小麦本来の味わいに出会えるベーカリー「Lanka」へ
「KURKKU FIELDS」ならではの味は、2022年11月にリニューアルオープンを遂げたベーカリー「Lanka(ランカ)」でも生み出されている。
「日常に寄り添うパンを」。「パンの声を聴きながら、毎日焼くことを大切にしています」と口を揃えるのは、パン職人の米山紗弓さんと高木あゆみさん。場内のオーガニックファームで栽培した全粒粉や季節の野菜、さらに千葉県内の生産者が思いを込めてつくった食材を、店名にもあるLanka=「糸」のようにつなぐふたり。
「日常に寄り添うパン」の代表格が「パンドミ」。農場で収穫した全粒粉の歯ごたえや香ばしさ、さらには湯種製法による生地のもっちり感が堪らない。卵や乳製品は不使用ながら、小麦の旨みがじっくり引き出された、毎日食べたくなる味!
どっしりと存在感のある「パン・ド・ランカ」は、千葉・八街市でイタリア品種小麦を栽培する「イマフン」の全粒粉やライ麦を使用。ルヴァンリキッド(液状自家製酵母)による多彩な酵母が発酵を促すため、噛み続けていたいくらい複雑で奥行きのある味わいだ。
質朴な風情を放つ、シンプルでいて健やかな「Lanka」のパンは、小麦が農作物であることを、改めて気づかせてくれる。
いのちの恵みが詰まったシャルキュトリー
「KURKKU FIELDS」の強みは、農業と食の多種多様なプロフェッショナルが集うこと。「CHARCUTERIE(シャルキュトリー)」の岡田修シェフは、狩猟免許を持つハンターであり、シャルキュトリー職人、さらにはフランス料理のシェフの顔も持つ凄い人。
「害獣と呼ばれるジビエをおいしく食べていただく。つまり、無駄をなくし、全てを循環させて活かしていきたい」という信念が、岡田シェフにはある。
近くの野山で捕獲される猪や鹿、外来生物のキョンなどは、岡田シェフ自らが捕獲するのはもちろん、地元の猟師との連携プレーもあり、場内にある食肉処理施設「オーガニックブリッジ」へ。捕獲、仕留めてから解体処理に至るまで1時間もかからないため、驚くほど臭みのない肉の状態をキープすることができる。そして「CHARCUTERIE」の厨房で、ソーセージやハムをはじめとするシャルキュトリーへ。
肉のテリーヌなどをパイ生地で包んだフランスの伝統料理・パテアンクルートの場合。岡田シェフは、猪肉を用いた少し小さめの「プティアンクルート」に仕立て、農園に自生するフキノトウを組み合わせた。パイ生地をザクッと頬張れば、猪肉の澄んだ旨みに続き、フキノトウのほろ苦い風味と春の香りがふわり心地よく広がった。
また猪のソーセージにも、春菊や枝豆などファームで収穫するオーガニック野菜がふんだんに。まさに“旬を味わうシャルキュトリー”!
その背景を岡田シェフが教えてくれた。「農業チームをはじめ、スタッフ全員のLINEがあるんです。“今日は春菊が大量に採れました”、“誰も使わないのならウチで全部!”なんてスタッフ間のやりとりを日々、行っています。シャルキュトリーで四季旬菜を表現できるこの環境が、とてもありがたいですよ」
また、猪の骨などはボーンブロス(骨からとっただし)にしてヌードルと合わせてオンライン販売もしている。
“無駄をなくし、すべてを循環させて生かしていきたい”という、「KURKKU FIELDS」のスタッフの思いと岡田シェフならではの職人技が、ジビエのシャルキュトリーの随所に光っていた。