【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレー#72】「ロストコーナー 」

「ロストコーナーには2種類の意味があって、ひとつは忘れられた土地、もうひとつは遺失物保管所です。そこに行けば忘れてきたものがある。またはそこからだからこそ希望が生まれる。また片隅でもいいから細々とでも続けていけたらという意味もこめて屋号にさせ​てもらいました」(以上メニューから抜粋)​

そんな思いを込められたロストコーナーというお店。店内に入ってみればマスターの好きなもので溢れかえった自由な空間となってい​ます。メニューももちろんマスターの大好きなカレーとお菓子。​

元々は運送業についていたマスター。同居しているお母様のために料理を作るのが日課となっていて、色々なものを作っていく中でお菓​子にハマり、パティシエの学校へ行って資格を取るまでに。

 

駄菓子屋のようなものがやりたいと考えていたそうですが、それだと場所​柄も考えると商売にならないなと諦めていたところに、とあるラーメン屋で出会ったカレーに魅せられ、本を買って独学でカレーを学​び、食べ歩き、そしてまた本を買って色々と作っていくうちにカレー作りを身に着けたそうです。​

 

「カレーとお菓子なら商売になるかもしれない! そう思ってこのお店を始めたんです」そう照れ臭そうに語ってくれました。​

カレーは、いわゆるスパイスカレー。マスターは「大阪の名店の足元にも及ばないので、スパイスカレーかといわれるとそのレベルに達して​いるとは思えないのですが……」と謙遜していましたが、お世辞抜きに大阪の名店にも負けないおいしさです。​

 

この日にいただいたのは看板メニューの「ポークビンダルー」と日替わりメニューから「にぼしポークキーマ」をあいがけで。ご飯は小にする​と100円引きというサービスもあり、合計1,100円でした。​

ポークビンダルーとは、インド・ゴア地方の名物料理で、ビネガーを使って漬け込んだ豚肉を使うため、酸味が特徴のカレーです。スパイ​スカレーのお店では定番メニューとなっていますが、こちらのポークビンダルーは酸味や辛味よりも旨味がしっかりと主役になった奥深い味わい。重すぎない仕上がりがちょうど良い塩梅でとてもおいしいです。​

 

そして、にぼしポークキーマ。こちらは煮干しを使ったキーマなのですが、煮干し自体が持つ苦味を逆にスパイス的に使用することによ​っておいしさが上がっているオリジナルカレー。食感の変化も計算されており、紫玉ねぎの「シャク」、天かすの「サク」、挽肉の「​ムギュ」っとした食感が合わさることによっておいしさの体積が広がっていました。このあたりの感覚が実にスパイスカレー的。​

 

ご飯は、ギー(インド料理で使われるバターオイル)と一緒に炊き上げることによってほんのりと感じる甘味が加わり、それがカレーの​おいしさを引き立てていますし、副菜も工夫があって実に良い感じ。全体的に完成度が高いです。​

デザートとドリンクのセットが300円で食べられるということで、「スパイスのパウンドケーキ」と「アイスコーヒー」のセットを食後に追加。こ​のケーキはラムレーズン的な風味にはちみつの甘さやスパイスの香りも加わって、ゆっくりと味わいたいおいしさ。思わず目を閉じて​しまうような幸せな味わいでした。​

 

好きこそものの上手なれとはよく言いますが、こちらのマスターはまさにそのタイプ。自分の好きなものを、好きだからこそ手を抜か​ず気持ちを込めて作っているからこれだけおいしいものが作れるのでしょう。​

 

店内には様々な「好き」が溢れた幸せな空間です。きっとあなたの「好き」も見つかるでしょうし、見つからなかったとしてもマスタ​ーの「好き」のどれかが、同じように「好き」になれるような、そんな素敵なお店。​

 

全国的に広がるスパイスカレーの波。静岡ならではの独自の波の立ち方が心地よく、またその波に乗りに行きたいです。

 

※価格はすべて税込

 

取材・文・写真:カレーおじさん\(^o^)/