池袋の雑居ビルをると、そこはホームズの隠れ家でした


「もしも、現代の東京にシャーロック・ホームズの家があったなら?」

 

2018年8月にオープンした「Sherlock House(シャーロックハウス)」は、そんな夢のようなコンセプトを実現したお店です。

 

池袋東口から徒歩4分、繁華街の“いかにも日本的な雑居ビル”に入ってエレベーターで5階までれば、そこはもう別空間。ブロンズでできたほの暗いトンネルが、シャーロック・ホームズの世界へ導いてくれます。

 

店内はベーカー街221Bにあるホームズの事務所や趣味だったバイオリンの写真、また、鹿のハンティングトロフィーや骸骨といったシャーロック・ホームズおなじみのモチーフで溢れ、まさに東京にあるホームズの隠れ家に招かれたような気分に。

 

小説や映画などで親しんだシャーロック・ホームズの世界そのものの雰囲気には、シャーロキアン(シャーロック・ホームズの熱狂的なファンの呼称)ならずとも、胸のときめきを抑えきれません。

シャーロキアンなら、思わずニヤリとしてしまうシルクハット

 

店内に入ってすぐのテーブルに置かれているのは、シルクハット。鹿撃ち帽のイメージの強いシャーロック・ホームズですが、原作小説にその描写はなく、実際にはハットを被ることが多かったようです。そのため、シャーロキアンのお客様が来店すると、「よくわかってるね」とニヤリとされるそう。

壁紙に使われているのは、シャーロック・ホームズが活躍した19世紀イギリスで流行していたエレガントなダマスク柄

ホームズの時代のウイスキーでハイボールを

完璧主義のホームズも満足できるよう、お酒もフードも徹底的に追求したものだけを提供。

定番やオリジナルブレンドのウイスキー、また、オールドボトルと呼ばれる1970年代ごろのウイスキーを店内の木樽に入れて熟成

 

そのなかでも一番人気なのが、ホームズの名前を冠した「シャーロキアンハイボール」(900円・税抜)。

部屋の片隅にガソジーン(炭酸水製造器)を置いていたホームズが、自ら作っていたウイスキーソーダをイメージしています。

 

ホームズが活躍した19世紀後半という時代背景を考え、当時のイギリスで人気を集めていたスコッチウイスキーのデュワーズを使用。彼や著者のコナン・ドイルも親しんでいたであろうこのウイスキーは、香りがよく優しい味わいで、現代でもバーテンダーをはじめ多くの人に愛されています。

 

そんなデュワーズで作られたシャーロキアンハイボールは、誰が飲んでも楽しめる深みのあるハイボール。飲みやすいけれども奥行きのある風味は、ひと口飲むだけでハイボールに対するそれまでの印象が変わってしまう逸品です。

化学実験が趣味のホームズが大喜びしそうな、驚きの一杯

さらに、化学実験が趣味だったホームズが大喜びそうなカクテルも。

「スモーキーモスコミュール」(1,200円・税抜)は、グラスごとスモークマシンで瞬間燻製する斬新なカクテル。目の前でグラスを入れたガラスドームがもくもくと煙でいっぱいになるのを見ていると、化学の実験のような新鮮な驚きが得られます。

このカクテルに使用されているのは、スモーキーで独特な風味のウイスキー・ラフロイグ。スパイシーな味と相性抜群なので、辛口のジンジャーエールとブレンドしています。さらに、ショウガとトウガラシ、そして、ウイスキーの樽を砕いたチップで燻製したブラックペッパーをプラスしてアクセントに。

 

飲む前からスモークの香りが心地よく鼻に抜け、口に含めばスパイシーで刺激的な味わい。なかなか味わえないキレのあるおいしさが、やみつきになるカクテルです。

ホームズの好物であるローストビーフは利益度外視で提供!

ファンのあいだでホームズの好物として有名なのがローストビーフ。

 

ロンドンのストランド街にあるローストビーフが有名なレストラン「シンプソン」には、『瀕死探偵』の事件解決後や『高名な依頼人』の落ち合うための場所として、ワトソンを誘って訪れています。

 

「Sherlock House」では、シャーロック・ホームズにちなみ、「特製ローストビーフ」(1,500円・税抜)と「特製ローストビーフサンド」(1,500円・税抜)を提供。系列店で大人気の「特製カツサンド」(1,400円・税抜)も含め、原価を度外視したクオリティになっています(3メニューとも一日6食限定)。

濃厚な牛肉の味が口いっぱいに広がるローストビーフ。じっくり焼き上げた、しっとりやわらかな食感がたまりません

自慢のローストビーフをぜいたくなサンドウィッチに! うまみが凝縮されたローストビーフとなめらかなマッシュポテトに魅了されます

 

国産の豚を200gも使ったボリューミーなカツサンド。さまざまな調味料をブレンドした絶品のソースは、ジューシーなカツと相性抜群

 

また、ホームズは好きでも普段はあまりお酒を飲まない、という人でも安心して注文できるように、「緋色の研究」などシャーロック・ホームズシリーズの小説タイトルを冠したカクテルや、アイリーン・アドラーをはじめとする魅力的な登場人物をイメージしたカクテルを現在考案中とのこと。

 

シャーロック・ホームズの世界にどっぷりと浸れる、何度でも足を運びたいお店です。

文/六原ちず 撮影/大谷次郎