小林シェフの新たなる舞台は六本木!
2005年、三田に「御田町 桃の木」を開業し「ミシュランガイド東京」創刊から星に輝き続け、数多の食通たちを唸らせてきた中国料理人、小林武志さんが自身の名を冠した「KOBAYASHI」を六本木にオープンしました。
階段を下りると目を引くのが森の中にある滝をイメージした石壁の空間。一気にその世界観に引き込まれ、高揚した気分のまま店内に入ると「ULTRA K」と名付けられたカウンター席が。こちらでは今までとは異なる型にとらわれない“シン・KOBAYASHI中国料理”が振る舞われます。
カウンターの奥にある2〜8名で利用できる5室の個室では、「茄子の唐揚げ」「黒酢の酢豚」など小林シェフが生み出してきたシグネチャー料理を中心としたコースを提供します。同じ店で1人の料理人が作るシグネチャーと攻めの料理を楽しむことができるという型破りな発想に小林さんの意気込みを感じます。
小林さんが料理に興味を持ったのは仕事で忙しい母が用意してくれた料理の仕上げをするようになった中学生の頃。それから進路を決める時期にTBS系列で放送されていた辻調理師専門学校の先生と芸能人が一緒に料理を作って食べる「料理天国」という番組を見て「辻調に入学する!」と決めたそうです。初めはフランス料理へ進むつもりでしたが、実習で何を食べてもおいしいと感じた中国料理の道へ進みました。
卒業後は同校講師として8年間勤務しますが、だんだん自分が料理したいという気持ちが高まり、吉祥寺「竹爐山房」が移転するタイミングで入店します。ところが、「今までいったい何をしてきたのだと思うほど、無知な自分を思い知らされ、中華鍋の洗い方知らないの?ってマスター(店主 山本 豊さん)に怒られてばっかりでした。知識も経験もあると自負していたのに現場ではまるっきり通用しない。入った店のレベルが高かったというのもありますが、知らないことが山のようにありました」と、小林さんの料理人人生を根底から変えてしまったのです。
「人の体に入るものなので嘘があってはいけない」という山本氏の言葉が小林さんの料理のベースにあります。「料理は工程を積み上げることで、その工程が細かければ細かいほどおいしくなる」「食材は最高潮のタイミングでしか使わない」「野菜は美しく切りそろえ、水に張ってシャキッとさせてから使う」など、些細に思うことでも手を抜かず、丁寧に仕事することが大切という自身の“料理道”も、厨房での山本氏を見ていたからできあがったのだと話します。