ファッション誌『mina』や『SPRiNG』などで活躍するモデルでありながら、豪快な飲み方がなんとも男らしい! お酒好きを公言するモデル・村田倫子が、気になる飲み屋をパトロールする連載。

 

「同世代の人にもっと外食、外飲みを楽しんで欲しい!」と願いを込めてお送りする連載18回目は、東京・日本橋浜町の「富士屋本店 日本橋浜町」をパトロールします。

呑み屋パトロール vol.18「一軒家ビストロで海と山の幸をとことん堪能の巻」

この呑み屋連載、ただただ私の行きたい店を自身でピックアップして訪れているのだが、ちゃんと毎月やんわりとテーマを決めている。今月は「おいしくお得にたーんとフレンチ&イタリアンを堪能したい」だ。

 

「お得に」。これが割と鍵である。諭吉の大軍をえいさっと率いて行けば、絶品の一皿にありつけるのは百も承知。だからこそ、わがまま胃袋を満たし、かつ、お財布にも優しい……そんな素敵なお店を見つけたい。

都営新宿線「浜町」駅から歩くこと数分、軒先に浮かび上がるキュートなネオン。「富士屋本店 日本橋浜町」。今宵のターゲットである。

 

ミントグリーンの壁に、中央のキッチンをコの字に囲うカウンター、創意的なラインアップのメニューが連なる黒板……。1階は、洒落た角打ちスペースとなっている。

ゆったりトークを楽しみたいときは2階のテーブル席、心地よい夜風に吹かれながらくいっとビールを、なんてときには3階のテラス席が吉。様々な用途に順応するマルチな造りだ。

イタリア、南仏、日本、スペイン……と世界各国から取り寄せたバリエーション豊かなワインリスト。まずは、少し濁りのあるスペインの白ワイン「イロオトロ タンビエン」700円にて乾杯。

「イロオトロ タンビエン」

そして、「これ、可愛いのでぜひ!」と店長からレコメンドされたのは「鶏レバームース」300円。

「鶏レバームース」

小ぶりなコーンの中にアイスクリームかのごとく“キュッ”とつまったレバーのムースが愛おしい。思わずiPhoneのカメラを起動させたくなる。

 

お次は海の幸、「アジの軽いマリネとブーランジェリージャンゴのパン」300円。淡路島産の艶の良いアジを、フェンネルの花とドライトマトであしらった上品な一皿。ご近所の人気パン屋「ブーランジェリージャンゴ」のバゲットを使用しており、素材選びにはどこまでも抜かりない。

「アジの軽いマリネとブーランジェリージャンゴのパン」

みずみずしく弾ける肉厚な身、そこに加わるフィノッキオ(フェンネルの鱗茎)の爽やかな食感。「ぷりっ、シャキッ、バリバリ」と愉快な音のハーモニーが味覚をより楽しませる。海鮮がおいしい店は信頼できるぞ。

 

ここでまたハードルが上がった矢先、香ばしいにおいと共に卓上をどーんと占領したのは本日のメイン「天然真鯛のパイ焼き」1,450円。

「天然真鯛のパイ焼き」

愛らしい見かけのお魚のパイ。バター香るサクサクの生地から覗くのは、真鯛とホタテのムース、ほうれん草、マッシュルーム。真鯛のだしでとった旨味たっぷりのトマトのソースを絡めて召し上がれ。

 

ねえ、これで1,450円よ? ありえない、ありがとう、だいすき。

お次に控えているメイン(肉)に備えて、南アフリカ産の赤ワイン「ボッシェンダル ラローヌ」700円を。濃いカシスの旨味とスパイシーな香りがたまらない。

「ボッシェンダル ラローヌ」

さぁ、やってきましたよ。「鴨のハンバーグとフォアグラ」1,600円。

「鴨のハンバーグとフォアグラ」

ぬらっと輝く光沢をまとい、わがもの顔で頂点に君臨するフォアグラ。美しい赤みの鴨の胸肉、最下部からも圧倒的な存在感を放つハンバーグ。あぁ……なんてファビュラスな見た目。

 

「ハンバーグは、合挽き肉なんですか?」

 

「こちらはすべて鴨肉です」

 

……なんて濃厚で贅沢な味わいなのだ。

厳選された素材の個々の戦闘力が束になり、三銃士となって向かってこられたら、もう一撃でノックアウトだよ……。今夜、私は鴨の本気を目の当たりにしている。すごいぞ鴨さん。

 

ここまでコスパが高いと、デザートも……とつい欲が出る。ということで、チョイスしたのは「バスク風チーズケーキ」750円。

「バスク風チーズケーキ」

表面を高温で焼き、キャラメリゼした香ばしさと黒っぽい見た目が特徴的な、巷で話題のバスク風チーズケーキ。クリーミーで濃厚なチーズに、ほのかな甘み。食事の〆にも、ワインにも相性が良さそう。

 

どのメニューをとっても、味、見栄え、値段に妥協がない。一皿への真摯な姿勢に頭が下がる贅沢アラカルトな夜。

実はこの店舗、街の復興事業として建てられたのだそう。「もっとこの街の魅力が多くの人に伝わるように」と、地元の愛に支えられた場所なのだ。おいしい食べ物に誘われ、はじめて足を踏み入れた浜町。これは、まんまと虜になったぞ……。

 

※価格はすべて税込

 

文:村田倫子