〈食を制す者、ビジネスを制す〉

最近、福岡が熱いらしい

最近、福岡が熱いらしい。雑誌では福岡の大特集が組まれ、福岡をクローズアップした本も書店で見かけることが多くなった。先日、私も出張で久々に訪れたのだが、確かに活気があるようだ。福岡空港やJR博多駅周辺でも、昔と比べて、インバウンドの旅行客が増えているように見える。福岡に転勤した人や出張した人に聞くと大抵、「住みやすい街」だとか、「食べ物がおいしい」といった話をよく聞くが、直近の国勢調査によれば、福岡市が人口増加率で日本一になったという。私の知り合いも本人が新潟出身、奥さんが大阪出身にもかかわらず、福岡に転勤した際に、あまりに住みやすかったのか、持ち家を構えてしまった。今、本人は別の転勤先で単身赴任しているが、それでも福岡から離れたくないそうだ。

福岡市は言うまでもなく、東北地方の仙台市、中部地方の名古屋市などとともに、九州地方の最大の都市であり、九州経済圏の中核都市の位置付けとなっている。都市のサイズもちょうどよく、都会過ぎず、田舎過ぎず、バランスがいい。企業も九州電力やJR九州、福岡銀行などの地元有力企業から、「妖怪ウォッチ」や「レイトン教授シリーズ」など人気ゲームで著名なソフト開発会社のレベルファイブなどベンチャー系まで数多い。都心の天神には岩田屋、大丸、三越の百貨店をはじめ、多くの商業施設が並び、ショッピングには事欠かない。エンターテインメントでは、福岡ソフトバンクホークスの本拠地があり、街の賑やかさは言うまでもない。大学も九州大学を中心に西南学院大学や福岡大学などがあるため、ビジネスパーソンだけでなく若者も多い街だ。

福岡で最有力企業はどこか？

そんな福岡は大阪、名古屋と並んで、地元財界が今もきちんと機能している。九州電力、福岡銀行、西日本鉄道、九電工、西日本シティ銀行、JR九州、西部ガスの7社を中心に通称「七社会」と言われ、地元財界で大きな力を持っている。中でも最も力を持っているのが、ヒト・モノ・カネの規模で他社を圧倒する九州電力だ。九州財界の総本山である九州経済連合会（九経連）の会長には九州電力会長が就くのが長年の慣例だ。

現在の九経連会長は、2013年から麻生太郎財務大臣の実弟である麻生セメント社長の麻生泰氏が務めているが、当時、原発の再稼働問題の影響で、九電からは会長を出さず、ピンチヒッター的に地元の名門一族である麻生氏が会長に就任した経緯がある。

ほかにも福岡県全体で言えば、出身企業である出光興産やブリヂストンが今も少なからぬ影響力を持っているし、東京の大企業ならほとんどが福岡に支社や支店を持っているため、地元の人も東京を意識する機会が多い。飲食店に行っても大抵、東京からの出張者がおり、想像以上に夜の街は東京の人で賑わっている。

それだけ東京と福岡は行き来しやすい。飛行機の便数は多く、羽田から福岡まで2時間弱。空港から繁華街の天神まで地下鉄で10分程度。空港からＪＲ博多駅までなら2駅で5分しかかからない。アクセスは至便だ。

福岡はとんこつラーメンだけではない

だからこそ、福岡に出張に行った際には、ぜひおいしい店で食事をしてほしい。福岡に行って全国展開のチェーン店で食事をするのはもったいないし、来た甲斐がない。やはり限られた時間しかなくても、地元で名店と言われるところに足を延ばしてみるべきだ。

福岡の名物と言えば、まずとんこつラーメンが挙がるだろう。ただ、本場のとんこつスープは東京と比べて濃厚だ。40代以上で東京のとんこつスープに慣れている人は脂が少しきつく感じるかもしれない。最近は地元でもスープが薄めになっているところが増えており、食べやすくなっているようだ。ただ、ラーメンはあくまで〆に食べたい。

では、同僚とお酒を飲みながら、つまむにはどうすればいいか。福岡は関サバ、関アジ、イカがうまい。そこでお薦めしたいのが、天神にある「割烹よし田」だ。先日の出張で福岡出身の仕事関係の方に紹介してもらったのだが、これが良かった。新鮮なイカ、関サバ、関アジの刺身はどれもうまく、とくに脂の乗った関サバは絶品であり、東京で同じレベルのものに出会ったことはほぼない。

しかも、刺身を食べたあとは、残りの部位で天ぷらや唐揚げ、みそ汁などにしてくれる。そして最後は鯛茶漬けで〆る。もしコースで頼んでも、1人4,000円～6,000円程度であり、こんな名店でこれだけ食べても、この値段という感じだ。コストパフォーマンスは非常に高い。地元だけでなく、東京からのビジネスパーソンもたくさん訪れているようで、早い時間から満員になるため、予約は必至だ。