【噂の新店】Bistrot tercera

フランス料理好きなら「銀座レカン」「渡辺料理店」出身と聞けば、その店に行かずにはいられない! そこで出会うのはどちらとも違うが、一口で惚れてしまう料理。いつでも気軽に立ち寄ってもらいたいと予約で満席にしない、うれしい配慮のあるビストロが人形町にオープンしました。

人形町のオアシス的存在となるビストロが誕生!

スペイン語で3番目という意味の店名

昨年秋、東京の食のメッカ、人形町に「銀座レカン」「渡辺料理店」出身のシェフの店がオープンするらしいと食業界やフーディーたちの話題が集中、オープンするやいなや予約困難店となった「Bistrot tercera」。一人で1階と2階の料理を作るのはさぞかし大変なことなのでは?と聞くと「働いた2つの店がすごすぎたので、全然余裕です」と当の田島優己シェフはどこ吹く風。

メニューは壁掛け

こちらは好きなものを好きなだけのアラカルトスタイル。季節感を第一に考え、産地直送の食材を使った料理は、どれもワインと合わせたくなります。「まずは『シャリュキュトリ盛り合わせ』とワインで、何を食べようかゆっくり考えていただけたら」と田島さん。

田島優己シェフ

学生時代にアルバイトで入った「銀座レカン」にそのまま就職した田島さん。3年経った頃にコロナ禍でレストランの在り方を考えさせられ、フリーランスで出張料理人となりました。さまざまなシチュエーションで料理をするという経験を積み1年ほど経った頃、「銀座レカン」のシェフだった渡邉幸司氏と再会。「渡辺料理店」の立ち上げからスーシェフとして活躍し、2025年9月「Bistrot tercera」のシェフに就きました。

2階フロアー

できるだけ自分の力でと自ら塗装した壁やカウンターは、年月が経ったような落ち着いた色調。やわらかで温かみのある照明にも癒やされます。人形町の街並みにしっくりくる、ほんわかした雰囲気の心和む空間です。

奇を衒わずにじんわりとおいしさが後を引く料理

「シャリュキュトリ盛り合わせ」(4,400円)※単品は各1,300円

田島さんのおすすめに従って「シャリュキュトリ盛り合わせ」とワインでスタート。島根県で出会い脂の甘みと力強い肉質に惚れ込んだという「石見ポーク」。「石見ポークリエット(写真右上)」は、脂が溶けてねっとりとしながらも肉の繊維が感じられ、「石見ポークハム(写真右下)」は舌の上で溶ける脂の甘さがたまりません。時間が経つごとに甘みが増す「石見ポークパテ(写真左上)」はワインとともに味の変化を楽しみたい。出色は「鶏レバーテリーヌ(写真左下)」。このきめの細かさとなめらかさは唯一無二です。「ミキサーで回さずひたすら裏漉ししています」と田島さん。かけた時間と手間は嘘をつきません。

「肉厚椎茸と金柑 ウォッシュチーズ焼き 菊芋のヴルーテ」(2P 2,500円)

椎茸を器にした料理を作りたいという発想から、オレンジ色の果物とウォッシュチーズと合わせ、下には土の香りのするものを……とできあがったのがこちら。鮑のような食感の椎茸と金柑の甘みを包んだ熱々のとろけたチーズが一体となって喉を通ると、その後にふんわりと菊芋の香りが残ります。そこにワインを一口。言葉にはできない至福の瞬間です。

「近江鴨のカスレ」(5,500円)

具材はオーソドックスに近江鴨のコンフィ、ベーコン、メルゲーズ、白インゲンですが、味は伝統的なものとは違い軽い仕上がり。「カスレって肉たっぷりでかなりギルティな料理。アラカルトで数皿召し上がるならば、味付けは軽めが良いと思いフレッシュなトマトで煮込みました」と田島さん。

2人でシェアするのがちょうどいいサイズ

溶けた脂をかけながら焼き、ゆっくりと煮込んだ近江鴨のパリッとした皮とやわらかくホロホロと解ける身に陶酔します。骨太な味わいのベーコンと羊肉の風味豊かなメルゲーズはトマトの酸味がマリアージュしてコクは深いけれど後味は爽やか。あえて小粒を選んだ白インゲン豆の食感も心地よい!

「穴子フリット」(3,500円)

肉厚で大振りの穴子はベニエ生地で仕立て、揚げてから炭火で焼くとふっくらサクサクの食感に。炭火で焼くことで余分な油が落ち、あがった煙で炭の香りを纏わせます。ポルト酒とグリーンペッパーで甘辛味に仕上げたソースをかけたフリットは、穴子の握り寿司を思わせます。ビネグレットを和えたサラダには山椒を振りかけて、ピリリと味のアクセントに。和の要素をふんだんに取り入れているのにしっかりとフランス料理に着地させる田島さんの技術と舌のセンスが織りなす高感度な一皿です。

圧倒的な技術を持つ若きシェフが伝統料理に新たな感覚を纏わせる!

「オリジナルスタウト(写真左)」と「オリジナルIPA(写真右)」(各1,200円)

食事に合わせられるビールをと、島根で出会ったビール工房で造ってもらったというオリジナルのビール。「オリジナルスタウト」はコーヒーを加えたちょっぴりビターな味わいでスイーツにもいい! 一方の「オリジナルIPA」は甘夏を入れた爽やかな風味。こちらは“乾杯ビール”にも。

「焼く」「揚げる」など、田島さんの技術の高さに圧倒されます

田島さんの舌のセンスに裏打ちされた組み合わせの妙に尽きる一皿、食材のポテンシャルに優しく寄り添った一皿と、クラシックがベースではあるけれど違った角度からアプローチした料理の数々は、“また食べたい!”と思わせます。「今は作りたいものを作ってアラカルトで提供し、選ぶ楽しさを味わってもらうスタイルが、食への関心が高い人々が訪れる人形町という街に溶け込むのでは」と話す田島さん。素材をリスペクトして生まれる新感覚のビストロ料理は世代を問わず多くの人に愛されていくのです。

※価格は全て税込

食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
https://www.instagram.com/tabelog/

文:高橋綾子 写真:松園多聞