毎日でも食べたくなる! とことん優しく沁み渡る味わいの参鶏湯

韓国調理技能検定一級の資格を女性で初めて取得し、韓国の宮廷料理専門店「三清閣」で副料理長を務めた朴三淳(パクサンスン)さんが独立開業したのが、大阪で人気の韓国宮廷料理「韓味一」。その姉妹店、「韓国食堂 入ル 坂上ル」が恵比寿に誕生しました。大きな丸鶏が入った自慢の参鶏湯はどこまでも優しく、五臓六腑に沁み渡ります。

高麗人参、棗、ニンニク、水だけで鶏肉を炊く参鶏湯は、体に悪いものは一切ナシの安心安全食。

 

韓国ではテーブルに置いてある調味料で各々の器の中で好みの味を作るというのが基本。ですがこちらでは高麗人参、棗、にんにく、水で鶏肉を炊いた出汁に塩胡椒で味をととのえ最後にネギとクコの実を散らし、スープそのものをおいしく仕上げています。たくさん米を食べてほしいとの想いから鶏肉の中にはもち米だけしか詰めません。

スタッフが鶏肉を崩すと中からたっぷりのもち米が現れ、ほぐしながら混ぜればとろみがとろんとついた雑炊に。早く食べたくてウズウズします。

 

鶏肉は二度炊いてとてもやわらかくなるまで煮込んでいるので、骨も簡単に外れてホロホロとほぐれます。少しだけ白濁したスープはもち米と混ざることでとろみがつき、うまみを逃すことなくいただけます。

「韓味一の参鶏湯」(一人前1,600円、二人前より)の完成です。創業40年の老舗の味、ご賞味あれ!

 

なんて優しく体の中に沁み入ってくるのでしょうか。毎日でも食べたい!と思わせる味わいに心もとろけてしまいそう。

日本ではなかなかお目にかかれない、新鮮なワタリガニのヤンニョムケジャン

生のワタリガニを調味液に漬け込んで作る韓国料理「ケジャン」。聞いたことのある人も多いと思いますが、醤油ベースのタレに漬けた「カンジャンケジャン」と唐辛子ベースの甘辛タレに漬けた「ヤンニョムケジャン」の2種類あるってご存じですか? こちらのお店で参鶏湯と並ぶ人気メニューが「ヤンニョムケジャン」です。

「ヤムニョムケジャン」の中には蟹味噌がたっぷり!

 

まず、唐辛子、醤油、ごま油、砂糖、塩、生姜、玉ねぎでヤンニョム(薬味の合わせ調味料)を作り、ワタリガニを漬けます。ポイントはニンニクを使わないこと、生きているワタリガニを使うこと。東京で活きワタリガニを安定して仕入れるのはなかなか至難の業だそうで、お抱えの業者さんに専用の生簀を置かせてもらい、捕れたらその中で泳がせているとのこと。人気メニューなだけに売り切れてしまうことも。

 

漬けるのは1日か2日間。1日目はカニ本来の味を、2日目はタレに馴染んだカニの味を楽しめます。好みも分かれるそうで日を狙って予約するツウもいらっしゃるそう。11月から3月までは内子をもつメスが多く、4月から10月までは身がおいしいオスが出回ります。

 

甘辛味のワタリガニは臭みなど微塵もなく甘くてやわらかくて最っ高においしい。これを食べたら新鮮なワタリガニしか食べられなくなります。

伝統ある味を継承し、夢は参鶏湯を世界へ!

ソンマッコリとは手作りのマッコリという意味。東京で扱っているのはまだ数軒だそう。

 

韓国料理に欠かせないのがマッコリ。この「ボクスン・ドガ」のソンマッコリは、別名「シャンパンマッコリ」と呼ばれ韓国でも大人気の品。蔵元の麹が独特なので、生きている酵母から発生する天然の炭酸がいっぱい。アルコール度数も6.5%と低めなので、お酒が苦手な人も意外に飲めてしまいます。さらに食物繊維とビタミンBが豊富だなんて聞けば、なんとなく体に良さそうな気もして、何本でも飲んでしまう! ですが、麹を作れる量が限定されているため日本に出荷される数が少数。こちらのお店でも入荷しない日もあるそうです。予約の時には必ずマッコリもキープして!

 

「恵比寿駅から坂を上るからこの店名にした」と話すのは店主の山崎一さん。実は朴さんの息子さんです。レシピは朴さんが1960〜1970年頃に作っていた韓国の伝統料理ですが、山崎さんが物心ついた時から母親の作る料理を自分の目と舌と手で覚えた味。「味を正しく伝えるため、どんな些細な手順でもすべて同じにして実践している」というからすごい。

お店の居心地がいいのは山崎さんの笑顔とトークがあるから。

 

東京にお店を出そうと思ったのはなぜかと訊くと……。開業した時から「参鶏湯を世界へ!」というスローガンの下、スタッフ一丸となって頑張っているが、認知度はまだまだ。そうなればやはり狙うは東京だ、と出店を決めたそう。ちなみに知名度のライバルとしているのは「ティラミス」だとか。

 

そんなユーモアを交える山崎さんですが、一番の願いは、こんなにもおいしい母親の料理や韓国料理のことを知ってもらうこと。だからこそ、本場韓国との提供の仕方が違う部分や、味つけの秘密などもじっくり話してくれます。山崎さんのトークもお店の魅力のひとつなのです。

 

薬膳料理である参鶏湯は、韓国では夏を代表する料理。滋養強壮に効果があるとされ土用の丑の日に食べるそう。ケジャンもオスがおいしい季節になってきます。韓国一流料理人の味を存分に堪能し、体の中から元気になりましょう!

取材・文/高橋綾子

撮影/三好宣弘(RELATION)