理を出すお店も全国的に少しずつ登場してきています。そんな中、イタリアンとスパイスカレーを融合させた面白いお店が東京・高円寺にできました。9/3に開店した「スパイスカレーMANTRA(マントラ)」です。
注文したのは「カレー3種盛り+8種トッピング」1,380円。カレーは「チキンカレー」「キーマカレー」「ポークカレー」の3種。それぞれ王道のスパイスカレーと言いますか、一般受けする方向性。初心者向けでもあり、逆に言うと毎日のようにカレーを食べているマニアには少し物足りなくも感じる味かもしれません。しかし、そこに隠れた大いなる可能性を感じたのです。

その可能性が現れているのが個性的な副菜の数々。赤玉葱はイタリアのピクルス的な料理である「アグロドルチェ」に。ブロッコリーはパスタにもよく使われるアンチョビと一緒にマリネ。うずらの卵はイタリアの特産品であるバルサミコ酢でピクルスに。そしてゼッポリーネというピザ生地を揚げたものがあしらわれるというイタリア三昧。

これらの副菜がどれもおいしく、基本的にピクルス系が多いのですが、酸味の方向性が微妙に違うので食べ比べるのも面白いですし、混ぜ合わせて食べることによってシンプルなカレーを引き立てて味の隙間を見事に埋めていました。これは計算されているなぁと感心。中でも驚いたのは桃みたいなトマトピクルス。本当に桃のような甘さで、ひときわ存在感を放っています。

マスターは若きイケメン。学生時代からカレーのお店を営むことを夢見ていたそうですが、イタリア料理店で修行し、カレーは独学で身につけたとのこと。一見まわり道にも思えるイタリア料理での経験があったからこそこのカレーが生まれたのですね。
トッピングは季節ごとに変えていく予定だそうです。カレーも進化していきそうなポテンシャルを感じ、今後面白くなっていきそうなお店だと思っています。高円寺がさらにカレーで盛り上がってきました!
※価格は税込
【第3週のカレー・特別編】本場さながらのカレーが食べたい! 東京で行くべき北インド料理店はここ
実は、仕事でインドに来ています。そこで今回は「今週のカレー特別編」ということで、いつもとは違う形でおすすめのお店をご紹介したいと思います。

ところで、「日本におけるインドカレーに見えるものの多くは、実はネパール人(その他バングラデシュ人やパキスタン人など)によるインド風カレーであり、本格的なインドカレーとは別物だ」などといわれることが多いのはご存じでしょうか。
そんなこともあってか、インドネパール系のお店は略して「インネパ」と呼ばれ、カレーマニアから敬遠されることもあります。個人的には、インネパにはインネパならではの良さがあると常々思っており、いわゆるインネパ店にも好きなお店は沢山あるのですが、それがインド料理かと問われると確かに違うものだとも感じています。
では、日本・東京で本格的なと言いますか、インド現地で食べる味に近いお店はどこなのか。色々とあるのですが、今回僕は北インドに滞在しているので、北インド系のお店を2店ご紹介いたしましょう。
西葛西「デリーダバ」

まずはインド人居住者が多いことで知られ、日本のインド人街ともいわれる西葛西にあるお店デリーダバ。こちらは現地でファストフード的によく食べられている野菜カレーとパンがセットになった「パオバジ」や、揚げパンとひよこ豆煮込みがセットになった北インドの朝食の定番「チョーレバトゥーレ」などの軽食が充実しており、現地そのままのおいしさです。近隣に滞在しているインド人向けのお店だからこそ、日本人向けにアレンジされていない味を堪能できるお店です。
赤羽「バーワルチー」

僕が北インド系で一番好きなお店がこちら。マスターはインドの頑固オヤジ(褒め言葉)なのですが、だからこそのこだわりで現地の味を忠実に再現しています。ランチのセットもおいしいのですが、是非夜のアラカルトから頼んでほしいですね。一味違うおいしさですから。マナーに厳しい方ですが、マナーさえ守っていればとても温かい方。ここで食べればインド料理への理解度が深まると思います。

今僕はインドにいるのですが、高級店から庶民的なお店まで様々な場所でカレーを食べています。インド料理を食べ慣れていない日本人にはスパイスや油が強すぎると思うものもありますが、そのままでも十分においしいものもあります。「カレー」とひと括りにしてしまうからこそ、色々な誤解が生まれるのでしょう。

本格的なインド料理店に行ったなら、是非名前に「カレー」とついていない「カレー」を食べてみてくださいね。それがどんなメニューなのか、お店の人に聞くのも楽しいものですよ。
【第4週のカレー】行列ができる前に食べておきたい! 注目の間借りカレー新店がオープン
夕方以降営業開始のバーなどの飲食店の空き時間を利用してカレー店を営業する「間借りカレー」もすっかり定着してきました。開業資金が少なくて済むという利点もあり、今までよりもお店を始めるチャンスが増えたのは喜ばしいこと。
しかし同時に曖昧な部分もあり、そのあたりは間借り営業をする方たちにはくれぐれも気を付けてほしい部分だったりもするのですが、大手企業もこの間借り業態に参戦することによって、そのあたりの問題もしっかりと解決したお店も出てきています。
軒先株式会社と吉野家ホールディングスが共同で手掛ける「軒先レストラン」というサービスを利用し、飯田橋のイタリアンのお店で間借りカレーをスタートさせた「極哩」は、大手企業の協力のもと、正々堂々と9月より営業開始したお店なので、ホスピタリティの面でも安心です。
お店はなかなかの広さ。間借りカレーとなると狭いお店で一人で切り盛りというイメージが強いのですが、こちらは従業員も3名。気合のほどがうかがえます。
ビーフカレーを中心として日替わりカレーもあるメニュー構成。全部のせ的な「極 the WORLD」1,800円も一日5食限定であるということで、こちらをいただくことにしました。
ビーフと、この日の日替わりのスパイシートマトクリームカレー、ご飯の上にはキーマ。まわりに色とりどりの副菜。見た目はスパイスカレーに見える華やかなルックスですが、食べてみると違うことに気づきます。甘味や旨味が味の中心となっている個性的なカレー。
欧風カレーの進化系とも言えますし、欧風カレーとはまったく違ったカレーとも言えます。何かにつけてジャンル分けしたがる日本人ですが、ここのカレーはジャンル関係なく「とにかくおいしいカレー」ということで良いのではないでしょうか。それぞれのカレーが重なり合い、おいしさの体積を増していくような感覚。カレーの世界が広がっていき、まさにTHE WORLD! 食べた瞬間においしくて時が止まる。そしてそのおいしさを理解すると、止まった時がまた動き出すッ!

マスターは、カレー作りにハマり、スパイスの使用量を1gずつ変えていったり、投入するタイミングを変えたり、寝かせる時間を変えたりと、とにかくほんの少しずつの変化で味がどう変わっていくのかを科学実験のように繰り返していき、カレーの研究に没頭すること3年。ようやく多くの人が「おいしい」と言ってくれるカレーができたということで、こちらのお店を始めたのだそうです。
確かにその情熱を感じられる味。流行にとらわれることなく、おいしいものを追求した結果が味に表れています。そしてその成果が既に見えはじめており、ランチタイムど真ん中となると、なかなか広い店内が満席となる人気ぶりです。これからさらに成長していきそうなお店。行列店となる可能性も大いに秘めています。今のうちから行っておくべき、注目の新店ですよ!
※価格は税込
文・写真:カレーおじさん\(^o^)/