〈食べログ3.5以下のうまい店〉

グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、年間500種類ものドーナツを食べ歩く、ドーナツ探求家・溝呂木一美さんに、日本橋にあるアメリカンなドーナツ店を教えてもらった。

日本の伝統が生きる街にある、夢のようなアメリカンスイーツ店

アメリカンなドーナツショップ「GRANDPA」

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

“commisary”とは元々は軍隊用語だが、転じて“売店”や“食堂”といった意味で使われているらしい

日本橋にある「COMMISSARY NIHONBASHI」というフードコートの中に「GRANDPA」はある。東京メトロ日比谷線小伝馬町駅からは徒歩で3分ほど。JR新日本橋駅からもアクセスがいい。日本橋三越本店を筆頭に、数々の有名な老舗が集まる中央通りへは徒歩10分ほどの距離だ。重厚な歴史のある街の中で「COMMISSARY NIHONBASHI」には、これから新たな物語を紡いでいくお店が集まっている。

適度な音量のBGMが流れ、ひとりでも複数人でも居心地がいい空間だ

「GRANDPA」は大好きなお店! おいしいのはもちろんだが、ハッピーな空気にあふれているのだ。「グランパ」という名前の通り、おじいさんがやっているお店、ではない。あと何十年か後におじいさんになる三上さんと田渕さんが経営している。

いろいろな味や形のドーナツがいっぱい! おもしろい名前のドーナツもあるので名前で選んでも楽しい

店名の由来を知り、私はその幸せな空気を醸し出すものが何であるのかわかった。その答えは最後に書くとして……。

カラフルなトレーがかわいい! オールドアメリカンなメニュー表やポスターのデザインは三上さんによるもの

不器用な田渕さん、几帳面な三上さんが二人三脚で作り上げた同店。二人とも異業種からの挑戦で、都内の名店で腕を磨いた。
最初は現在と同じ場所で月曜日の夜だけサンデーを提供する、知っている人だけこっそり幸せになるような、夢みたいな間借り営業から走り出したという。徐々に連日開店するほどの人気となり「GRANDPA」という看板を掲げ、ドーナツをメインとして本格的にスタートしたのは2024年10月のことだ。

レジ脇の焼き菓子にも注目。かわいくてスパイシーな「RABBIT CAKE」もおすすめ

同店は、オールドスクールなアメリカの雰囲気が魅力。ドーナツのほか、創業当時からの人気メニューであるサンデーやブラウニー、パイなどの焼き菓子なども楽しめる。どのメニューにも共通していることは、いい感じのカジュアルさだ。
アメリカのテレビドラマ「ツイン・ピークス」で、クーパー特別捜査官がお気に入りのダイナーがある。かしこまっていないから、ひとりで来てぼんやりとドーナツを食べたり、親しい人と来て一緒にサンデーをつついたり、よそ行きの顔ではなく素顔でリラックスできる、私にとって「GRANDPA」とはそんなカジュアルなイメージなのだ。

まずはシンプルなドーナツで、ハイクオリティな生地を味わってほしい

素朴でどこか愛嬌があるいい姿の「GLAZE」

同店へ来たら、まずは「GLAZE」320円を食べよう。
砂糖のグレーズをかけたシンプルなドーナツだが、食べたら目が覚める。「開眼」とはこういう体験かと思うだろう。表面からはカラッと揚がった香ばしさが感じられ、中はふわっと軽くて、もちり。サックリとしたグレーズからはバニラが香る。サクッ、じゅわ、ふわ〜っと、ドーナツの醍醐味が全部詰まっている。

サクッ、じゅわ、ふわ〜っ

理想の食感を実現するため、小麦粉のタンパク質量を調べ、何通りもの配合を試したそう。しっとり感を持続させるための砂糖の分量、ドーナツに合う油等々、試行錯誤を重ねた。一見ラフな佇まいだが、繊細に研究されてできあがったものだ。

 

溝呂木さん

「2個も3個も食べたくなるドーナツにしたい」という思いから、大きすぎず、小さすぎずの絶妙なサイズです。「GLAZE」を食べたら他の味のドーナツも、大いに食べてみましょう。頻繁に通って全メニュー制覇したくなります!