「『フォカッチャ・ディ・レッコ』って聞いたことありますか? フォカッチャと言えば多くの人がふわっとしたパンのようなものを想像するでしょう。ところが、世の中にはあるんです。それとは違うめちゃくちゃ美味しいフォカッチャが!」

 

そう興奮気味に語るのは、フードパブリシストの高橋綾子さん。ひと口食べて、その魅力に開眼した高橋さんが、この秋誕生したフォカッチャ・ディ・レッコ専門店についてレポートしてくれました。

パンでも、ピッツァでもない!それがフォカッチャ・ディ・レッコ

こんがり焼けた「フォカッチャ・ディ・レッコ」

 

こちらがその「フォカッチャ・ディ・レッコ」。見た目はピッツァですが、ピッツァとは似て非なるもの。生地の製法がまったく異なる、イタリアはリグーリアレッコ村の伝統料理です。

2枚の極薄の生地の間にはストラッキーノチーズがたっぷり

 

どんなものかと言うと、イタリアの小麦粉で作った生地に「ストラッキーノチーズ」をはさんで作る、極薄のフォカッチャです。生地にイースト菌が入っていないので、発酵していないのが特徴。お腹が膨れないので、大きくてもサラリと完食できてしまいます。

 

現地では「フォカッチェリア」というフォカッチャ専門店が軒を連ね、人々は毎日美味しいフォカッチャをめがけて食べに行くのです。

20年越しの夢のフォカッチェリアがオープン!

世界にひとつしかない特注の鹿のオブジェと一緒に写真を撮る人が続出

 

話題の日本橋高島屋S.C.にオープンした「フォカッチェリア ラ ブリアンツァ」は、日本では珍しいフォカッチャ・ディ・レッコ専門店です。落ち着いた雰囲気の店内はオシャレ度が抜群。テーブルの配置もゆったりとしており、奥に個室もあるのでお祝い事やビジネスシーンにも利用できます。

 

この店をオープンさせたのは、食のプロや著名人がプライベートで訪れる六本木「ラ ブリアンツァ」のオーナーシェフ奥野義幸さん。イタリアでの修業時代に小さなレッコ村で「フォカッチャ・ディ・レッコ」と出逢い、あまりの美味しさに事あるごとに食べに行っていたそう。

 

レッコ村の人々に愛され受け継がれてきたこの郷土料理は、奥野シェフにとっても修業時代を支えてくれた大切な料理となりました。そして、いつかシェフになったら日本でフォカッチェリアを出す、という夢を20年かけて、やっと叶えることができたのです。

驚くほどシンプルなのに、忘れられなくなる味

料理長の若林 純さん

 

いたってシンプル、なのにとっても美味しいフォカッチャ・ディ・レッコ。今回は、その製法を料理長の若林 純さんに教えていただきました。

生地をしっかりと伸ばします。イースト菌が入っていないので伸びにくいのが特徴

 

作り方の秘密は、何でも特別な生地とチーズにあるんだとか。同店ではイタリアの小麦粉「ゼロゼロ粉」100%に、リグーリア州のエストラバージンオリーブオイル、塩、水を10分ほど練って生地を作っています。

透けるほど伸ばされた生地がサクサクとした食感の秘密

 

まずは生地作りから。これで35cmの2人前用です。透けるくらいに薄く伸ばします。

 

イタリアで特注したフォカッチャ専用の台に生地をのせ、その上にストラッキーノチーズを置きます。次にパルミジャーノチーズをふりかけ、オリーブオイルと生クリームをベースにした特製ソースをまわしかけます。

まずは1段目から

 

通常チーズは、レッコ産のクリーミーなストラッキーノチーズを使用しますが、オプションとして日本が誇る放牧酪農とチーズの工房である岡山県「吉田牧場」が同店のためだけに作る「ストラッキーノチーズ」(35cm 1,600円・税別。サイズにより価格は異なる)に変更することもできます。力強く酸味のある吉田牧場のストラッキーノチーズが食べられるのは、ここだけです!

しっかりテンションをかけて、穴を空けていきます

 

もう一枚の生地を上からかぶせ、穴を空けます。

さらに、上の生地にも同じようにチーズをのせてオイルとソースをかけます。麺棒で周りをゴリゴリと転がし、余分な生地をカットして、いざオーブンへ。

チーズを贅沢に重ねたら、オーブンへ!

 

待つこと約5分。チーズはほどよく溶け、生地はパリッとしながらしっとりと焼きあがります。上と下の生地がくっつき、チーズを二枚の生地でサンド。グツグツ、ジュウジュウとチーズが“美味しい音”を奏でます!

鮮やかなグリーンが食欲をそそります

 

こちらは、ハーフ&ハーフで一番人気のポモドーロとペスト ジェノベーゼ。このソースの鮮やかな色を出すにも秘訣があるそうな! チーズはストラッキーノの他にゴルゴンゾーラも入って味わい豊かです。

 

すべてはストラッキーノチーズを美味しく食べてもらうために、最高の生地を作る。まさにチーズのための料理なのです。

食べ過ぎ注意!ビュッフェの誘惑

店内に入ると大きいテーブルの上に美味しそうな料理がずらり! 反対側にはフレッシュな野菜を使ったサラダが並びます

 

このフォカッチャは単品でもオーダーできますが、メインメニューは「大きいテーブル食べ放題&はじめのフォカッチャ・ディ・レッコ」3,800円(税別)です。

 

一品一品が美味しく、食べ放題なのでつい食べすぎてしまいそうになるのですが、主役のフォカッチャのために最初はサラダなどを少しだけ取って、フォカッチャを食べ終えた後にビュッフェを思う存分楽しむことをおすすめします。

 

奥野シェフの20年間の想いが詰まったフォカッチャ・ディ・レッコ。一度食べたらやみつき必至です。フォカッチャといえば、こちらが主流になる日も近いかも?!

 

写真:石渡 朋
取材・文:高橋綾子