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食通が見いだした、今月の新店
新しいお店がどんどん出店し、ますますの盛り上がりを見せる飲食業界。「気になる店が多すぎてどこの店に行ったらいいかわからない!」という人も多いのではないでしょうか。
そこで、グルメ情報に精通している方々に、最近訪れた新店に関するアンケートを実施。特に注目している「今月の新店」について教えていただきました。
今回は、フードパブリシストの高橋綾子さんにお答えいただきます。
教えてくれる人
高橋 綾子
フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人生そのものに。その間に培った食のデータと人脈を武器に“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ日々。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。
今月のベストワン
Q. 直近で行った新店の中で、特におすすめしたいお店を教えてください
A. 「Ginza 脇屋」です
脇屋さんがプライベートサロン的な店を銀座に出す!という噂が巷を駆け巡ってから、これは何としても行かなければと思っていたので、その日は期待度MAX! 予約時間の10分以上前に付近に着くも、入り口がわからず地図を見ながら行ったり来たり。先に到着した友人が建物の写真を送ってくれてようやく辿り着きました。わかってみれば、銀座のど真ん中でここまで隠れてくれると、ちょっといいかもと思ってしまいます。
厨房を見上げるカウンター8席という空間だから、まるで脇屋さんの舞台を観ているかのよう。はじめに食材を紹介してくれてからいざ調理に! おいしい匂いや音に五感が喜んでいると、あっという間に目の前に運ばれます。器も本当にセンスが良く、つい、「可愛い」とか「素敵」と声に出てしまいます。お料理は脇屋さんならではのヌーベルシノワ。と言っても決して奇をてらったものではなく、上海料理をベースに50年におよぶ料理人人生の経験と技が融合されています。
例えば1皿目の「粥」。美しい翡翠色の正体はケール。それだけでも驚きましたが食べ進めると中から牡蠣が現れるのです。初っ端から胃袋をがっしり掴まれると続いては筍とそらまめの皿。主役は素材の味と食感を大切にし、生ハムのような塩豚は塩味を演出します。
そして月桂樹の香りをまとったとろみのあるスープに悶絶する、厨房の中央に鎮座させた窯で焼いた肉といった具合に、次から次へと至福の皿が登場するのです。圧巻は上質なシャンタンスープで5時間煮たとろっとろの白菜。1玉400円くらいの白菜が(脇屋さんの使う白菜はもっと高級かも?)こんなゴージャスな味になるとは本当に感動的で、スープもこれで死んでもいいと思えるおいしさです。ペアリングのワインや日本酒はそれぞれの料理に寄り添う見事なセレクトで、サービスも心地よい。おまけに脇屋さんの美声で料理の説明がされるなんて、もう夢のような時間です。
Q. 「Ginza 脇屋」でおすすめしたいメニューを教えてください
A. 「土鍋で炊いた白飯」(コース35,000円に含まれる)です
すべての皿がおすすめで甲乙つけがたいのですが、度肝を抜かれたのが〆の土鍋で炊いた白飯です。中国料理だし、脇屋さんだし、新作のチャーハンか麺かと思っていたら登場したのは土鍋を持った脇屋さん。蓋を開けると中には炊き立ての真っ白なご飯。最初は「え、マジ?」と思ったのですが、これがおいしいのなんのって。ちゃんと「煮えばな」を食べさせてくれるし、ご飯のおともがまた食欲をそそるものばかり。(店オリジナルの)麻婆たらこだけで1杯いけちゃうくらい。
ずっと白飯なのかはわかりませんが、本日のコースの流れを考えると白飯は〆に相応しいと納得。脇屋さんがやりたいことってこういうことなのかなと次回も期待できる〆でした。