森の中で憩うように、自然の恵みを嗜む「BEES BAR by NARISAWA」

たとえば実力派シェフの独立や海外で人気を集める上陸系レストランの場合、オープン前から話題が殺到することも少なくないが、バーとなると極めて稀。だが、それが、世界的に有名な成澤由浩シェフが手がける店となれば、話は別だ。

南青山の「NARISAWA」といえば、国内外の食のプロフェッショナルから憧憬を集める存在。成澤シェフのなににもとらわれない自由闊達な料理を求めて海外からも多くのゲストが店を訪れる。その成澤シェフが新たにバーをオープンさせるというのだから、これはとんでもないビッグニュース。開店のいきさつについて成澤氏本人に尋ねてみた。

「今回、僕がバーを作ろうと思った理由は3つあります。まず1つ目は、レストランにいらっしゃるお客様のビフォア・アフター的な場所があればいいなと思ったこと。海外からいらっしゃった方から、レストランで食事をしたあとに、この近くでゆっくりと寛げるバーはないかと尋ねられることが多かったんです。食事の前のひとときや、食後の余韻を長く楽しんでもらえるような空間を作りたいというのが最初のきっかけ。

 

そして、2つ目は僕のお店のテーマでもある日本の里山文化をもっと身近に感じてほしいと思ったこと。カクテルのメニューや空間のコンセプトには一貫して都心にいながら日本の森を体感してほしいという思いが込められています。

 

これに付随することですが、日本に伝承する自然を肌で感じてもらうことで、よりリラックスした時間を過ごしてもらいたい、というのが3つめの理由。BEES BARという店名には、自然界になくてはならない蜂のように様々な命にとっての“源”のような存在でありたいという願いを込めました」

日本各地から集まったエネルギッシュな素材が主役

中央にカウンターを配したモダンな空間には、楓やネズ、カツラなどの古木を“再生利用”したテーブルが並び、壁には成澤氏と親交のあるブラジル人カメラマンが撮影した“日本の里山”の写真がダイナミックに飾られている。

オリジナルのカクテルもじつに多彩で、杉の木や国産のシナモン、黒文字など森のスパイスを漬けこんだバーボンウィスキーをベースに、グリオットチェリーやオレンジピールをアクセントに利かせた「ウッドランド スパイスド オールドファッション」(1,800円)や、ブラジル産のオーガニックのコーヒー豆で作るエスプレッソとカシャーサ(ブラジル産のサトウキビの蒸留酒)を合わせた「ブラジリアン エスプレッソ マティーニ」(1,800円)、石垣島産のピーチパインを器に見立てた「1本まるごと ピニャ コラーダ」(2,000円)など、自然の恵みに育まれた素材を主役にしたユニークなメニューが10種以上も揃う。

季節ごとの旬の素材でつくるオリジナルカクテル

静岡県産のわさびでアクセントを添えたマルガリータや、宮崎県産のマンゴーと沖縄県産のパッションフルーツを合わせた南国の太陽を感じるカクテルなど、季節限定メニューも続々登場予定。

アルコールが飲めない人には“パワー”と“デトックス”をテーマにした、コールドプレスジュースも用意。アルコールもノンアルコールも、その素材が育ったバックグラウンドまで想像させる生き生きとした味わいがあり、驚くほどエネルギッシュだ。

トレンドに流されず、小手先のテクニックにとらわれず。自然への敬意を表現したこの店が、世界のバーの指標となることは間違いない。

 

予約・お問い合わせ:
03-5785-0799(レストランNARISAWA)

※当日予約可能。来店前の予約が必須。

 

写真:松園多聞
取材・文:小寺慶子