五感で楽しむ“薪火ダイニング”Marutaへ

庭で摘んだ自家栽培の新鮮ハーブに、薪火で仕上げる料理の数々、目の前で豪快に捌くジューシーな丸鶏。五感で愉しむ体験型レストラン、Maruta。その魅力を探ります。

薪火料理をシェアして味わうという新たな提案

今年深大寺にオープンした話題の一軒家レストラン「Maruta」。店内でまず目にするのは、ゆらゆら揺らめく薪窯の炎と5.5mあるロングテーブル。窓の外にはエディブルガーデンの緑を望み、そのどこまでも開放感溢れる空間に、東京にいることを思わず忘れてしまうほど。

店内は木目を基調とした温もりある雰囲気。3卓ある大テーブルには、それぞれアフリカ産のブビンガ、ウエンジ、パチェロバと、一枚板を贅沢に使用。

シェフの石松一樹さんは、世界のベストレストランに輝くオーストラリアの名店「Brae」で経験を積んだ若手実力派。名物は店内の薪窯で焼く薪火料理で、シェフ自らゲストの前で腕をふるい、臨場感たっぷりにもてなします。

 

メニューはランチ・ディナーともにおまかせコースを用意。何よりユニークなのがその提供法で、大皿で登場するコース料理を、同じ大テーブルに座るゲスト同士がシェアリングして味わう仕組み。ひとり客やカップルではオーダーしにくい丸鶏のような塊肉も、シェアリングなら大丈夫。とびきりのご馳走をわいわいシェアして味わえば、初対面のゲスト同士でも自然と打ち解けてしまうはず。

地の利を生かした素材使いで、新鮮かつ薫り高いひと皿に

ローカルファーストをコンセプトに、料理には近郊で取れた新鮮素材を積極的に使用。例えば、青梅で育った野菜や果物、調布飛行場に毎朝届く神津島産の魚介など。大地の恵みを余すところなく使った料理は、折々の旬を存分に感じさせるものばかり。ローズマリーやスペアミント、ローゼルなど、エディブルガーデンで育てた自家製ハーブも大活躍。調理の直前に庭で摘み、薫りをそのまま卓上へ届けています。

東京都青梅市Ome Farmビーツ

 

シェフ自ら足を運び惚れ込んだというOme Farm産の素材を使用。ビーツはローストした後、庭で摘んだローズマリーで燻して薫りをプラスし、甘くほくほくとした味わいに。燻製にした発酵クリームと共に。料理は全てディナーコース(9,000円・税別)から。

神津島産アカイカのコンフィ

 

黒米と押し麦の上に、神津島産のイカをあしらったひと品。一晩寝かせたイカを低温調理し旨味をアップ。揚げたゲソと薪火で炒った豆が彩りと食感のアクセント。豆は牛脂を塗っておき、脂が落ちることで煙が上がり香ばしい風味を加えている。揚げたゲソと薪火で炒った豆と庭のミントをアクセントに。

薪をくべる場所により高温・低温を使い分け、つきっきりで微妙に火入れを調整していく。

千葉香取水郷赤鶏の燻製ロースト

 

サクラチップで低温スモークした丸鶏に、220℃の油をまわしかけて皮目をパリパリに。マリーゴールドと赤玉葱を和えたビーフンと共に大皿で。ペーストは発酵・燻製・熟成させたパプリカを使ったオリジナル。スパイスを加えたナッツを仕上げに散らして。

 

フレンチをベースに独自の感性を取り入れた美しい料理と、薪火を使った豪快な調理法とのギャップもまた大きな魅力。ぱちぱちと薪火の爆ぜる音をBGMに、シェアリングで場も和やかに。庭に出てエディブルフラワーを摘むのも、シェフと会話を楽しむのも、相席のゲストと美味談義で盛り上がるもよし。話題の薪火ダイニングで、かつてないレストラン体験を!

取材・文:小野寺悦子

撮影:森山祐子