フランス料理出身シェフによるユニークなメニュー

まずは誰もが頼みたくなる「ポテサラ」をオーダーしてみると「これ、ポテサラ?」と目を疑ってしまう美しいビジュアル。ポテトが見えないほどたっぷり削りかけた24カ月熟成のミモレットの芳醇な香りに食指が動かされます。

口にすればパンチェッタの塩味とキャラメリゼした玉葱の甘みが交互に押し寄せ、それを中和するかの如くポテトが現れます。すっきりした酸味の正体は隠し味にしたウスターソースの元祖と言われる「リーペリンソース」。日本のウスターソースと比べて甘みが少なくアンチョビの塩気や香辛料が利いてコクがあり、大衆的なイメージのポテサラをワインに合う高級料理へと昇華させました。

オマール海老とトマトで作ったソースを敷いた上にカニクリームコロッケが2つ。甲殻類の食欲をそそる香りとうまみがWで味わえるなんて、食いしん坊にはたまらない料理です。

中にはオマール海老のベシャメルソースを和えたずわい蟹の身がぎっしり詰まっています。オマールのソースをたっぷりつけてパクリ! なんという贅沢な味わいなのでしょう。ピリリとくるカイエンペッパーがアクセントになりどうにも後を引き、ワインとの無限ループに陥ります。

こちらは超肉厚の「雲仙ハムカツサンド」。クミンと胡桃を練り込んだ自家製のパンにオリジナルヤンニョムソースとマスタードを塗り、揚げた雲仙ハムを挟んでいます。ふわふわでもっちりしたパンも、これでもかっと思わせる肉厚な雲仙ハムも魅力ですが、味の要はこのソース。李家のヤンニョムレシピに加えた、すりおろしたりんごが辛みのエッジをまろやかにし、雲仙ハムの塩気に寄り添います。これは必食!
意外だけど絶妙な組み合わせに驚嘆する

目の前に置かれた瞬間、花椒のいい香りがしてきます。口にすると中国料理店で食べるものとは根本的に違うことに気づきます。「フランス料理一筋でしたから出汁がフォン・ド・ヴォライユです。そこに香味野菜、ローズマリー、オレガノ、ローリエを入れています」と李さん。確かに香りは花椒だし、辛みも豆板醤ですが、李さんの料理の原点であるフランス料理のエスプリが感じられるのです。

粗びき肉の肉感と舌が痺れる一歩手前くらいの辛さが舌を喜ばせます。お供にしたフォン・ド・ヴォライユで炊いたサフランライスでグッとフランス料理テイストに。同じフォン・ド・ヴォライユを使っているので味に一体感が生まれ、まさかの組み合わせに麻婆豆腐の新たな世界観が開かれました。

「スイーツというよりワインに合うようにパルミジャーノを入れています」と言うように塩味が利いた大人の「バスクチーズケーキ」です。パルミジャーノ、バニラ、胡椒、ひとつまみの塩とほんの少しの砂糖で焼き上げ、しっとりとしたテクスチャーに仕上がっています。特有の“焦げ”の苦みと塩味のミックステイストが新感覚!

フリーランス時代に客のニーズに応えてさまざまな料理を作っていたことが、こちらで発揮されています。フランス料理を軸にしながらジャンルレスでうまいもの、さながら「お子様ランチ」ならぬ「大人様ランチ」に入るような料理が楽しめるとあれば、おいしいものを知り尽くした大人たちにはたまらなく魅力的。レストランの営業時間は17〜22時ですが、以降は紹介制ワインサロンと姿を変えるそう。これはぜひ行きつけにしたい! 予約はインスタのDM、もしくは食べログから。


