巷には「予約困難」な焼肉店がたくさん存在している。口コミやメディアへの掲載など、予約困難となる要因はさまざまだ。本連載では肉バカ・小池克臣さんに早めに押さえておくべき「予約困難予備軍」の焼肉店を焼き方のポイントとともに教えてもらう。

本連載のナビゲーター、肉バカの小池克臣さん

予約困難民に門戸を開く!武蔵新城へまた通いたくなる2号店の誕生

今回、小池さんが紹介するのは、武蔵新城という地を有名にしたと言っても過言ではない、食べログで全国2位の人気を誇る焼肉の名店「炭火焼肉ホルモン さわいし」の新店舗。「炭火焼肉ホルモン さわいし」は1日6組しか予約できない、何カ月も先まで予約が埋まる超困難プラチナシート。そのハードルの高さを緩和し「もっと多くの焼肉が好きな人たちに食べてほしい」との店主の思いから、2026年3月3日にオープンしたばかりの「焼肉さわいしmini」の全貌に迫る。

「炭火焼肉ホルモン さわいし」は武蔵新城駅南口、こちらの新店舗は逆サイドの北口にオープン。駅から徒歩3~5分ほど

「焼肉さわいしmini」のコンセプトは、2号店とはいえ、本店とまったく同じものを出す店ではない。本店で提供するのは、とにかく仕入れにこだわり、肉の味そのものをしっかり感じてもらうことを大事にし、口に入れてすぐに強い味が広がるようなものではなく、噛んでいくと素材の味がじわっと出てくる焼肉。化学調味料などは使わず、素材の良さをそのまま活かす味付けで、本来の肉の味を楽しむ炭火焼肉のコーススタイルだ。それに対して新店舗は、本店と同じ最高の素材を使いながら、味付けを少し変えてもう少し親しみやすい形にしてアラカルトで表現しているという。

カウンター7席と、テーブル席が3卓。本店とは異なる、ガスロースターが並ぶ
 

小池さん

さわいしにはオープンから通っているのですが、今回新店舗がオープンしすぐに伺いました。ほぼ同じ仕入れで、別の表現をしたらどんな焼肉になるんだ!と、新たな挑戦は期待しかないし、本店を知っている方は、よりその違いを楽しめるお店。カジュアルに楽しめるお店なので、こちらを入口に、さわいしさんの世界観に入るのもおすすめです。

異なるターゲット層へ本物のおいしさを届けたいとの構想がカタチに

店主の沢石さんは、学生時代から焼肉屋に憧れを抱き、金融企業を経て、食肉卸売市場で働いて内臓処理を学んでから、焼肉業界に挑戦したという異色の経歴を持つ。

「炭火焼肉ホルモン うらら」を経て、2023年8月に「炭火焼肉ホルモン さわいし」をオープン。毎日のように芝浦に足を運び、自分の目で確かめ、長年の付き合いのある卸業者さんと会話し、鮮度のいい肉の仕入れを欠かさない。味の良さをお客様に届けるのが使命であり、また食肉業者の方への恩返しに繋がるとの信念を持つ。それぞれ異なるコンセプトをはっきりさせて、好みによって店を選んでもらいたい、との長年の構想から、今回新店が生まれたという。「売上より、長く続く店にしたい」。その実直な思いがクオリティに繋がり、また新たなファンを作っている。

毎日最高の肉に触れ、食べることで、焼肉さわいしブランドとしてのレベルや審美眼が引き上げられてきたそう
 

小池さん

ホルモンは樺澤商店、正肉はヤザワミートと、間違いない仕入れルートがあるのが、魅力でもあります。できるだけいいものを届けるために、毎日足を運ぶという努力が素晴らしい。なかなかいないです。本店の味は、食べ慣れている人にはすごく刺さるのですが、味付けで食べる焼肉ではなく、肉の味の違いを楽しむ焼肉なので、鮮度や肉質の違いをまだ知らない人にとっては、おいしいけど何が違うのかわからないという難しさもあります。マニア向けの尖った感じを、少しカジュアルにした大衆向けというか、わかりやすいおいしさに変換したところに、またお店としての幅が広がりますよね。

小池さんおすすめの「オーダー必須」のメニューとは?

ミノフェ

前菜で特におすすめなのは、韓国風ミノ刺しのミノフェ。牛豚のイカとの異名を持つガツシンという部位をボイルした、歯切れのよい食感が病みつきに。ほどよく辛みがあって、フレッシュなキュウリ、ニラとも相性がいい。

「ミノフェ」1,100円
 

小池さん

必ずオーダーしたいのが、サラダ感覚で食べられるミノフェ。大好きな部位です。僕は肉ばかり食べているので、こういうメニューがあると、野菜もたくさん食べられていいですね(笑)。

上タン

本店は厚切りの大きめサイズだが、こちらでは食べやすい大きさに仕上げているのが、差別化された特徴。ピンクみを帯びた上タンは見るからに美しく、艶やかで、そのビジュアルから食欲を掻き立てる。これから始まる焼肉の序章を盛り上げる。

「上タン」2,300円
火力が比較的弱いロースターの真ん中で、サッと火を入れる
じゅくじゅくしてきたタイミングを見計らって、返す
 

小池さん

僕は、上タンにはレモンをあえてつけずに、そのままの素材の味わいを楽しむ派です。ほどよい薄切りで、柔らかくサクサクした食感も堪りません。食べやすいポーションも、ちょうどいいですね。

上レバー

思わず「美しい!」と、小池さんが声を漏らした鮮度の高い上レバー。艶々として角が立ったその姿に、つい見惚れてしまうほど。店主・沢石さんが、樺澤商店へ通い、信頼を築き上げた賜物だ。

「上レバー」1,500円
最高の肉と真剣に向き合う、小池さん
 

小池さん

いや~、このレバーもすごいです。内臓って競りがないのでこちらから選べないという条件での仕入れになるので、これだけのいいものを手に入れるのは本当に難しいんです。それはやっぱり、沢石さんと樺澤商店さんとの信頼関係。さすがとしか言いようがないクオリティ。

特選ハラミ

小池さんが楽しみにしているのが、特選ハラミだ。つい凝視してしまう、まるでアートのようにきれいな脂のサシ、厚みはあるけれどほどよい大きさにカットされ、全方位断面まで美しい。肉にしっかりと味がつくように計算された、ほんのりと甘いもみだれに浸った特選ハラミは、白米との相性も抜群。

「特選ハラミ」3,500円
ロースターのセンターで、ゆっくりじっくり火を入れる
ほのかなにんにくが香る醤油ベースの、酢の酸味がほどよく利いたつけだれにくぐらせて。肉本来の味を消さず、霜降りの部位ほど、さらにポテンシャルが生きるよう考えられている
 

小池さん

あぁ、いいハラミです、これ。一目見ただけでわかります。和牛の甘みのあるサシの脂を、よりポテンシャルを引き上げまろやかに食べさせてくれるタレとの調和も素晴らしい。最高のおいしさが口いっぱいに広がります。

上ロース

まぐろで例えるなら中トロにあたる、リブ芯の上ロース。ひたひたのたれに浸かった美しい肉を見るなり、口内が思わずじゅわっとするはず。

「上ロース」2,800円
すぐに火が通るので、焼きすぎないよう細心の注意をはらい、見つめるのが鉄則
 

小池さん

ヤザワミートで仕入れた最高の上ロースは肉がいいので、本当にササッと火入れして、すぐに裏返していただきます。肉自体が本当においしい! 脂とのバランスもよくて、シアワセな気持ちになる味わいです。

上カルビ

リブロースの芯を巻くように位置する、希少な上カルビ。大トロのように濃厚な霜降り脂が魅力で、とろけるような上質な脂の甘みが楽しめる。

「上カルビ」2,800円
ロースターの端の強火で、サッと焼く。脂の香ばしい香りと立ち込める煙がまた、食欲をそそる
 

小池さん

思わずニヤッとしてしまうほど、霜降りが美しいです。焼く前にどっぷりともみだれに浸してから焼くと、より香ばしく絡みおいしさが増します。つけだれの酸と相性がよく、ライスを頼まずにはいられないですね。

店長と肉談義で盛り上がる小池さん

小池さんが同店をおすすめする理由は、信頼関係によって得られるレベルの高い肉と、鮮度が命のホルモン、ともに仕入れをとことん徹底しているという点。毎日市場へ足を運び、業者さんと顔を合わせるという地道な努力があるからこそ、さわいしという店のブランドを落とさない肉を用意してもらえるのだという。絶対に妥協できない肉の質をキープしつつ、新店での新しい表現に「可能性しかない」と、今後にも期待を寄せる。

予約の間口が広がり、今後、間違いなく予約困難必至の「焼肉さわいしmini」。小池さんが太鼓判を押すレベルの高い焼肉を求めて、足を運んでみてはいかがだろうか?

予約サイトにて毎月1日12:00に、翌月末までの予約を開始

※価格はすべて税込

教えてくれた人

小池克臣

横浜の魚屋の長男として生まれるも、家業を継がずに、外で、家で、肉を焼く日々を送る。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、ほぼ毎晩、牛三昧。さらには和牛そのものの生産過程や加工、熟成まで踏み込んで研究を続ける肉の求道者。『肉バカ。No Meat, No Life.を実践する男が語る和牛の至福』(集英社刊)。公式ブログ「No Meat, No Life.」。

食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
https://www.instagram.com/tabelog/

文:濱口眞夕子(SEASTARS Inc.)、食べログマガジン編集部 撮影:八木竜馬