あのカリスマ漁師から仕入れる、稀少な「白甘鯛」に唸る

特筆すべきは、この店で使う白甘鯛が、カリスマ漁師として知られる藤本純一氏が手がける特級品であること。これは多くの料理人が入荷を切望し、長いウエイティングリストを抱えるほど希少な食材だ。「『蒼』の峯村シェフからご縁をいただいて、貴重な藤本さんの白甘鯛を扱えるようになりました」と、北山シェフは朗らかに語る。
鮮度管理が難しく、漁獲量も限られる白甘鯛。その価値を最大限に引き出すのが、藤本氏の確かな目利きと、魚を究めた処理の技だ。そうして選び抜かれた一尾だからこそ、一流の料理人を魅了してやまないのだ。
北山シェフの白甘鯛は、ナイフを入れるとザクッと小気味よい音を立てるほど、皮目をクリスピーに焼き上げている。「皮と身の間にあるゼラチン質までしっかり火を入れることで、あのバリッとした食感が生まれるんです」と北山シェフ。一方で身はしっとりとやわらかく、上品な脂の旨みがじんわりと広がる。それがみそを加えたソースとともに、長い余韻を残すのだ。

メインに登場したのは、国内でも名高い青森のブランド鴨「銀の鴨」。フランスで高級種として知られるバルバリー種を、自然豊かな環境で育てたこの鴨は、その品質の高さから多くのシェフの信頼を集めている。「肉質のやわらかい雌を、1週間ほど風干しにして水分を抜くことで、血のニュアンスを引き出しています。付け合わせには、鴨と相性のいい土っぽさを持つビーツを合わせました」と北山シェフ。
黒にんにくとローストしたバナナを合わせたピュレや、黒こしょうを添え、食べ進めるごとに表情が変わる構成に。下に敷いたスペルト小麦のリゾットは口の中をすっとリセットし、一皿の中で、味わいのグラデーションを楽しませてくれる。
フレンチだけど〆には“炭水化物”がうれしいポイント

コースの〆に登場するのは、なんとカレーだ。フレンチのコースらしからぬこのサプライズについて尋ねると、北山シェフはこう話す。「自分もそうですが、コースの最後にご飯が食べられると、やっぱりうれしいですよね。少量でも〆にご飯を楽しんでいただけたらと思ったんです」

羽釜で炊き上げた艶やかなご飯に合わせるのは、その日の気まぐれカレー。スパイスを使いながらも、フレンチの流れを大きく崩さないように仕立てている。この日は、ころっとした牛ほほ肉を忍ばせた、トマトの酸味が心地よい「牛ほほ肉のカレー風」だ。カレーのためにあつらえたという小ぶりの器も食べやすく、ほどよいボリューム感に満足度も高い。

実力派・北山シェフにとって待望の舞台となる「arbreims」は、上質でありながら気負わずにフレンチのエッセンスを楽しめる、これまでありそうでなかった一軒。
オープン前からすでに噂を呼び、2月1日の営業開始を待たずして、2月、3月は予約で満席。その人気は本物と言える。早くも注目を集めるこの新アドレスが、これからどんなストーリーを紡いでいくのか。期待はふくらむばかりだ。



