『料理通信』の編集者である君島佐和子さんが今までに出合った、思い出のモンブランを紹介した短期集中連載、「モンブランの履歴書」に登場したモンブランをプレイバック。

君島佐和子(きみじま・さわこ)

 

栃木県生まれ。早稲田大学第一文学部演劇専攻卒。株式会社パルコ、フリーライターを経て、1995年『料理王国』編集部へ。2002年より編集長を務める。2006年6月、国内外の食の最前線の情報を独自の視点で提示するクリエイティブフードマガジン『料理通信』を創刊。編集長を経て、2017年7月から編集主幹に。辻静雄食文化賞専門技術者賞の選考委員。日経新聞の日曜朝刊「NIKKEI The STYLE」に寄稿。デザイン専門誌『AXIS』、マガジンハウス『アンド プレミアム』でコラムを連載。著書に『外食2.0』(朝日出版社)。

1. 君島さん絶賛! 一口食べれば幸せになれるメレンゲの技

アンプリル「綾瀬モンブラン」|綾瀬

秋から3月頃までの限定販売。注文後にメレンゲとクリームを組み合わせて仕上げる。(550円)

君島さんがモンブランを語る上で外せないお店が、西八王子にあったフランス菓子店「ア・ポワン」。和栗のモンブランの先駆けとなったこちらの店の味は、「日本の栗の味と香りが鼻腔を、そして脳天を直撃」するほどの衝撃だったという。残念ながら2012年に閉店してしまったものの、名品の味を継承しているお弟子さんのお店が2軒あり、1軒目が綾瀬にある岡田峰幸さんがシェフを務める「アンプリル」だ。

 

君島さんがモンブランで重要視するのは“メレンゲ”だそう。メレンゲ菓子が評判のお店だった「ア・ポワン」の技が伝承されており、泡をたっぷりと含ませた卵白を、低温でじっくり3時間半ほどかけて焼き上げるこのお店のメレンゲは、カラメルのように、歯で噛むとカリッとした感覚があるが、次の瞬間ふわっと綿あめのように溶けてなくなるのが特徴。

 

注文後にメレンゲとクリームを組み合わせて仕上げる「綾瀬モンブラン」。食べる時はメレンゲの食感を十分に堪能したい!

 

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>>〈モンブランの履歴書〉『料理通信』君島佐和子さん編/Vol.1-1

 

 

2. 賞味期限はたったの2時間! 一番おいしい時間をあなただけに

オ・プティ・マタン「モンブラン」|金沢文庫

600円。ホールタイプは、12cm:3,300円、15cm:4,300円、18cm:5,300円がある。

もう1軒、君島さんが衝撃を受けたモンブラン「ア・ポワン」の名品の味を継承するお店が、神奈川県の金沢文庫にある武井晴峰さんがシェフを務める「オ・プティ・マタン」だ。こちらのモンブランはなんと注文が入ってからシェフ自らマロンクリームを絞り出し仕上げる。そして賞味期限はたったの2時間というから驚き!

 

メレンゲは、「ア・ポワン」の基本を守りながらも、もっとも粒子の細かい砂糖を使うことで、より軽く、すっと溶けるような口どけに。和栗は熊本県山鹿市の農園に特注した栗を、無糖の生クリームは北海道浜中町の乳を使用し、卵は竹炭を混ぜた飼料で育てられている鶏が産んだものを宮城から取り寄せている。シェフがこだわり抜いた和栗・メレンゲ・生クリームを、最高のバランスで味わえる。

 

伝統を守りつつも革新を続ける「オ・プティ・マタン」のモンブランをぜひ味わって。

 

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>>〈モンブランの履歴書〉『料理通信』君島佐和子さん編/Vol.1-2

 

3. 目の前にそびえ立つ、濃厚な生クリームとマロンクリーム

ラトリエ モトゾー「モンテビアンコ」|目黒

750円。通年商品。

君島さんが中学生の頃に憧れたのが、新聞の記事を読んで存在を知ったイタリア版のモンブラン。そして幼心に食べたいと切望していたその夢を叶えてくれたのが、目黒にある藤田統三さんがシェフを務める「ラトリエ モトゾー」のモンテビアンコだ。

 

イタリア製モンブランの特徴でもある、そぼろ状のマロンクリームの上に、キリっとそびえ立つホイップクリーム。美しく洗練された姿に「“やっぱり、これぞモンブランだよなぁ”って、惚れ惚れします。ブレンドした栗のクリームの味わいも、ココアを利かせたメレンゲも、ちょっと大人な印象。姿だけじゃない、モンブランの味わいの表現の広がりにも心動かされました」と君島さん。

 

君島さんが憧れた、藤田シェフの創り出す美しい「モンテビアンコ」を食べにぜひ足を運んでみて。

 

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>>〈モンブランの履歴書〉『料理通信』君島佐和子さん編/Vol.2

 

 

写真:山下みどり